健康診断で誤診が出た!会社が賠償請求されたらどう対応すべき?
最終更新日:2024.10.24
目次
社内検診で誤診の可能性。会社に損害賠償を払う義務はある?
社内検診をある病院に委託しています。ある従業員は、そこでの検診の際、特別な異常は発見されなかったのですが、その後肺がんにより死亡しました。
遺族は検診の不備で病院を訴え、さらに、会社に対しても安全配慮義務違反を理由に損害賠償を請求してきました。どう対処すべきでしょうか。
しかるべき病院に委託した健康診断であれば、会社に責任はありません
企業は、安全衛生法上の定期その他の健康診断を義務として行っているほか、企業独自の制度として、さまざまな検診を行っています。これらの
があります。そしてこの義務に違反した結果、死亡などの病状の悪化があれば損害賠償責任を発生させることになります。しかしながら、
企業の責任は認めない判例が出ている
企業が行っている健診をめぐり、健康診断の精度のレベルや、健診で発見できなかった病気について雇用企業はどこまで責任を問われるのでしょうか。
裁判例では、「定期健康診断は、一定の病気の発見を目的とする検診や何らかの疾病があると推認される患者について具体的な疾病を発見するために行われる精密検査とは異なり、
「そこにおいて撮影された大量のレントゲン写真を短時間に読影するものであること
を考慮すれば、その中から異常の有無を識別するために医師に課せられる注意義務の程度にはおのずと限界がある」として、企業の責任を認めませんでした(東京海上火災保険事件・東京地判平7・11・30労判687号27頁)。
まとめ:遺族からの損害賠償請求に応じる必要はない
雇用企業の健康診断実施上の義務の程度につき、健康診断の実施が安全配慮義務の一環であるとしても、
されます。
したがって、当該事例の場合でも、裁判の判決例によれば、遺族からの損害賠償請求に応じる必要はないでしょう。
企業が配慮すべきは、健康診断を定期的に行うことと、求められている健康診断が通常のレベルで行われる医療機関に健康診断を委嘱することでしょう。
会社は、健康診断で再検査が必要な従業員に、受診勧奨する努力義務がある
健康診断の結果によっては、従業員は再検査を受けなければなりません。
その場合、企業は
があります。労働安全衛生法では、再検査、つまり二次健康診断の受診勧奨は企業の努力義務として定められています。
また、二次健康診断を受診するにあたっては、条件を満たしている場合に限り、無料で受診することが可能です。その条件とは、一次健康診断において、血圧検査、血糖検査、血中脂質検査、腹囲周囲もしくはBMI指数の測定、これらすべての診断において異常があると診断されることです。加えて、脳や心臓に疾患がないことや、労災保険の特別加入者でないことも条件となっています。
ただし、災害などでどうしても申請できない場合や、一次健康診断実施機関の都合などによって一次健康診断結果の通知が遅れた場合はこの限りではありません。また、
しておくとよいでしょう。
人材マネジメント上のポイント
組織風土悪化の問題は、一長一短には可視化できない問題となります。
しかし、ゆっくりと変化することもまた事実です。苦情処理機関等の通り一遍のメンタル的な対応では不十分な場合もあります。
人材マネジメント上の対応としては、
になります。それには、従業員の動向を日々、チェックすることが重要になります。それには、月並みかもしれませんが、管理者が従業員の動向を日々チェックすることが必要です。
例えば、業務の進捗、周りとのコミュニケーション状況などが挙げられます。また、1on1等を通じて、プライベートの悩み等もキャッチアップすることも重要になるかと思います。