【専門家が解説】給与計算とは?必要な『4つの情報』や計算方法まで解説!
最終更新日:2024.10.24
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社労士:
森田 征
給与計算とは、従業員に対して労働の対価として支払われる給与の総支給額から、社会保険料や税金などの各種控除を差し引き、実際に従業員に支払われる手取り額を算出するまでの一連の業務を指します。
目次
給与計算とは?
給与計算とは、従業員に対して労働の対価として支払われる給与の総支給額から、社会保険料や税金などの各種控除を差し引き、実際に従業員に支払われる手取り額を算出するまでの一連の業務を指します。給与計算は以下の計算式で産出していきます。
給与計算に必要な『4つの情報』
1:「就業規則・給与規定」を作成しておく
給与計算を適切に行うためには、事前に必要な情報を収集し、準備しておくことが重要です。まず、給与の支給額を決定するための基準となる就業規則や給与規程を作成しておく必要があります。
これらの規程には、基本給や各種手当、時間外労働の割増賃金などが定められています。従業員数が10人以上の場合は、就業規則の作成と届け出が法律で義務付けられています。
2:従業員の個人情報(最新版)を用意する
次に、従業員の個人情報を最新の状態で把握しておくことが求められます。
給与計算に必要な従業員情報には、氏名、性別、生年月日、住所、入社年月日、雇用保険の被保険者番号、標準報酬月額、基本給、手当、振込口座、扶養家族、勤務地、職種、職位・役職などがあります。
これらの情報は、勤続年数や職種、勤務地、扶養状況などによって変動する場合があるため、常に最新の状態を維持することが大切です。
3:その従業員の「勤怠情報」を用意する
さらに、従業員の勤怠記録も給与計算に欠かせない情報です。
各従業員の労働日数、労働時間、時間外労働時間、休日出勤、遅刻、早退、欠勤などを正確に把握し、集計する必要があります。特に時間外労働や休日・深夜労働については、法律で割増賃金の支払いが定められているため、注意が必要です。
4:「社会保険の加入状況」も確認しておく
加えて、一定の条件を満たす従業員については、健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険への加入が義務付けられています。
給与計算では、これらの社会保険料の算出も行う必要があるため、従業員の社会保険加入状況を確認しておくことが重要です。
下記記事では「給与計算前に準備すべき書類・情報」についてより詳しく解説していますので、こちらもあわせてご覧ください!
給与計算の手順(進め方)は?
冒頭でもお話した通り、給与計算は「総支給額ー各種控除額」を行い、最終的な差引支給額(手取り額)を算出します。ここからは具体的な手順に沿って、給与計算を進めていきます。
1:勤怠情報をまとめておく
給与計算を始める前に、従業員の雇用形態、役職、給与構成、勤務時間など、必要な情報を収集します。
また、税金や社会保険に関する最新の法的要件を確認しておきます。次に、タイムカードや出勤簿を基に、各従業員の出勤日数、有給休暇取得状況、欠勤日数、遅刻・早退の有無と労働時間、残業時間などの勤怠情報をまとめます。
2. 勤怠情報をもとに「総支給額」を計算する
勤怠情報を基に、基本給、残業代、各種手当を計算し、総支給額を算出します。
基本給は、手当やボーナスを含まない基本的な賃金です。残業代は、法定時間内残業と法定時間外残業に分けて計算し、法定時間外残業には割増賃金を支払う必要があります。各種手当には、通勤手当、出張手当、役職手当、資格手当などがあり、会社によって内容や金額が異なります。
3. 控除額をもとに「差引支給額」を算出する
総支給額から差し引くべき控除額を計算します。
控除項目には、所得税、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)、介護保険料、雇用保険料、住民税などがあります。各保険料は、標準月額報酬に保険料率を乗じて算出し、所得税は給与から社会保険料と雇用保険料を差し引いた額に対して計算します。
住民税は、通知された年間の住民税額を12で割って月額を求めます。最後に、総支給額から控除額を差し引いて、差引支給額(手取り額)を算出します。この金額が、実際に従業員に支払われる額となります。
給与計算は、従業員の生活に直結する重要な業務であり、正確性が求められます。事前準備を入念に行い、計算過程でのミスを防ぐことが大切です。また、税金や社会保険に関する法改正にも注意を払い、常に最新の情報を反映させる必要があります。
下記記事では「給与計算の進め方」についてより詳しく解説していますので、こちらもあわせてご覧ください!
給与計算における注意点
給与計算は、従業員への正確な報酬の支払いと法的義務の遵守において重要な役割を果たします。ここでは、給与計算を行う際の主要な注意点について説明します。
1:最新の法令遵守がマスト
給与計算を行う際は、労働基準法に定められた『賃金支払いの5原則』を守る必要があります。
これには、通貨での支払い、直接本人への支払い、全額払い、毎月1回以上の支払い、支払期日の特定が含まれます。また、地域別の最低賃金ルールに則った給与の支給も重要です。法定労働時間を超えた残業代についても、法で定められた割増賃金で正確に支払う必要があります。
下記記事では『賃金支払いの5原則』について詳しく解説していますので、こちらもあわせてご覧ください。
2:従業員の”個人情報を取り扱う”意識を持つ
給与計算は、従業員の個人情報を扱う機密性の高い業務です。
情報漏えいを防ぐために、個人情報の持ち出し禁止や社内情報へのアクセス制限などの対策を講じる必要があります。情報漏えいは、個人情報保護法違反となる可能性があり、従業員からの信用失墜にもつながります。
また、給与計算の記録は、年末調整や各種手続きに必要なため、労働基準法に従って適切に保存することが求められます。
3:「ダブルチェック体制」で、ミスを極限まで減らす
給与計算では、計算や転記のミスを防ぐことが重要です。
特に初心者は、上司や同僚のダブルチェック体制を整えることが望ましいでしょう。また、給与計算ソフトやアプリの導入により、ミスの低減と業務の効率化を図ることができます。
給与計算は期限が定められているため、スケジュール管理も欠かせません。各作業に必要な時間と優先順位を考慮し、余裕を持ったスケジュールを立てることが重要です。
下記記事では「給与計算で発生しやすいミス・それらの対処法」について詳しく解説していますので、こちらもあわせてご覧ください!
ミスが許されない業務こそ、「代行(アウトソーシング)」という手法も
給与計算はミスが許されない作業なわけですから、気が滅入ってしまいがちです。特に「初めて計算を任された方」にとっては、その不安も大きいのではないでしょうか。
しかし給与計算というのは、社労士や税理士に代行(アウトソーシング)することもできますので、「ミスが許されない業務だからこそ、専門家に任せる。」といった考え方も一度検討してみると良いでしょう。さかえ経営では、東京エリアの企業(200〜1,000名規模)における問題社員とのトラブル解決などの実績をもとに、社労士による給与計算代行(アウトソーシング)などのサポートも行っています。
従業員の給与計算についてお困りの人事・労務の方は、まずはお気軽にご相談ください。
そもそも、「給与計算」とは何ですか?