派遣社員から直接雇用への切り替えは法律違反?継続雇用したい場合の対応まで解説!
最終更新日:2024.10.24
目次
派遣社員を直接雇用してもOK?どんな手続きが必要?
派遣会社から、もうすぐ契約期間が終わる派遣社員の直接雇用の申し出がありました。
派遣社員から、直接雇用になるのは法律上問題はないのでしょうか。またどのような手続が必要でしょうか?
そもそも「直接雇用」とは?
直接雇用とは、企業が従業員を採用する際に、企業自身と従業員との間で行われる雇用契約のことを指します。この雇用形態には、正社員などが典型的な例で、パートタイムやアルバイト、契約社員なども、直接雇用のカテゴリーに含まれます。
これに対し、派遣社員や請負社員のように、企業と労働者が直接契約を結ばない雇用形態は「間接雇用」と称されます。
一般的な派遣・契約社員の雇用期間は「3年」
契約社員に関する雇用体系は、所定の期間が設定された働き方で、法的には「有期契約労働者」と総称されています。
契約社員として企業に入社する際には、「3年契約、6時間勤務」や「1年契約で1日8時間勤務」など、労働時間や担当業務と共に、契約の期間を定められます。
ただし、雇用契約の期間は法律によって最大限度が設定されており、規定を超える期間の契約は不可能です。そして一般的な契約社員の場合であれば、最大雇用期間は『3年』と定められています。
ただし、厚生労働大臣が指定する以下のような職種であれば、契約によって最大『5年』雇用期間を設けることが可能です。
・公認会計士
・医師
・一級建築士
・不動産鑑定士
・システムエンジニア
契約期間が満了した場合には、「更新 or 契約終了」のどちらかを選択しなければなりません。
「派遣社員の雇用」は法律上OK
派遣社員を雇用すること自体は、法律上の問題はありません。
むしろ労働者派遣法第33条では、「派遣会社は派遣社員が派遣先企業との契約終了後に雇用契約を結ぶことを妨げてはならない」と定められています。
ただし、派遣契約が進行中に派遣社員を直接雇用する場合、派遣会社の損害が生じる可能性があるため、このような場合に直接雇用を禁じる条項を含むことが一般的です。
この規則を無視した場合、違約金が課せられることや、最悪の場合は訴訟に発展する可能性もあります。そのため、安全を期すためには、派遣契約が終了した後に直接雇用を検討することが望ましいでしょう。
引き続き雇用したい際は、「雇用契約の申し込み」が必要
契約期間が満了した後も、引き続き雇用することが可能ですが、その際には改めて「雇用契約の申し込み」が必要となります。
派遣労働者の希望を踏まえた直接雇用の促進を図るため、派遣先の会社は以下のような場合に、派遣社員に対し雇用契約の申込みをしなければならないとして、直接雇用の申込みを義務づけています(派遣法40条)。
①派遣可能期間に制限のある業務について、派遣先の会社が、派遣元の会社から派遣可能期間をこえて労働者の派遣を継続しないという通知を受けたにもかかわらず、当該派遣業務に当該派遣社員を引き続き使用する場合で、当該派遣社員が、派遣可能期間満了日までに、派遣先の会社と直接雇用を希望したとき。
②派遣先の会社が、派遣可能期間に制限のない同一業務に3年をこえる期間継続して同一の派遣社員を受け入れている場合で、当該同一業務に新たに労働者を雇い入れるとき。
派遣先の申し込みは、「労働条件の提示」のみでOK
派遣先の会社による申し込み義務は、派遣先の会社が考える労働条件を提示すれば足り、派遣社員がこれに承諾しない場合には、派遣社員との直接雇用関係は生じません。
また、派遣先の会社が違法行為と知りながら派遣労働者を受け入れている場合、違法状態が発生した時点において、派遣先が派遣労働者に対して直接雇用の申込みをしたものとみなされます(派遣法40条の6第1項)。
これに違反した場合、厚生労働大臣は、派遣先に派遣労働者を雇い入れるよう指導・助言・勧告し、これにも従わない場合には、厚生労働大臣は、企業名を公表できるとしています。
直接雇用を行う場合、派遣社員に情報提供を行う必要がある
