昼休みの電話当番は労働時間に含まれる?企業の適切な対応とルール作成のポイント
最終更新日:2024.10.24
目次
お昼の電話当番の時間分の賃金を請求された
お昼の電話当番に対する賃金を請求されました。
お昼休みに自分の机で電話を出るだけであり、電話がかかってこない場合も多々あります。
そのような場合でも支払必要があるのでしょうか。
実際には電話がなくても待機させているのであれば、労働時間にあたる
労働時間の定義は、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」になります。
お昼休みの電話当番は、
とされていることを考えると休憩時間中に来客や電話対応のために社員を待機させて業務に従事させた場合には、その業務に従事している時間だけでなく待機している時間も労働時間として該当します。
逆に、たまたまそこに居合わせた社員が自らの意思で対応し、かつ、その時間がわずかであるような場合には、労働時間に含まれてないという考え方もできます。
さもなければ、時間をずらして休憩時間を取得させる等の措置が必要になってきます。
原則、労働時間にあたるが、任意で対応した場合は算入されない
お昼休みの電話番は原則として、労働時間に算入される、また任意で対応した場合には算入されない可能性がある現状を踏まえると、一定の不公平感があるのは否めません。
それらを曖昧にしていると、使用者・労働者ともに、理不尽だと思われる事態が発生します。
裁判例においても、銀行の行員が昼の休憩時間に顧客の来訪や電話の対応をした事案において、
「昼の休憩時間ついては、従業員が支店から外出できる、あるいはは行き先を届け出て承認された場合に限られていたが、それは顧客が来店した時や電話があった時の便宜であり、そのことをもって非控訴人が従業員に休憩時間中に労務を遂行すべき職務上の義務を課していたとはいえない。そして、
」との判例があります(京都銀行事件・大阪高判平13・6・28労判811号5頁)。
そのため、従業員同士の不公平感が発生する可能性があります。
労働者が使用者の指揮命令下に置かれていれば労働時間になる
製造業か外回りの営業かどうか等、業種・職種によってばらつきはありますが、就業規則における労働時間の規定の整備が必要です。
指揮命令下にあるかどうかの判断は具体的なケースごとになり、事例の当てはめの場面で様々な要素が考慮されます。
例えば、
①義務付け(強制)の程度、
②業務性の有無(業務との関連性)、
③時間的・場所的拘束性の有無などの要素
を考慮して労働時間に該当するかが判断されます。
また、労働時間定義を明確にすると同時に、会社の指示に基づきイレギュラーの場合もある旨を明示しておく必要があります。
また、運用のルールとして、お昼の電話当番を定めておくことにより、一斉休暇の原則を除外させることになります。いずれにせよ、お昼休みの電話当番においては、会社全体は休みであるが、当該従業員は通常業務である旨の定義、もし当番等を置かない場合においては、お昼に社内にいる
だと思われます。
休憩時間中の来客や電話対応のルールづくりが大切
顧客からの問い合わせや来客の備えて、昼の休憩時間に交替で当番を決めているような場合は、職場で休みつつ、電話や来客があると対応しなければならないので、休憩時間とはならずに会社の指揮命令下として労働時間になる場合があります。
従って、休憩時間中に来客・電話対応等のため社員を待機させるような場合には、労働時間・休憩時間の規制の適用を受けない管理監督者に当番をさせる、もしくは優先的に出るようにする、あるいは電話当番を交代制にするといった対応も必要だと思われます。
また、当番を置く場合には、日々の運用としては、電話当番が必要であれば、ルールして周知させるとともに、代替の休憩時間の確保が必要になります。また、そもそも電話当番が必要になるのかなどの検討も必要かと思われます。
人材マネジメント上のポイント
労働時間に関しては、法に従って厳格に対応することが求められますが、拘束性等がない場合においては、待機時間が除外されることを考えると、
ではないでしょうか。
その際の視点として、
さらには、
これらの価値観を浸透させるにおいて、人材マネジメント上の施策は様々あるかと思います。人事制度、それに伴う評価制度だけでなく、教育体系・キャリアパス等の充実、また、外部の目線の充実を図った社内ベンチャー制度やビジネスプラン等のスキルの習得等も考えられます。