協調性がない社員とどう向き合う?円滑な職場環境を保つための対処法
最終更新日:2024.10.24
目次
自分勝手に業務を行う従業員をチームから外して欲しい
当社のある営業所の一員が、仲間と一線を画し、極めて非協力的で自分勝手に作業を行い、共同で作業を進めていくことを考えていません。
日常業務にも影響をきたしてきているため、他のメンバーから彼を営業所から外してほしいとの要請があります。
どのように対応すれば良いでしょうか。
職場の規律を乱し、秩序を阻害している場合は懲戒理由になる
判例において、本人の執務態度、上司及び同僚対する無礼並びに協調性欠如について、職場の規律を乱し、円滑な職務秩序を阻害しているということが懲戒理由になると認められています(常盤精機工業事件等・大阪地判・平4・3・31労経速1465号15頁)。
ポイントしては、本人の協調性の欠如が、如何に企業秩序が阻害されるかということです。
また、普通解雇という措置も考えられます。
判例では、規定された解雇事由「執務能力が“著しく”不良」とは職場に適用する能力にかける場合を包含するものと解し、当該労働者は社会生活をしていく人間として常識に欠けることが多く、協調性に乏しく、強暴であること、同人の性格等から同人は職場に適用する能力を著しく欠いており、且つ将来の改善の見込みがないことが解雇を認めた判例があります(日本青年会議所解雇事件・昭42・1・24労判27号6頁)。
協調性が重要となる、共同作業が必要な職場かどうかがポイント
協調性を特に必要とする職場(共同作業を必要とする等)であることか否かがポイントになります。
例えば、助産師である労働者について、分娩の経過観察、当直者としての任務、物品の保管、医師の指示の履行、他の看護職員との申し送り等、病院の助産師としての役割を果たすことにおいて欠ける点があるだけでなく、当該労働者自身がその欠点を改めることを拒否し、独善的、他罰的で非協力的な態度に終始したために、他の職員との円滑な人間関係を回復し難いまでに損ない、病院の看護職員として不可欠とされているところの共同作業を不可能にしてしまったことを理由に解雇が有効とされた裁判例があります(相模野病院事件・横浜地裁・平3・3・12労判583号21頁)。
また、これほどの協調性を必要でなかったとしても、何かしらの形で対応しないと、職場の風紀全体が乱れる可能性があります。
そして、業務分担・人員配置等に制約が生じる可能性があります。
また、その結果として業績の低下、優秀な人材の離脱の可能性もあります。
社員の行動によって、会社が被った被害を明確にすることが必要
著しく職場環境を悪化させる要因を作る社員に対しては、一般的に解雇可能とされています。
しかし、単に協調性の欠如という事実のみでは解雇は有効になりません。
社員がとった具体的な行動と、それが原因で会社が被った被害が明確でなければならず、まだまだ改善の余地があると考えられる場合では、解雇が無効になる場合もあります。
まずは服務規律や評価項目にチームで働くことの重要性とそれに沿った行動ができていない場合のペナルティをきちんと明記しておく必要があるかと思います。
懲戒規定においては、始末書レベルが望ましいと思います。
また、評価項目に関しては、協調性・協力する姿勢などの項目を設定しておくことが望ましいと言えます。
業務に明確な影響が出ていれば懲罰対象に
業務に影響を与えるのであれば、懲罰にも該当します。
しかし、明確な影響がなければ営業所から外すことも可能です。
懲罰はある程度法律に依存されますが、人事異動に関しては会社側の裁量がかなりの範囲で認められています。
したがって、日常業務への影響を具体化し、その結果を受けて、配置転換をすることが望ましいと考えています。
日々の労務管理・業務管理が重要だと思います。
業務に直接的な影響がなければ、「クビ」などの不用意な言葉は発するべきではなく、評価によって対応することが望ましいと思われます。
また、業務に影響を与える場合は、懲罰の前にまずは、面談等にておいて対応する方が望ましいと思われます。
人材マネジメント上のポイント
協調性がない人材が発生する要因としては様々ですが、大きく分けて3通りが考えられます。
一つは、仕事が非常にでき、それ故に協調性がないパターン、もう一つは単にやる気がないパターン、最後はやる気が空回りしているパターンです。
異動や懲罰を検討する前に、当該従業員の評価・勤務成績、業績等を調査し、もしそれが良ければ、組織風土全体の問題として、対応しなければなりません。
一方で、それらがあまり良くない場合には、当該従業員の処遇等も踏まえての対応を考慮する必要があります。
また、評価等の状況については、基準等がずれている可能性があるため、業績等につながるフロー等を明確にし、当該従業員の寄与を整理する必要があります。
一方で、能力不足である場合には、配置転換も検討する必要がありますが、それらを検討する前に、低パフォーマンスの人材を中心に、PIP(業績改善プログラム(Performance Improvement Program))の実施体制・ルールを明確にし、行っていくことが重要になってきます。