社員から介護休暇の申し出があった時の対応方法:介護休業との違いとは
最終更新日:2024.10.24
目次
介護休暇制度を設けていないのは問題?社員からの介護休業の申し出にどう対応すべき?
社員から、年老いた母が病気で倒れたため、介護休業を取りたいという申し出がありました。
しかし、当社には介護休暇制度を設けていません。
制度はなくても介護休暇を与えなければならないのでしょうか。
就業規則に記載がなくても、労働者の申し出に応じて介護休暇を付与しなければならない
家族の介護に関する制度として「介護休暇制度」「介護休業制度」があります。
「介護休暇」「介護休業」は、労働者が、要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族※の介護や世話をするための休暇です。
※対象家族は、配偶者 (事実婚を含む) 、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。
どちらも育児・介護法で定められた制度ですので、就業規則に記載がなくても、労働者の申し出があった場合には、事業主は付与しなければなりません。
また、どちらも給与の支払い義務はなく、有給か無給かは、会社の規定によります。
「介護休暇」は、1年度(事業主が特に定めをしない場合には、毎年4月1日から翌年3月31日)につき、対象家族1人の場合は、5日間まで、対象家族が2人以上の場合は、年10日までです。
1日または時間単位で取得できます。
取得した休暇は、短期的な看病・直接介護のほか、病院や介護サービスの付き添いや手続き、ケアマネジャーなどとの短時間の打ち合わせなどにも使用できます。
「介護休業」では、対象家族1人につき通算93日以内(3回までの分割可)のまとまった休みを与えることとなります。
「介護休業」では、雇用保険の被保険者で、一定の要件を満たす労働者は、介護休業給付金が支給されます。
詳しくは、お近くのハローワークにご確認ください。
「介護休暇」の取得は、日々雇用を除く、対象家族を介護する男女の労働者が対象
「介護休業制度」は、介護離職ゼロを目指した制度です。
介護・育児による離職防止、仕事と家庭を両立できる社会の実現を図るため、令和3年6月に育児・介護休業法が改正され、令和4年4月から段階的に施行されます。
対象は正社員だけではなく、パート・アルバイト・派遣社員・契約社員など有期契約労働者も含まれます。
事業主として、労働者からの申し出を拒むことはできません。
「介護休暇」の取得については、日々雇用を除く、対象家族を介護する男女の労働者が対象です。
なお、労使協定を締結している場合、次の労働者は対象外となります。
・入社6か月未満の労働者
・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
「介護休業」の取得については、日々雇用を除く、対象家族を介護する男女の労働者が対象ですが、パートやアルバイトなど、期間を定めて雇用されている方は申出時点で、次の要件を満たすことが必要です。
・入社1年以上であること。(令和4年3月31日までの申出について。令和4年4月1日からは、この要件は廃止されます。)
・取得予定日から起算して、93日を経過する日から6か月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。
なお、労使協定を締結している場合、次の労働者は対象外となります。
・入社1年未満の労働者
・申出の日から93日以内に雇用期間が終了する労働者
・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
育児・介護休業法では、育児・介護休業等を理由とする不利益取扱いの禁止(第10条:例えば解雇・雇止め・降格など)や、ハラスメントの防止(第25条)も規定しています。
中小企業にとっては介護休業を取得させるにあたって、人員補充、配置転換、短時間勤務への対応といった就労制度への負担が多く生じることとなりますが、要件を満たすことで中小企業を対象とした「両立支援等助成金」の介護離職防止支援コースでの助成金を受けることもできます。
まずは就業規則等に「介護休暇」「介護休業」制度を組み入れましょう
事業主は、就業規則等に「介護休暇」「介護休業」制度を組み入れることのほか、要介護状態にある家族を介護する労働者が就業しながら、家族の介護を行えるように支援するための「対象家族の介護のための所定労働時間の短縮等の措置」を講じなければなりません。
これは短時間勤務の制度(1日・週・月の労働時間の短縮や始業・終業時間の繰り上げ・繰り下げ、フレックスタイム制度の導入等)が該当します。
ほかにも時間外労働の制限、深夜勤務の制限、所定外労働の制限などを整えることが求められます。
また、「介護休暇」は、書面の提出に限定されておらず、口頭での申出も可能ですが、「介護休業」では、労働者が休業開始予定日2週間前までに、書面等により事業主に申し出る必要があります。
ただし、就業規則で、申出期限を2週間より短い期間にする等、労働者に有利な条件を設定することは差し支えありません。
事業主は、労働者から「介護休業」の申出がなされた時は、介護休業開始予定日及び介護休業終了予定日等を労働者に速やかに書面等で通知しなければなりません。
規程の例や様式例は厚生労働省ホームページからダウンロードできます。
「介護休業」と「介護休暇」の取得方法の流れとは?
対象となる労働者から介護休暇・介護休業の請求を受けた場合には、事業主は応じなければなりません。
<介護休業の場合>
①労働者に、休業開始予定日の2週間前までに、介護休業についての書面(例:育児・介護休業申請書等)を提出してもらいます。
②労働者の書面提出を受け、事業主は、申請した労働者に、休業開始予定日及び休業終了予定日等を書面(例:育児・介護休業取扱通
知書等)にて作成し、通知します。
※育児・介護休業法には、介護休業開始日の繰上げ・繰下げ変更の定めがなく、労働者の申出だけでは当然には変更できません。
労働者と事業主でよく話し合って決めることが重要となりますので、休業開始日の変更を認める場合は、変更できる旨の取決めや
その手続等をあらかじめ就業規則等で明記しておくことが望ましいと考えられます。
③雇用保険の被保険者で、一定の要件を満たす場合には介護休業期間中に休業開始時賃金月額の67%の介護休業給付金が支給されますので、介護休業期間終了後2か月後の属する月の末日までに、ハローワークへ申請します。
<介護休暇の場合>
介護休暇においては、書面の提出が限定されていないため、口頭での申し出も可能です。
介護休暇は1日または時間単位で取得できるので、有給休暇の申請と同様の運用にするなど、取得するためのルールを明記しておくことが望ましいと考えられます。
人材マネジメント上のポイント
従業員の業務を日々、管理することが必要になります。
日報等による進捗の管理により、今どのくらいの作業・業務量があるかどうかを把握し、優先順位等も把握して、時間外の必要性等を従業員に一任するのではなく、管理者等も把握することができるような環境づくりも必要になってきます。
そのような業務把握を実現した次のステップとして、生産性向上に向けた取り組みや在宅勤務の導入・浸透等につなげていくことが望ましいと考えています。
いずれにしても、業務の量・内容の把握を第3者と共有することによる効果は非常に高く、特に管理者の動きが重要になってきます。
そのために、残業や深夜労働等を勝手に認めるのではなく、必要性等を踏まえて、判断していくことが必要になります。