休業期間中に有給休暇は可能?自宅待機や休業手当の観点から解析
最終更新日:2024.10.24
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休業期間に、満額支給の年次有給休暇を申請。会社は受け入れるべき?
新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて休業命令を発した後に、休業手当の6割では不満だとして、満額支給の年次有給休暇を使いたいと主張されました。
この場合、年次有給休暇の申請を受け入れる必要があるのでしょうか。
労働義務のない日は年休権の行使はできない
「休暇とは特定の事実、事由(年休の申出等)の発生によって、もともとは存在していた労働義務が一部または全部の労働者に特に免除されるもの」という見解が一般的です。
つまり、
ただし、すでに、年休権行使をされた年休取得日につき、事後的に休業が命じられた場合には、従業員から年休日の時季変更権の撤回がない限り、先に指定された年休権による年休手当の支払いが必要です。
義務はないが従業員の賃金保証のため、年休行使を認めるかは経営判断
労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。
一方、有給休暇を取得させた場合、会社は休業手当ではなく給与の100%を支払う必要が出てきます。
しかしながら、人事労務の現場で、従業員への賃金保証の観点から年休行使を認めるか否かを決めるのは、企業の体力に応じた経営判断によります。
休業を命じる前に年休の申し出があった場合は、有給休暇扱い
年次有給休暇は労働義務があることを前提に労働を免除するための休暇なので、本人から有給休暇の申出があった時点でその希望日が「労働義務がある日(労働日)」なのかどうかがポイントとなります。
したがって、従業員からの有給休暇の請求を拒むことができます。ただし、休業を命じた後でも会社が認めるのであれば有給休暇を取得させることは可能です。
休業手当は、正社員やパートなど雇用形態に関係なく全従業員が対象
休業手当は、正社員やパート、アルバイト、契約社員など、雇用形態に関係なく全ての従業員が対象となります。当該事例は新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた場合ですが、
なお、産後休業後に引き続いて育児休業を開始せず、産後休業終了後に年次有給休暇を取得してから、育児休業を開始しようとする場合は、育児休業の請求前に年次有給休暇を請求していれば、当該日は、当然労働義務が発生するため、年次有給休暇の請求は認められます。
業務に責任感ある人材育成で、適切な年休取得を促そう
年次有給休暇という概念は、労働者が「体を休めるという」ことになります。
従って、その請求に関しては、基本的に拒むことができない場合が多いです。しかし、従業員が会社の業務・自らの職に少しでも責任感等があれば、いたずらな行使を抑制することは可能となります。
それにはやはり、責任感の醸成の一言につきます。それは、一長一短ではありませんが、それらの積み重ねにより、責任感・会社に対するコミットメントが強くなります。
責任感のある社員を育成することはひとつのテーマであるかと思います。しかし、過度になりすぎると、他の人に対しても悪影響を与えてしまいます。
と当時に、1on1等の機会を積極的に持ち、各社員の心身の状況・業務負荷等を観察する必要があります。
また、別のアプローチとして、業務の効率化やカイゼンの意識付けを行うことを目的とした、ワークショップや研修、さらには目標設定等も想定されます。
いずれに施策にしても、責任感を醸成しつつ、その責任感を効率化、さらには生産性向上につながるようなアプローチが必要になります。