繁忙期の有給休暇取得は認める?原則、拒否はできないが時季の変更権がある
最終更新日:2024.10.24
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繁忙期に有給休暇をまとめて取得…。申請拒否できる?
敢えて繁忙期にあわせてまとめて有給休暇を取得しようする社員がいます。認める必要はあるのでしょうか。
原則、拒否はできない。しかし取得時季の変更は認められている
原則的には、会社は年次有給休暇取得申請に対して「拒否」することはできません。
しかし、極端な例ですが、社員全員が同じ日に年次有給休暇の権利行使をした場合、全員に年次有給休暇を与えてしまうと会社は運営できなくなってしまいます。
労働基準法は、この例のように、社員から指定された時季に休暇を与えることが「事業の正常な運営を妨げる場合」には、事業運営上差支えない日に年次有給休暇の取得時季を変更させることができる、という時季変更権を会社に認めています(労基法39条5項但書き)。
時季変更権が認められるのは「業務の正常な運営を妨げる」場合のみ
時季変更権行使の要件である「事業の正常な運営を妨げる場合」が具体的にいかなる場合を指すのか、という点については、
裁判例上、「当該労働者の所属する事業場を基準としての事業の規模、内容、当該労働者の担当する作業の内容、性質、作業の頻閑、代行者の配置の難易、労働慣行等諸般の事情を考慮して客観的に判断すべき」などと判示されています(此花電報電話局事件・大阪高判昭53・1・31労判291号速報カード15頁など)。
この判示が示すように、諸般の事情を考慮して判断する必要があり、このような場合であれば時季変更権の行使が認められると機械的に判断することは不可能です。
休暇取得の事前手続きをルール化しよう
時季変更権の行使が認められるか否かを判断する際には、事業場における社員数の多寡だけでなく、
年次有給休暇を請求する社員の担当している業務が特殊技能を要するものであるか否か、
秘密プロジェクトであるか否かなどといった点にも踏み込んだなど、
かなり実質的な状況判断が求められます。
会社は年次有給休暇取得申請に対して「拒否」することができない上、時季変更権の行使も認められないといった場合、防ぐ手段はあまりありませんが、有給休暇取得申請の手続きを一定期間の前にする等の対応はできます。
長期かつ連続の有給休暇には、時季変更権が行使しやすい
社員から長期かつ連続の年次有給休暇が申請された場合、時季変更権の行使は認められやすくなるのでしょうか。
このように、
労働者が長期かつ連続の時季指定をした場合は、使用者にある程度の裁量が認められ、時季変更権の行使を認められる余地が大きくなったということは、一般論として言うことができます。
しかしながら、まずは、普段からチームワーク等を重視するような職場環境の醸成、また繁忙期だからこそ、業務の割り振り等の見直しを検討されて方が良いかと思います。
人材マネジメント上のポイント
やる気のない人材を減らすという、マネジメントは、個人の特性や会社・業務に対する志向と、会社が与えるものとのギャップを埋めていくことだと考えられます。
この個人の行動特性と現在の業務において求める行動特性とのギャップが高い場合にはもしかするとその仕事に向いていない場合があります。
また、会社・業務に対して、取り組み姿勢が高いのか、それとも単に生活のためだけでに働いているのかをという本人の志向性も重要になってきます。
また、等級制度の適切な構築が必要になります。本来、管理監督者でないものを無理矢理、管理者として認定しようとする傾向がまだ残っていますが、等級制度の構造が年功的になってしまうリスクは勿論、場合によっては、すべての管理者要件が否認されてしまう可能性があります。