降格による給与カットは適法?管理職から一般社員への人事異動と給与減額の法的視点
最終更新日:2024.10.24
目次
降格による給料の減額は不当と主張する社員
この度の人事異動で、管理職から降格させた社員がいます。降格に伴い、基本給等の金額を減額させました。
しかし、当該社員は、「不当だ」と言って引き下がりません。どのように対応すれば良いでしょうか。
明確に決められたルールに基づく降格であれば正当
しかし、ルールが不明確であったり、従前の注意・面談等がなければ、不当に該当される可能性も出ていきます。
また、降格等に伴う基本給の減額も問題にならない場合もありますが、賃金は労働者にとって極めて重要な労働条件であることから、
です。
したがって、極端な減額等は、調整給などを導入して避けることが必要になってきます。
減給については労働基準法第91条の規制がある
就業規則において、人事制度・給与体系が、
ただし降格・降職といいつつも、実際には職務内容に変更がなく、給与額が減額されているようなケースでは、実質として給与そのものの切り下げとなり、就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、
をうけることになります。
就業規則に昇降格に関するルールを記載することが大切
昇降格基準のルール化や、
賃金テーブル、
また、管理職の要件などもを明確にして、整備しておく必要があります。
さらには、就業規則等の規定においても、昇降格に関する記載や減額に関する記載が必要です。
職務内容に応じて賃金を定めるという人事制度もそれ自体は適法ですが、職務内容の変更に伴い賃金減額を実施する場合には、職務内容と賃金が連動していることが規定上明確に定められており、かつ当該の職務変更について合理的理由の存在することが必要です。
また、
「仕事ができないから」という理由だけでの降格は不当
があります。
賃金は労働者にとって極めて重要な労働条件であることから、賃金減額を行うためには、
根拠規定があり、
かつ当該減額措置に合理的理由が備わっていなければならないことが原則です。
社内の規程・ルールに基づく降格であることを告げなければならないと同時に、そこに至るまでの注意・面談の履歴も伝達する必要があります。
また降格の程度が2階級以上に及ぶなど極端な格下げの場合においては、労働者の人格権を侵害するものとして人事裁量権の濫用により無効とされるケースもありますので注意が必要です。
人材マネジメント上のポイント
管理者の定義は勿論、なるための手段・要件等を明記しておく必要があります。
一般的には年功的になりがちですが、本来マネジメントが求められます。また、多くの会社はそこに到達するまでのスキル・実績も求めたくなるかと思います。
様々な要件がありますが、管理者の定義を構築する際に、例えば、
また、等級制度の適切な構築が必要になります。
本来、管理監督者でないものを無理矢理、管理者として認定しようとする傾向がまだ残っていますが、等級制度の構造が年功的になってしまうリスクは勿論、場合によっては、すべての管理者要件が否認されてしまう可能性があります。