帰宅途中の事故:通勤災害となるのはどういう時?地震での負傷は該当するか?
最終更新日:2024.10.24
目次
通勤ルートを外れた際に負傷した場合、通勤災害は適用される?
会社から帰宅途中、通勤ルートを外れて理容店で髪を整えている時に地震等で設備が壊れ負傷した場合、それは通勤災害とされますか?
また、理容店を出てからの通勤ルート上で震災等により負傷する場合も、通勤災害と判定されますか?
通勤ルートを外れても、通勤災害と認められるケースがある
理容店に立ち寄り、その後の通勤ルート上での災害は、日用品購入等に類する行為とされ通勤災害と認識されます。
しかし、通勤ルートを逸れて理容店で髪を切り、その最中に震災等で備品が壊れて負傷した場合、通勤ルートに戻っていないこと等を勘案すると通勤災害と認められる可能性は低くなります。
ただし、大規模災害等の場合、もしくはその備品の破損と通勤ルートとの因果関係においては、認められる場合もあるので、注意が必要です。
通勤災害
「通勤災害」とは、「労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡」を指すものです(労災法7条1項2号)。
通勤災害が認定されるためには、まず、災害が発生した場所が「通勤」途中であることが必要です。
そして、「通勤」とは、労働者が
① 住居と就業の場所との間の往復
② 就業の場所から他の就業の場所への移動
③ ①の往復に先行または後続する居住間の移動を、合理的な経路および方法により行うこと
を指し、業務の性質があるものは除外されます。
通勤災害の認定には、「中断」や「逸脱」があってはならないが例外もある
通勤災害として認められるためには、「中断」や「逸脱」があってはならないとされています(労災法7条2項・3項)。
これらの「中断」や「逸脱」は、「日常生活上必要な行為であっても、厚生労働省で定める必要最小限のものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合を除き、保護通勤災害として認められていません(労災法7条3項ただし書)。
「中断」は「通勤の経路上において通勤とは関係のない行為を行うこと」
「逸脱」は「通勤途の途中において就業又は通勤とは関係のない目的で合理的な経路をそれること」
と解釈されています(昭和48・1・22基発644号)。
「日常生活上必要な行為」とは
①日用品の購入その他これに準ずる行為
②教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
③選挙権の行使その他これに準ずる行為
④病院また診察所において診察または治療を受ける行為
⑤要介護状態にある配偶者などの介護などの場合
をいうとされています。
質間の場合、理容店での立ち寄り後の通勤経路復帰後に災害に遭遇した場合は、日用品の購入等と同じく通勤災害と認定されます。
しかし、理容店で髪を整えている最中に地震などによって装置が壊れて負傷した場合、原則として、通勤の逸脱があるとみなされ、通勤災害としては認められないと思われます。
ただし、先述のように、大規模災害等の場合は、社会通念上みなすことが妥当であると判断されれば、認められる可能性もあります。
通勤途中で理髪店や美容院に立ち寄るのは「日常生活に必要な行為」
行政解釈によれば、「通勤の途中で理髪店や美容院に立ち寄る行為は、特別な事情が認められるケースを除き、労災保険法第7条3項ただし書きで定める
とみなされます」(昭和58・8・2基発420号)。
また、日常生活に必要な行為とは、
帰宅途中での惣菜の購入、独身の労働者が食事のために食堂に立ち寄る、クリーニング店への立ち寄りなどが該当します。
人材マネジメント上のポイント
通勤災害としての認定が可能な場合、労働者が労災保険に申請するように促し、その手続きを支援すべきです。
分からないことがあれば、労働基準監督機関への相談や、必要な措置を考えるべきです。
これらの情報を組織内で広め、通勤中に災害に遭う可能性がある場合の対策や対応を事前に計画することが望ましいです。