人の役割の変化―企画・専門化―(1)
最終更新日:2024.10.24
はじめに
前回は、実際に分析事例を説明すると同時に、ビックデータ活用における留意点について記載しました。
今回は、HR-TECHの残りの論点、給与計算簡素化や業務改善によって、人の役割は何かということについて触れていきたいと思います。
AIが果たすべき役割
最初にそもそも「AI」とは何かについて触れていきます。
2016年はAI元年と言われています。
しかしながら、AIやRPA、ロボットなど様々なシステムやサービスが登場しました。
単にルールを単純化するものから、複雑な動き・判断までできるもの、そして、学習能力を有しているものまであります。
また、現在、AIからRPA、コグニティブなど、色々な言葉があります。
そもそも、人工知能とは何でしょうか。
「言語の理解や推論、問題解決などの知的行動を人間に代わってコンピューターに行わせる技術。
AIとも呼ばれる。人工知能を取り入れた応用分野として、特定分野の人間の知識を整理し、データとして蓄積しておき、問い合わせに対してその意味を理解しながら、蓄積したデータを用いて推論、判断するエキスパートシステムなどが挙げられる。
また、人間のしゃべる言葉や手書き文字を理解するパターン認識や機械翻訳システムなどにも人工知能の技術が応用されている。 」(出典;ASCII.jpデジタル用語辞典/ASCII.jpデジタル用語辞典について)
一言で人工知能といっても様々なレベルがあります。
そのため、あえて「人工知能」という言葉を使わずに、RPAやコグニティという言葉を使っているメーカーもあります。
どうやらそのレベルによって、考え方が異なるようです。
筆者のイメージとして、5つのレベルがあります。
レベル1:定型的なこと行う
レベル2:規則性のあるルールの理解、判断を行う
レベル3:規則性の薄い・解釈が必要なルールの理解・判断、最善な判断を行う
レベル4:自分で判断基準を設計し、判断を行う
レベル5:人と同じレベルなことを行う
現在、我々の生活や仕事において、目に留まっているものは、レベル1が大半で、高度なものでもせいいぜいレベル2までといわれています。
PCの誤字チェックや、アドワーズなどもその一端です。
すでそれらを応用したものが段階的に導入されています。
ではなぜ、近年、騒がれているかというと、単位に1つのブームになっているかだと考えられます。
今回は、第3次ブームといえます。
実は1960年から人工知能という概念は既にあり、1990年代から2000年後半にかけて、不況等もあったため、下火になってしまいました。
そして、2010年以降急激に普及し、第3次ブームとなりました。
しかし、この第3次ブームによって、人工知能の時代は幕開けといってもいいと思います。
特に日本では、急激な少子高齢化、それに伴う労働人口の減少、さらには「働き方改革」による生産性向上が課題となり、この課題の解決に、人工知能は適していると考えられているからです。
先述の通り一般的に2016年がAI元年と言われており、実験段階ではすでに様々なものが開発されています。
代表的な例としては、「自動運転技術」や「診断システム」などかと思います。
今後、短期的には、「自動決済権限の保持」「機械翻訳の実用化」「接客等店舗オペレーションの最適化」などが実現される見込みです。
そして、オープンデータの解析より施策形成のへの活用や自動運転などのいわゆる汎用的人工知能も実現されることでしょう。
AIに代わる想定業務(共通)
2030年には、今の仕事の半分がAI等に代わるとの試算もあります。想定される企業における業務に例えると、
1.給与計算、経理業務、受注処理等の事務作業
2.物流業務
3.生産(製造)関連
4.その他入力系を中心とした業務
などが挙げられます。
一方で、企画業務や、高度な判断を要する業務、全く経験したことがない業務等が残るものと思われます。
上記の内容から最近のシステム等の状況を見てみると、4はもちろんですが、給与計算など1の業務からの代替が始まっているのではないでしょうか。
ここの判断に分かれる経理や受注処理等はまだまだイレギュラーが多く、また最終集計の分析を行うに当たって、人の判断やアプローチが入るため、まだあまり実用には至っていない印象があります。
しかし、給与計算においては、計算そのものは規則的なルールに沿っている者が多く、さらにICレコーダーの導入もあり数多く登場するようになってきた印象があります。
さらには、離職票等の簡単な手続きであれば、退職フラグが立つことによりすべて一貫して行うことも可能になります。
間接業務はかなりの確率で自動化される要素が多く、人の役割として、企画的業務もしくは、システム・AIの補助的業務にシフトしていくことになると思われます。
AIに対する誤解
人事の現場だと、採用面接から人事評価まで、人の評価をAIが行うサービスも登場しています。
しかし、現在の段階において、過去のデータの蓄積から傾向を把握し、その結果を弾き出すものに過ぎません。
それはそれで、非常に優れたものだと思いますが、データ(過去の実績)がないと機能しません。
前回、前々回にご紹介した弊社HR-PROGにおいても、過去の実績をデータ化し、統計解析を行い、その結果の近似値を算出したものになります。
現在、AIと呼ばれるものの多くが、「高度なシステム」と換言することができるでしょう。
事実、AIという言葉を使わず、「RPA」「ゴクニティ」という言葉を使用している企業が多いのもその要因だと言えます。
「AI」は無限の可能性を秘めています。
人が担う作業的な要素がますますなくなっていくことでしょう。
しかし、万能ではありませんし、「人ができないこと」ができるものでもありません(作業の膨大さ、人の力ではできないことはのぞく)。
あくまでも、「生産性向上」に寄与するものであるともに、人の役割・動きもこれに合わせていくことが必要になります。
巷では、職がなくなる、AIに人間が負けるなど言われています。
確かにどれだけ否定しても、その部分はあると思います。
今後、企業はもちろん、従業員においても、”AIを使う“という感覚を覚える必要があります。
また、AIに対する人の役割の定義も必要になってきます。
次回は、AIの導入により、人の役割がどのようにシフトするのか、生産性向上とは何かということについて触れていきたいと思います。