育成体系の見直しから始める人材の価値転換の促進
2021.05.20
優秀な人材の育成をキーとした人事戦略の見直し
当社は創業30年の電子機器の製造業です。
これまで役割をベースとした等級制度、目標管理とコンピテンシーの評価制度、
基本給レンジを設定した報酬制度を軸とした人事制度を構築し、運用しております。
しかし、数年が経過した新卒の離職、在籍におけるロイヤリティの欠如などを問題を抱えるようになりました。
人事制度の見直しを試みました。
期待する人材とそうでない人材に分け、マネジメント層を目指す人材に対しての処遇を見直し、
専門職のキャリアアップの厳格等を狙った等級制度、それに伴う報酬制度を構築しようとしましたが、
社内のバランスを損なう、これまでの実績・経験が阻害される等の反発にあい、人事制度の構築がとん挫しました。
経営陣の中においても、年功序列を重視する声もあり、明確な反論ができないこともありました。
1.共通する問題課題の認識
人材マネジメントにおいて問題があることは経営陣も共通認識として持っていました。
内容としては、前述の通り、新卒の育成とモチベーションアップ、
将来の経営者・管理者の育成の促進、教育体系の確立などが挙げられていました。
経営陣からもその辺りの見直しに関しては、全員、異論はなく、スムーズに実施できる環境にありました。
また、専門職の低スキルであっても、管理者とそれほど処遇が変わらないため、
従業員の多くが、専門職を目指すような空気がありました。
2.教育体系の構築
これまで研修等を実施したのは、管理者と新卒のみでした。
上記の問題点を受けて、新卒の研修を充実させようとしておりました。
また、管理者に対しても業務上の問題がある度に、研修を実施することで対応してきました。
しかし、その効果が本当にあるのか、定着していないのではないかという問題を感じるようになりました。
また、対処療法が中心であるため、また、各現業部において独自の研修や勉強会も行っているため、
研修疲れも発生するようになってしまいました。
そのため、一度、実施している研修、今後実施したい内容について整理することにしました。
一般的な管理者に求めるスキルを整理し、それらを身に付けるために、以下の視点で整理しました。
1)論理的思考
2)コミュニケーション
3)組織マネジメント
4)チームワーク
5)向上心
また、共通するスキルとして、以下の視点をピックアップしました。
1)経営戦略のフレームワーク
2)プレゼンテーションスキル
3)部下マネジメントスキル
4)経営理念、クレドのブレイクダウン
5)情報の入手と取捨選択スキル
これらを身に付けるために、研修・ON-JT、E-learning等、
身に付ける素養ごとに、これらの手段の目的・効果等を精査し、教育体系を構築しました。
3.あるべき人材像の定義
一般的な内容をベースに教育体系を構築した後に、さらに当社独自の特性を出すため、
本来求めるべき人材像を整理することにしました。
あるべき人材像を整理するにあたり、行動特性とスキルの2軸で整理しました。
軸の設定として、求める要素として、忠誠心・やる気等、目に見えないものではなく、
具体的な行動や発揮するスキル等、「目に見える」ものをベースに整理しないと抽象的なものなってしまうことを周知徹底しました。
行動特性は、さかえ経営のコンピテンシーディクショナリーからそれぞれの職種に求める要素を抽出し、
組織・論理的等のカテゴリごとに分類し、傾向を可視化することにより全体のバランスを保つようにしました。
スキルに関しては、さかえ経営のジョブ型制度のメゾットを取り入れ、各業務(業務分掌)ごとに評定を行い、レベル分けを行いました。
4.習得手段の再整理と研修の内製化
スキル・行動特性を抽出した後に、それらを習得するためにどのような形態が望ましいのか、
研修・ON-JT、E-learning等の手段のメリット・デメリットを明確にし、
習得する要素、その手段を取りまとめると同時に、
研修の場合は、各研修会社に提出するためのRFP(Request for Proposal)を作成しました。
これまで、研修会社が主体になって実施していましたが、あるべき人材像を整理した結果、
外部に出す必要がないものについては、社内置ける研修講師の選定と研修内容を取りまとめて、
外部講師以上の効果を出すことができました。
5.日常的な育成の仕組み
研修等を行うにあたって、どうしてもその場限りになってしまうことがあります。
それを避けるために、研修後に取り組み目標を設定し、
3カ月後のフィードバック、改善方針等を記載し、PDCAサイクルを回すことができるようにしました。
また、各人に対して、育成シートを作成し、現状の行動特性・スキルレベルと、
目指すべき特性・スキルとのギャップを把握することにより、
身に付けるべき内容を明確にし、各人ごとに対する成長意識の醸成を図りました。