嘱託社員が威圧的・偉そうな態度をとる場合の対応は?
最終更新日:2024.10.24
目次
再雇用のベテラン社員が、上司となった後輩との人間関係がうまくいかない
60歳で定年を迎え、嘱託社員として再雇用した社員がいます。
専門性が高くベテランの知見を活かしてほしいと考え、定年時の部署にそのまま配置しています。
後輩が部の管理職となりましたが、人間関係がうまくいっていません。
管理職で上司となった後輩に「先輩の言うことが聞けないのか」と威圧的な態度を取っているようで、管理職も課員もメンタルに支障をきたしています。
嘱託社員の配置換えを考えたほうがよいのでしょうか。
嘱託社員は、どんな役割を期待しているか明確に伝える
2021年4月の高年齢者雇用安定法改正により、定年後も従業員の希望があれば65歳まで雇用を継続することが義務づけられています。
努力義務として70才までの就業確保が示され、同時に高齢者就業確保措置も加わって、今後定年後の社員を労働力としてどのように確保するのかが課題となっています。
改正高年齢者雇用安定法に付帯する高齢者就業確保措置では、いずれかの措置を導入する努力義務が新設されています。
① 70歳までの定年引き上げ
② 定年制の廃止
③ 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
④ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤ 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
このケースでは、嘱託社員となった高年齢者社員が問題社員化していること、問題社員が所属している課全体がメンタル不調になっている2点の問題が含まれていますが、嘱託社員の問題社員化に焦点を絞ります。
嘱託社員は、一旦退職して非正規雇用となり、新たな雇用契約を結ぶこととなります。
同一労働同一賃金の原則により、労働内容が同じであれば同じ賃金を支払います。
この時の労働内容がキーポイントです。
嘱託社員として何をしてもらうのか、職務権限も含めて考えます。
嘱託社員であっても管理職に登用することもできるのです。
労働条件通知書や雇用契約書には、詳細な労働内容まで示すことができないかもしれません。
しかし、プレイヤーとして最前線を期待するのか、フォロー役やサポート役、ご意見番など、課内でどんな役割を期待するのか、例えばスキルと経験を後進に伝承する人材育成担当とすると、本人のモチベーションにもつながり、会社にも貢献してもらえるでしょう。
当人とのコミュニケーションをとり、相互理解できるよう伝えてください。
この役割に言動・行動が反しているのであれば、問題社員として対処方法を検討し、指示指導の上、観察し、評価します。
ハラスメント体質・言動があれば、それを診断し、判断し、適切な指導を行います。
問題社員化した原因には、嘱託社員という立場に対して、本人がどのように思っているか・感じているか・受け止めているかも理由の一つにあるかもしれません。
面談やカウンセリングで、本人の気持ちを聞き出してください。
ただ聞いてもらうだけで、自問自答でき、自身で整理できるものです。
さかえ経営では、嘱託社員の処遇など様々な就業規定の策定を法的な視点でサポートします。
解雇・懲戒、教育制度、労働時間のルールなど、どのようにしたら上手く運用できるか分からない。全て法律どおりに制度を構築すると業務が回らなくなってしまう。などお悩みのお持ちの企業の方、まずはお気軽にご相談ください。
培ってきた知識や経験を活かせる場を与える
本人の適応能力にもよりますが、年齢的に新しい仕事を覚えてもらうことは時間もかかり、培ったスキルと知識を活かすため、定年時の部署にそのまま配置する会社が多いと思います。
このケースでは問題社員化していますが、役割がなくなり、働きがい・モチベーションが消沈してしまうケースもあります。
高年齢者にとっては、体力や筋力、体調、記憶力、判断力への不安がある傾向があります。
キャリアを積み重ねてきた自負や経験がベースとなっていると、思考の柔軟性に欠ける場合もあります。
これらのデメリットとは逆に、知識や経験など業務をこなす専門的スキルが高いこと、人脈を培ってきているなどのメリットもあります。
メリット・デメリットを理解したうえで、会社の業績に寄与する役割を与えてください。
嘱託社員(定年後の処遇として)には、人事評価も行わないという会社もあります。
25歳から35歳の10年と長さは同じ、60歳の定年後に10年働くかもしれない社員です。
人事評価を行わずに放置すると、問題社員化したり意欲減退してしまい、人とお金の無駄遣いとなる可能性も高くなるのです。
就業規則等に嘱託社員の処遇について記載する
就業規則等に嘱託社員の処遇が含まれていない場合には、追加します。
「正社員と準じる」「パート・アルバイト社員に準じる」など、嘱託社員に限定したルールでなくてもよいでしょう。
嘱託社員を非正規・有期契約雇用とする場合、仕事によっては年齢制限を設けずとも、年齢・体力的に雇用を更新できない場合もあるでしょう。
その場合には、例えば出勤率〇%以上、人事考課が〇判定以上、診断書による医師の判断もあるかもしれません。
雇用契約を継続する事由を示します。
嘱託社員となると時短勤務や日数も制限して勤務したいという申し出も多いです。
「正社員に準じる」処遇としても、正社員には時短勤務制度がない場合もあります。
国の助成金には、就業規則を65歳超継続雇用促進コースの要件を満たすことで支給されるものもありますので、厚生労働省HPを参照してください。
働く意欲の高い高齢者はたくさん存在している
内閣府「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」によると、働けるうちはいつまでも仕事をしたい者の割合が 36.8%で最も高く、60 歳くらいまでが 9.7%、65 歳くらいまでが 19.2%、70 歳くらいまでが 23.0%、75 歳くらいまでが 8.9%を示し、高齢者も働きたいという意識が高いことが伺えます。
しかし、定年後の嘱託社員に対して役割や待遇を継続すると、新たな人材が採用できなかったり、育たなかったり、頭打ちになったりと人材の活性化が停滞します。
単に雇用延長が義務だからと嘱託社員として雇用を継続するのではなく、HRマネジメントに組み入れてください。
また、国は高齢者の生涯現役社会の実現に向けて「65歳超雇用推進助成金」の制度を設けており、要件を満たすと助成金を受けることができます。
年度により内容は異なるため、詳しくは厚生労働省のHPで確認してください。
人材マネジメント上のポイント
定年再雇用であれ、有期雇用者であれ、どのような区分の人にどのような業務を担ってもらうのか、ある程度明確にしておく必要があるかと考えています。
そのための手段として、役割の厳格化、もしくはジョブの厳格化が望ましいと考えます。
アプローチとしては、求める人材像を、役割・ジョブの視点で整理し、その内容を具現化し、各人材への当てはめについては、ドラスティックに実施することが必要です。
しかし、一方で、急激な変化を恐れて中々難しい場合がありますが、その場合は、まずは賃金制度と切り離して、導入を進めて行くのも一つの手段として考えられます。
ジョブ型人事制度を策定することは、単に報酬体系の明確化だけではない、その副作用としては、人員ごとの業務レベルが測定されているため、単なる人数だけではなく、業務上必要なレベルが可視化されているため、より効果的な人員配置、さらには求める人材が明確になります。
また、それらの情報を元に、採用においても、その人数・レベルに沿った人材の募集・配置が可能になります。
さかえ経営では、嘱託社員の処遇など様々な就業規定の策定を法的な視点でサポートします。
解雇・懲戒、教育制度、労働時間のルールなど、どのようにしたら上手く運用できるか分からない。全て法律どおりに制度を構築すると業務が回らなくなってしまう。などお悩みのお持ちの企業の方、まずはお気軽にご相談ください。