派遣元から直接雇用の依頼があった場合は、派遣先は労働者募集情報の提供を行う必要があります。派遣社員が従事する業務の募集に限定せず同一事業所の求人があれば、派遣先はそれを対象派遣社員に周知しなければなりません。
正社員に限らず契約社員、パートタイマー等の募集も含まれます。周知の方法は派遣社員に直接伝える、事業所の掲示板に募集要項を貼り出すことの他、派遣元を通じて対象者に周知することも可能です。
派遣元を通さずに派遣社員に直接情報提供を行う場合は、派遣先から派遣元に情報提供した旨を伝えることが望ましいとされています。また、派遣先は派遣契約終了時だけではなく、派遣就業中にも直接雇用を推進する措置を講じなければなりません。
派遣先が正社員の中途採用を行う場合、その募集情報を派遣社員に周知し応募の機会を提供してください。対象者は派遣先事業所で1年以上勤務している派遣社員です。
派遣終了後は、可能な限り「直接雇用する努力義務」がある
先にも触れましたが、単に派遣労働者の契約満了日が到来したことだけを理由に派遣先が受け入れている派遣社員を直接雇用しなければならないという定めはありません。
しかし、派遣社員の中には直接雇用を希望しつつも、やむを得ず派遣就労に従事している方も存在していることから、派遣先も可能な限り直接雇用することが求められています。
派遣終了に際して派遣先に求められることは「雇入れの努力義務」と「労働者募集情報の提供」です。
派遣元には、同一の組織単位に継続して1年以上派遣される見込みがあるなど一定の場合に、派遣社員の派遣終了後の雇用を継続させるための措置を講じることが必要となるため、個人の契約満了日が到来していない場合でも、派遣社員が希望する場合は、派遣先へ直接雇用の依頼をすることがあります(努力義務)。
ただし、直接雇用の形態は正社員以外(パート・アルバイトなど)でも差し支えありません。
採用・雇用の際に、人事が注意すべき『2つ』のポイント
採用時において、どのような人材を求めているかどうかを明確にし、その要件に合致した人材を採用することが求めれます。
しかし、職務経歴書等から確認することが通常ですが、中には誇張表現等があり、的確に反映できない可能性があります。そのため、身元調査は一番、近いと思われますが、難しい側面も多々あります。解決の方向性としては、以下の2点かと思われます。
①:「求める人材像を行動特性・取り組み姿勢」から可視化すること
個人の特性としては、具体的には行動特性が挙げられます。
この個人の行動特性と現在の業務において求める行動特性とのギャップが高い場合にはもしかするとその仕事に向いていない場合があります。また、会社・業務に対して、取り組み姿勢が高いのか、それとも単に生活のためだけに働いているのかという本人の志向性も重要になってきます。
②:「従事して欲しい仕事」を明確にすること
欠員にせよ、増員にせよ、採用予定者が従事することが予定されている業務等を明確にすると同時に、その到達レベルを可視化していくことにより、その内容に沿った指導・指示が可能になります。
派遣社員から直接雇用を行う際にもこれは同様で、①の「取り組み姿勢」から見た、当人の適正を鑑み、人事は「どんな仕事に従事してほしいのか?」をあらかじめイメージしておく必要があると言えるでしょう。
直接雇用への切り替えは、会社側のメリットも大きい
企業が派遣社員を直接雇用に切り替える際には、多くのメリットがあります。この際には企業側にも負担がかからないよう、「キャリアアップ助成金」などの支援金を利用することも可能です。
ただし助成金を受け取るためには、厚生労働省が提供する事前にキャリアアップ計画書を準備し提出する必要がありますので、専門資料や専門家に相談しながら円滑に進めてください。
さかえ経営では、東京エリアの企業(200〜1,000名規模)における「雇用形態のルールづくり」や法的な観点からみた「契約の切り替え手続き」などをサポートいたします。
派遣社員から直接雇用への切り替えついてお困りの人事・労務の方は、まずはお気軽にご相談ください。
さかえ経営では、様々な雇用形態の策定を法的な視点でサポートします。
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