業務委託先が安全性に問題のある職場環境で事故を起こした場合、注文者にも責任が生じる?
最終更新日:2024.10.24
目次
委託先の問題について、元請け業者が責任を問われるケースって?
業務を委託している会社が、安全性に疑問のある職場環境で労働者を働かせています。
注文者あるいは元請け業者が責任を負うことはないのでしょうか。
安全配慮義務を負うのは「指揮・命令」を行使している場合
注文者が委託先の労働者に対して安全配慮義務を負うのは、注文者と委託先の労働者との間に、実質的な使用従属関係があり、雇用関係に準じるような法律関係があると認められるような場合です。
したがって、注文者たる会社が、委託先の労働者に対して直接指揮命令を行う等といったことをしなければ、委託先の労働者に生じた労災に関して法的責任を問われることはないものと考えられます。
ただし、注文者が、委託先の労働者に対し、一定の範囲で指揮命令件を行使しているような場合には、当該労働者に対して安全配慮義務を負うことになる可能性があるといえるでしょう。
指揮命令下で働かせているなら、安全管理も行うべき
あらゆる事案において、委託先の労働者に対しては、委託先のみが安全配慮義務を負い、何らかの事故が起きても注文者は責任を負わないのかという点では議論があり得るところです。
注文者の責任についての裁判例では、元請業者が下請業者の労働者に指示を行っていたという事実関係を前提に、元請業者が下請業者の労働者の安全配慮義務を負っているものと認定しました(三菱重工事件・最判平3・4・11労判590号14頁)。
元請業者が下請業者に対して指揮命令を行っているような場合には、実質的には派遣に近いといえ、指揮命令下で働かせているのであれば、安全管理も行うべき立場にあると判じたものです。
安全配慮義務違反の場合、損害賠償責任も
労災そのものは保険給付に関する問題であるため、労災が成立するからといって、企業に直接的な法的責任が生じるわけではありません。
企業が労災に関して損害賠償責任等といった法的責任を負担するのは、安全配慮義務違反が認められる場合です。
注文者と委託先のいずれが具体的な安全配慮義務違反に基づく損害賠償を負うかということは、個別事案に応じて判断されるべき事案です。
個別事案において、問題になっている労災を防止するためには、どのような安全配慮の措置が必要となり、その措置が注文者と委託先のいずれの責任に基づいて講じられるべきものであるかということを、具体的事案に応じて検討する必要があるでしょう。
労働者派遣のケースは、責任が生じる。二重派遣類似にも注意を
注文者たる会社が、委託先の労働者に対して直接指揮命令を行う等といったことをしなければ、委託先の労働者に生じた労災に関して法的責任を問われることはないものと考えられます。
ただし、注文者と委託先間、及び元請け業者と下請け業者間が形式上請負契約締結していたとしても、その実態は労働者派遣になっているような場合には、安全配慮義務を負うことになる可能性があると言えます。
また、このような場合、注文者が下請け会社の労働者に対して指揮命令していることに関し、二重派遣類似の関係があるとして職業安定法違反が問題となるおそれもあるので注意が必要です。
労働者の残業、深夜労働など業務を把握・管理しよう
従業員の業務を日々、管理することが必要になります。
日報等による進捗の管理により、今どのくらいの作業・業務量があるかどうかを把握し、優宣順位等も把握して、時間外の必要性等を従業員に一任するのではなく、管理者等も把握することができるような環境づくりも必要になってきます。
そのような業務把握を実現した次のステップとして、生産性向上に向けた取り組みや在宅勤務の導入・浸透等につなげていくことが望ましいと考えています。
いずれにしても、業務の量・内容の把握を第3者と共有することによる効果は非常に高く、特に管理者の動きが重要になってきます。
そのために、残業や深夜労働等を勝手に認めるのではなく、必要性等を踏まえて、判断していくことが必要になります。