成果が見えにくい?IT技術者の適切な評価方法とマネジメント
最終更新日:2024.10.24
目次
IT技術者の業務成果が見えにくい。専門職の評価基準はどう決める?
ITに対応するため、IT技術者を初めて雇い入れました。
業務として社内のシステム機器周辺の保守・運用サポートの他、社内の業務システム(会計・人事・労務・生産管理)の構築を担当させています。
システム機器周りの保守・サポートは、問題なく仕事をしてくれていますが、社内の業務システム構築については、進捗を尋ねても「調査中です」「テスト環境を作っています」「自社に取り込むためのテストデータを作成しています」など成果が見えにくい状態です。
また、家に仕事を持ち帰り深夜に作業をしているようです。
他の社員から「特別扱いしている」という不満が出ています。
どのように扱ったらよいでしょうか。
専門職は、ミッションを期限以内に達成させられるかで評価
会社のルール通りでは、マネジメントが難しい「専門職」を雇用した場合、専門職にいつまでに何をさせたいのかが明確でないと、お互いに不平不満が溜まってしまいます。
「専門職制度」では、専門的な職能を活かした職務および役割を持たせます。
総合職では、役職が上がると数字や人のマネジメントを担ってもらいますが、「専門職」には自己完結型です。
ミッションを与えて、期限以内にミッションを達成させられるかが評価に値します。
専門職とマネジメント側が相談しながら、概算ではなく、ある程度の粒度でシステム開発に関する計画を立てて合意し、その計画に沿った実績(成果)で評価をします。
専門職の給与体系も一般職・総合職と別なテーブルを用いるとよいでしょう。
給与体系に等級を用いている場合は等級も異なり、役職手当に相当する手当を技術手当として支給するなど、専門職を評価する給与テーブルを導入します。
就業時間も通常社員と同様とするか、または裁量労働制やフレックスタイム制があります。
ただし、裁量労働制には導入要件がありますので、抵触しないよう注意してください(裁量労働制を導入するためには、労使協定の合意が必要です)。
また、専門職制度を導入するにあたり、就業規則の変更が生じますので、同時に労働者全体への説明と理解を得てください。
専門職であってもライン部署のスタッフ(専門的能力を発揮してもらうスタッフ)となるので、ライン管理職にも計画と実績で評価することを理解してもらいます。
ライン管理職には、専門性の知識を要求することはなく、会社が期待する役割に対し、期日通りに成果をだしているかといった目標管理制度の評価を行ってください。
計画に遅れが生じて変更する場合にも、「なぜ計画通りに進まないか」「その原因」「解消・改善策」など納得できる理由を説明させ、それが妥当であるかを判断します。
システム構築計画を立て、実績の報告を受けて成果を見える化
「専門職制度」は、高度な技術を求める企業が適用範囲を限定して導入します。
営業部門や管理部門など、これまで専門職を必要とせずに成り立っていた仕事には導入しないことを勧めます。
専門職はプロフェッショナルです。
わかりやすい例ではプロ野球選手・プロサッカー選手があります。
プロフェッショナルとして期待した役割や成績が残せなければ、減俸・退団などの処遇が行われます。
役割・期待値・成果が上回れば、待遇アップとなっています。
シーズン後の査定は成績データなどの結果からシビアに検討され、次年度の年俸提示でも具体的なリクエストが行われています。
今回のケースでは、該当の社員はすでに入社していますので、専門職制度導入により待遇を低下させることはできません。
現状維持となるよう制度設計を行ってください。
専門職制度を導入しない場合は、一般職・総合職と同様な自社の一般的な評価制度を継続することとなります。
今回のケースでは「成果が見えにくい」とありますので、システム構築にあたっての計画を立てて、実績の報告を受けて成果を見える化してください。
システム機器周辺の保守・運用サポートを専門職の職務内とするか職務外(専門職以外でもできる仕事とする)かも課題です。
システム機器の導入台数にもよりますが、以外に手と時間がかかるものです。
筆者の感覚で恐縮ですが、業務システムや基幹システムを導入していない会社でのシステム機器の保守・運用には、専門職ほどのスキルは不要だと思われます。
専門職の高い給料の範囲で何をさせるのかをシビアに考えてください。
専門職の高い給料の範囲で何をさせるのかをシビアに考えてください。
専門職=裁量労働制ではないが、導入するならメリットとデメリットを考慮
「専門職」=裁量労働制ではありませんので注意してください。
裁量労働制を導入するにあたっては、「法令で決められた業務内での適切な対象業務への適用(SEは適用されますが、プログラマーは適用されません)」「詳細な労使協定の締結(7項目)」「労働基準監督署への届出」が必要で、導入後も届出通りの採用と労働条件通知書での提示が必要です。
裁量労働制には、労働時間週40時間という制限はなく、出退勤も自由裁量です。
みなし時間を超過した場合の残業手当や深夜手当、休日割増料金が発生します。
裁量労働制は、労働時間が不規則となるため体調を崩すことも多く見られますので、メリットよりもデメリット面を考慮して導入を検討してください。
「成果が見えにくい」のではなく、成果を見える化できていない会社の問題
「成果が見えにくい」のではなく、成果を見える化できていないことが問題です。
成果とは「あることをして得られた(よい)結果」(デジタル大辞泉)ですので、「あることをする」ための手法・方策と結果を比較することが見える化であり評価となります。
なにを・どのように・いつまでが手法・方策にあたり、これを時系列で並べると計画となります。
やった結果だけに着目するのではなく、コミットした内容との比較です。
専門職制度の導入有無ではなく、「IT技術者の職務評価をどのようにするか」が論点です。
営業担当者の職務評価について、営業訪問数・成約数・見込み率・売上高など定量化できる数値以外でも、営業トークのスキル、商品知識、プレゼン能力など、定性的な観点もあるでしょう。
IT技術者には定量化できる数値評価は難しく、「定性化」項目で評価します。
例えば、成果の他にも課題解決力、実行力も定性評価項目になります。
ITエンジニア業界でもITエンジニアの評価にはそれぞれ各社の工夫があります。
人材マネジメント上のポイント
責任感のある社員を育成することはひとつのテーマであるかと思います。
しかし、過度になりすぎると、他の人に対しても悪影響を与えてしまいます。
責任感を醸成しつつも、チームの一員としての職務・役割を定義し、特定の人材に業務が集中しないように心がけると当時に、1on1等の機会を積極的に持ち、各社員の心身の状況・業務負荷等を観察する必要があります。
また、別のアプローチとして、業務の効率化やカイゼンの意識付けを行うことを目的とした、ワークショップや研修、さらには目標設定等も想定されます。
いずれにしても責任感を損なうことなく、業務がカバーできる体制の構築、また、スキルアップ等の期待、また、体調優先である旨を伝える必要があります。
また、採用時において、どのような人材を求めているかどうかを明確にし、その要件に合致した人材を採用することが求めれます。
1)求める人材像を行動特性・取り組み姿勢から可視化すること
個人の特性としては、具体的には行動特性が挙げられます。
この個人の行動特性と現在の業務において求める行動特性とのギャップが高い場合にはもしかするとその仕事に向いていない場合があります。
また、会社・業務に対して、取り組み姿勢が高いのか、それとも単に生活のためだけに働いているのかという本人の志向性も重要になってきます。
2)従事して欲しいジョブを明確にすること
欠員にせよ、増員にせよ、採用予定者が従事することが予定されている業務等を明確にすると同時に、その到達レベルを可視化していくことにより、その内容に沿った質問等をすることが可能になります。