フレックスタイム制をいいことに勤怠がルーズな社員への対処。勤怠管理の改善法
最終更新日:2024.10.24
目次
勤怠時間が非常にルーズな社員がいる
当社ではフレックスタイム制を導入していますが、フレックスタイム制であるのをよいことに勤怠時間が非常にルーズな社員がいます。
フレックスタイム制だからといって何でも許されるものではないと考えておりますが、どのように対応するべきでしょうか?
勤怠のルーズな社員を放置すると、規律が乱れてしまう
出社時間がバラバラなどの勤怠がルーズな社員を放置してしまうと、社内の規律が乱れ、他の社員も含めたモラルが低下することが懸念されます。
それを防ぐためにも、例えば次のような方法で社員の労働時間を管理することも検討してみてください。
② 出社及び退社予定時刻を申告させる
③ 人事考課で低く査定するまたは懲戒処分を実施する
④ フレックスタイム制の適用を除外する
① コアタイムの設定
コアタイムは社員が必ず労働しなければならない時間帯なので、
- コアタイムまでに出勤しない場合は遅刻
- コアタイム終了前に退勤した場合は早退
とすることができ、賃金査定で低評価にすることも可能です。
ただし、
とされており、コアタイムを長時間にわたって設定することはできません。
とはいえコアタイムを設けなければ24時間のうちいつ出勤してもよいことになり、事務所の管理費や深夜割増賃金の発生などの問題も生じますので、開始及び終了の時刻は定めておくべきです。
② 出社・退社予定時刻の申告
フレックスタイム制は、始業・終業時刻を社員がそれぞれ自主的に決定することができる制度ですから、出社時刻及び退社時刻を義務付けることはできません。
裁判例でも、コアタイムなしのフレックスタイム制のもとで社員に対して午前9時までに出社する旨の誓約書を作成させた事案で、
コアタイムなしのフレックスタイム制を採用している以上、午前9時までに出勤しなかったこと自体は何ら非難されるべき事柄ではなく、これを理由として不利益な処遇を受けるべきものではない
このように判示した例があります(日本エマソン事件・東京地判平11・12・15労経速1759号3貢)。
したがって、始業・終業時刻は会社側が提示するのではなく、社員側に申告させるという対策を講じるのも一つの手です。
例えば、
- 出退勤予定時間を事前に届け出させる
- 出退勤予定時間をボードに記入させる
等の工夫を行い、その社員が不在の時に、
- 外部からの問合せに対して誰がどのように対応するか
- 当該社員が何時に出社するか
これらのことを答えられるようにしておくことが望ましいかと思います。
③ 低評価や処分の検討
勤怠がルーズで他の社員や取引先に多大な迷惑をかけているような社員には、勤務態度不良を理由として、
- 指導
- 注意
- 人事考課で低く査定
のような対応をとることが可能です。
さらに、指導や注意を重ねても改善が見られない場合は、懲戒処分を実施できるケースもあると考えられます。
④ フレックスタイム制の適用を除外
フレックスタイム制を定めた労使協定及び就業規則に「遅刻等を繰り返す者についてはフレックスタイム制の適用を除外する。」との規定を設けることも可能です。
しかし、フレックスタイム制の適用を除外するには相応の事由が必要となります。
例えば、
のようにフレックスタイム制のもとで労働させることが不適当であると認められる事情がある場合には、フレックスタイム制の適用対象者から除外するという方法も検討するべきです。
フレックスタイム制は始業・就業時刻を労働者が決める
フレックスタイム制とは、
就業規則などにより制度を導入することを定めた上で、労使協定により一定期間(1ヵ月以内)を平均し1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内において、その期間における総労働時間を定めた場合に、その範囲内で始業・就業時刻を労働者がそれぞれ自主的に決定することができる制度
です(労基法32条の3)。
フレックスタイム制の要件
2.労使協定で次の事項を定めること
- 対象となる労働者の範囲
フレックスタイム制を適用する労働者の範囲を明確に定める。
対象となる労働者の範囲を全労働者・特定の職種の労働者などと定めることも可能。個人ごと、課ごと、グループごとなど様々な範囲も考えられます。 - 清算期間
労働契約上労働者が労働すべき時間を定める期間で、1ヵ月以内とされている(1ヵ月単位のほかに1週間単位等も可能であるが、賃金計算期間と合わせて1ヵ月とするのが一般的)。
清算期間については、その長さと起算日を定めることが必要です。単に「1ヵ月」とせず、毎月1日から月末までなどと定めることが必要となります。 - 清算期間における総労働時間
労働契約上労働者が清算期間内において労働すべき時間として定められている時間のことで、いわゆる清算期間における所定労働時間のこと。
この時間は清算期間を平均し1週間の労働時間が法定労働時間の範囲内となるように定める必要があります。 - 標準となる1日の労働時間
清算期間内における総労働時間を、その期間における所定労働日数で除したもの。
フレックスタイム制を採用している労働者がその清算期間内において、有給休暇を取得したときには、その取得した日については、標準となる労働時間を労働したものとして取り扱うことになります。 - コアタイム、フレキシブルタイムの開始及び終了の時刻
労働者が必ず労働しなければならない時間帯がコアタイム・出退勤が労働者に委ねられている時間帯がフレキシブルタイム。
コアタイム・フレキシブルタイム等を設ける場合は、労使協定でその開始及び終了時刻を定める必要があります。