休業期間中の仕事は可能?休業中の業務管理と法的視点を解説
最終更新日:2024.10.24
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休業期間中に、簡単な事務作業を従業員に依頼することはできる?
新型コロナウイルス感染症の影響により、休業することになり、従業員に休業手当を支給する予定です。
この休業中に、簡単な事務作業や電話応対、SNSへの投稿等の作業をさせることは可能でしょうか。
簡単な作業でも、業務に従事した分だけ賃金を支払う必要あり
休業期間中、従業員が業務を行った場合には、少なくともその時間は休業とはなりません。
会社が指示した場合はもちろんですが、従業員が自ら作業を行った場合でも会社が明確に禁止や阻止しない限り、黙示の業務指示があったと評価され、業務となります。
これは、簡単単純かつ短時間の業務であっても変わりはありません。
したがって、従業員が業務に従事した分については、賃金を支払う必要があります。
もっとも、一日のうち一部の時間を就労扱い、一部の時間を休業扱いとすることは可能です。
「休業」は、その時間一切の業務を行わないこと
「休業」とは、労働者がその事業場において、所定労働時間に働く意思と能力があるにもかかわらず、労働する(させる)ことができない状態をいいます。
「休業」といえるためには、その時間、一切の就労つまり業務を行わないことが必要です。
この点、「労働時間」とは、労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間とされています。
ただし、使用者が知らないうちに、労働者が勝手に業務に従事した時間まで「労働時間」として業務と評価することは適切ではないため、業務従事は明示または黙示の指示を要するとされています。
一日のうち一部の時間を就労扱い、一部の時間を休業扱いとすることは可能
会社の明示または黙示の指示に基づく作業は、たとえ簡単で短時間で終わる作業でも業務に該当し、その部分については賃金を支払わなければなりません。
しかし、一日のうち一部の時間を就労扱い、一部の時間を休業扱いとすることは可能ですので、時間単位の休業が可能である旨、在宅勤務の際の労働時間管理法、業務内容、その際の賃金の計算方法等を就業規則等の規定であらかじめ定めておくと、休業期間中に業務を行わせる必要がある場合に有用です。
この場合、稼働部分には通常の賃金を、休業部分には、「使用者の責めに帰すべき事由」があるとして労基法26条を前提とした場合、その日に発生した賃金(実働分)の平均賃金の60%以上の休業手当を支払う必要があります。
従業員が会社のため自主的に業務を行った場合も賃金を支払う必要がある
会社が行う業務指示には、黙示の指示も含みます。
会社が特段の指示をしておらず、労働者が会社の意向や、今後の作業の流れを汲んで、休業期間中に、「時間があるから」と自ら短時間で終わるような簡単な事務作業、電話応対、ホームページの更新、SNSの投稿等の情報発信を行った場合も、会社があらかじめ厳しく禁じているにもかかわらず行った場合は別として、会社の黙示の指示等に基づく業務と評価でき、休業とは言えません。
したがって、このような場合にも、稼働時間分の賃金を支払う必要があります。
業務の量・内容の把握を管理者と共有する環境づくりを
従業員の業務を日々、管理することが必要になります。日報等による進捗の管理により、今どのくらいの作業・業務量があるかどうかを把握し、優宣順位等も把握して、時間外の必要性等を従業員に一任するのではなく、管理者等も把握することができるような環境づくりも必要になってきます。
そのような業務把握を実現した次のステップとして、生産性向上に向けた取り組みや在宅勤務の導入・浸透等につなげていくことが望ましいと考えています。
いずれにしても、業務の量・内容の把握を第3者と共有することによる効果は非常に高く、特に管理者の動きが重要になってきます。
そのために、残業や深夜労働等を勝手に認めるのではなく、必要性等を踏まえて、判断していくことが必要になります。