紙での作業に固執しITツールを用いた業務効率化ができない社員にどう対応する?
最終更新日:2024.10.24
目次
問題の事象
当社は環境保護とコスト削減を目的にペーパーレス化を推進していますが、一部の社員は紙ベースでの作業に固執しています。
この状況は、社内の業務効率に影響を及ぼし困っています。
繰り返し指導しても改善されない場合、解雇を検討することも可能でしょうか?
解説(基本的な考え方)
●傾聴と適切な支援
対策として、ITツールの利点を定期的なワークショップで伝えることが有効です。
また、個別のカウンセリングを通じて各社員の問題に対応し、適切な支援を行うことも大切です。
これにより、全社員が新しいツールを使いこなし、業務効率を高めることが期待できます。
IT化に対応できない社員の存在
近年、業務のIT化が進み、パソコンやタブレットなどのIT機器が必要不可欠になっています。
IT機器や社内インターネットの活用は、業務効率の向上と情報共有に役立っており、多くの会社がこれらを導入しています。
しかし、パソコンなどが一般的でなかった時代に入社した社員の中には、IT機器の使用に苦手意識を持ち、従来の方法に固執することがあります。
結果として、IT機器やシステムを導入しても、特定の社員や部署が旧来の方法を続けており、業務効率が低下している場合が見られます。
トラブル回避できない場合のリスク
●会社からの教育・研修の必要性
会社が社員と雇用契約を結ぶのは、その能力を活かして労務を提供してもらうためです。
社員が期待された能力を持っていない場合、会社に教育や研修を行う必要性は本来ありません。
しかし、上記で触れたIT機器を利用しない社員については、最初に上長からの注意・指導が行われることが考えられます。
それでも改善が見られない場合、最終的には解雇を検討することになるでしょう。
ただし、解雇を行うためには、客観的で合理的な理由が必要であり、「社会通念上相当であること」が求められます(労契16条)。
運用上のポイント
●裁判の事例に学ぶ
裁判例によると、
(東京地決平成6年11月10日労経速1550号24頁・三井リース事業事件、東京地決平成11年10月15日労判77号34頁・セガ・エンタープライゼス事件など)。
例えば、パソコンを使えない理由で普通解雇された事案(東京地判平成19年3月13日労経速1975号16頁・青葉運輸事件)では、裁判所は社員が期待された事務処理能力を持っていなかったことを認めつつも、配送記録表のパソコン作成は日常の作業を通じて習得可能であり、手書きでも特に支障がなかったこと、入社後2カ月でパソコン操作に一定の向上が見られたことから、能力不足による解雇を否定しました。
人材マネジメント上のポイント
●慎重な対応を
IT機器の使用に不慣れな社員への対応として、まずはその理由を確認することが重要です。
もし個人の好みで使用していない場合は、IT機器の使用を繰り返し促し、拒否する場合には軽度の懲戒処分を考慮し、それでも改善が見られない場合に解雇を検討するべきです。
一方、
どちらの場合も、解雇を検討する際は、IT機器の使用による業務上の支障や、他部署への配転の可能性などを慎重に検討し、決断することが求められます。
また、このような問題を未然に防ぐためには、パソコンスキルが必要な業務については、採用時にそのスキルを明示することが大切です。