女性従業員が深夜勤務や残業を希望!法令遵守と労働者保護のバランスは?
最終更新日:2024.10.24
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生活苦から高時給の深夜勤務を希望する女性社員。拒むことは法的に可能?
A社において、Bという女性労働者は、業績悪化によるシフト数の減少により生活が苦しいため、高時給の深夜勤務のシフトのを希望してきました。
女性に深夜労働は禁止されているいるのでしょうか。
一方で、A社は、法令遵守はもちろん、犯罪防止、セクハラ防止、母性保護の視点から、女性労働者に深夜勤務や長時間労働を求めることはふさわしくないとの判断です。
その要請を拒むことができるでしょうか。
女性という理由で深夜勤務や残業をさせないのは、雇用機会等均等法で違反
妊娠や出産の状況、あるいは家族に対する責任を持つ労働者の場合、その要望があれば、深夜や時間外の勤務に制限が設けられます。
しかし、それらの事情がなければ、男性と同等に働くことに問題はありません。
逆に、
募集・採用、配置・昇進等について男女で異なる扱いをしてはならない
一般的な女性の時間外・休日労働の制限と深夜労働禁止の廃止
平成11年4月1日以降、特定の妊産婦や激変緩和措置の対象にあたる女性労働者を除き、男性と同じく、深夜や時間外勤務を課せられるようになりました。
逆に言えば、女性労働者も基本的には男性と同様に、労働基準法に基づいて、深夜や時間外勤務に従事する必要があるということを示しています。
一般的な規制撤廃に対する企業の対策
女性労働者だけを対象に、男性に比べて労働時間や日数を短縮し、深夜勤務から除外する行為は、「配置における性差別禁止」(均等法第6条第1号)に違反し、違法行為となる可能性があります。
このような規定が存在する場合、直ちに就業規則や労働基準法第36条に基づく時間外・休日労働協定(通称「36協定」)を見直すべきです。
女性労働者に関する就業規則の例外規定の削除
そのため、
また、
違法性を踏まえ、現在のルール変更を
36協定における男女の差異設定の違法性
また、
就業規則の改訂・削除
そのため、女性社員に対して、時間外・深夜・休日労働を完全に禁止する特例規定の削除が必要となります。
特に、深夜業務は、36協定の必要性はなく、主に就業規則の定めに基づいた労働契約で、深夜業務の必要性が判断されます。
従って、
また、深夜業務がないという条件で雇用された労働者が、深夜業務に就く場合、労働条件の変更となり、その根拠が必要とされます(マンナ運輸事件・神戸地判平成16・2・27労判874号40頁)。
これは、いわゆる配置転換(配転)の問題となります。
この場合、女性労働者を深夜業務に就かせるためには、深夜業務のシフト制のもとで働く地位・職場への異動命令(配転命令)を出す権限が就業規則に規定され、その規定の手続きに従って命令を出す必要があります。
深夜・時間外労働の免除のための個々の状況の配慮
これは、各労働者の健康状態や家庭の責任の具体的な状況を考慮して他の労働者と違う扱いをすることが、平等法に問題を生じるものではないためです。
従って、深夜勤務を選択しない労働者に対しては、就業規則で配慮し、深夜勤務を希望しない労働者と十分に話し合った上で、深夜勤務が必要な職場への配置を避ける労働契約を結ぶことができます。
むしろ、
妊産婦に深夜労働を課すのは禁止
女性が要望すれば、労働基準法と育児・介護休業法の規定により、場合によっては妊産婦に対する深夜労働と残業時間、また家庭の責任を担う労働者に対する深夜労働の規制と残業の上限が定められています。
それ以外の場合には、男性同等の労働が可能です。
しかし、男性労働者と同じように深夜のシフトを組むだけで事足り、特定の労働者を優先して深夜勤務につかせる必要はありません。
対応策としては、特例を除いて女性労働者も男性と同じ扱いを受けるようになったことを、女性保護規定の削除などで明示し、就業規則を整備してその適用を確実にすることです。