【全10項目】チェックリストで解説!給与計算で注意すべきポイントを徹底解説!
最終更新日:2024.10.24
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社労士:
森田 征
給与計算は、確認(チェック)する項目が多いからこそ抜け漏れが起こってしまいます。
本記事ではよく起こりがちな抜け漏れポイントをチェックリスト形式で解説していきます。
目次
給与計算はチェックする項目が多いからこそ、ミスも多く起こりがち。
このミスを減らすためには、特にミスしやすい項目をまとめ、チェックリスト形式で一つひとつ確認していくことが非常に効果的です。
本記事では、給与計算のミスを防ぐための具体的な対策「チェック項目」を【全10選】解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
給与計算の基本!初心者でもわかる4ステップ解説
給与計算は、一見複雑に思えるかもしれませんが、基本的な手順を押さえれば、ミスを減らし効率的に進められます。ここでは、初心者の方にも分かりやすい給与計算の流れを解説します。
給与計算は、大きく4つのステップに分けられます。
1.勤怠情報の集計
2. 総支給額の計算
3. 控除額の計算
4. 差引支給額(手取り額)の算出
では、各ステップを詳しく見ていきましょう。
1. 勤怠情報の集計
給与計算の第一歩は、従業員の勤怠情報を正確に把握すること。タイムカードやICカード、勤怠管理システムなどを使って、以下の情報を集計します。
結論、勤怠関係は「タイムカードの打刻ミス」や「特殊な勤務形態の管理ミス」の部分で間違いが起こりやすいので、以下5点について抜け漏れがないか確認するようにしましょう。
- 出勤日数
- 労働時間(所定内と時間外)
- 休日出勤の有無
- 深夜勤務の有無
- 有給休暇の取得状況
この段階で正確な情報を収集することが、後の計算ミスを防ぐカギとなります。
2. 総支給額の計算
集計した勤怠情報をもとに、総支給額を算出します。総支給額は主に以下の要素で構成されます。
- 基本給
- 各種手当(残業手当、休日出勤手当、深夜勤務手当など)
- 固定手当(役職手当、資格手当、住宅手当など)
特に注意が必要なのは、「残業手当」や「休日出勤手当」の計算です。労働基準法では、残業に25%以上、休日労働に35%以上の割増賃金を支払うことが定められています。
3. 控除額の計算
総支給額が決まったら、次は控除額の計算です。主な控除項目は以下の通りです。
- 所得税
- 住民税
- 社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)
- 雇用保険料
これらの控除額は、総支給額や扶養家族の数、各種保険料率などで変動します。最新情報を確認しながら正確に計算する必要があります。
4. 差引支給額(手取り額)の算出
最後に、総支給額から控除額を差し引いて、実際に従業員に支払う金額(手取り額)を算出します。
以上が基本的な給与計算の手順ですが、実際の計算では、会社独自の手当や控除項目が加わることもあるので注意しましょう。
給与計算ミスを防ぐ!完全チェックリストと確認方法
給与計算のミスは、従業員の信頼を損なうだけでなく、法的トラブルにも発展しかねない重大な問題です。ここでは、給与計算の際に見逃しがちなポイントをチェックリスト形式で紹介し、具体的な確認方法を解説します。
「支給」項目のチェック
支給項目は給与の根幹を成す部分です。以下の点を必ず確認しましょう。
①基本給の正確性:雇用契約書や最新の昇給情報と照合し、金額に誤りがないか確認する。
②残業代の計算:残業時間の集計ミスや割増率の適用漏れがないか、タイムカードや勤怠システムのデータと突合する。
③手当の適用:役職手当や資格手当など、従業員ごとに適用される手当に漏れや誤りがないか確認する。
特に残業代の計算は複雑なため、注意が必要です。労働基準法に基づき、時間外労働には25%以上、休日労働には35%以上、深夜労働(22時から5時まで)には25%以上の割増賃金を支払う必要があります。
「控除」項目のチェック
控除項目の誤りは、従業員の手取り額に直接影響します。以下のポイントを確認しましょう。
④社会保険料の計算:標準報酬月額や保険料率の変更を反映しているか確認する。
⑤所得税の計算:扶養控除等申告書の内容を正確に反映しているか、また年末調整の結果を適切に反映しているか確認する。
⑥住民税の徴収:市区町村から送付される特別徴収税額決定通知書の金額と一致しているか確認する。
社会保険料や税金の計算は複雑で、毎年のように制度変更があります。扶養状況や年齢などの従業員の個別状況、法改正や制度変更などの最新の情報を常に把握し、適切に反映することが重要です。
その他のチェックポイント
⑦勤怠情報の正確性:出勤日数、有給休暇取得日数、欠勤日数などが正確に反映されているか確認する。
⑧昇給・降給の反映:人事異動や昇進に伴う給与変更が適切に反映されているか確認する。
⑨賞与計算の正確性:賞与の計算基準や支給率に誤りがないか、また控除項目が適切に計算されているか確認する。
⑩端数処理の一貫性:給与計算全体を通じて、端数処理(切り上げ、切り捨て、四捨五入)の方法が一貫しているか確認する。
これらのチェックポイントを定期的に確認することで、給与計算のミスを大幅に減らすことができます。しかし、チェック項目が多岐にわたり、法改正などにも常に注意を払う必要があるため、人事担当者の負担は決して小さくありません。
給与計算の正確性は、従業員の信頼と会社のコンプライアンスに直結する重要な要素です。このチェックリストを活用しながら、必要に応じて専門家のサポートを検討することで、より確実で効率的な給与計算業務を実現できるでしょう。
続いて、給与計算で確認するべき「法的な注意点」について紹介します。
給与計算の法的注意点は?労基法遵守のポイント解説
給与計算は従業員の生活に直結する重要な業務です。法令遵守は不可欠であり、ここでは労働基準法に基づく正しい計算方法や、社会保険料の控除など、法的な側面を中心に解説します。
労働時間の管理
労働時間の適切な管理は、給与計算の正確性を担保する上で極めて重要です。労働基準法では、原則として1日8時間、週40時間を超える労働を禁じています。これを超える場合、割増賃金の支払いが必要となります。
- 時間外労働:通常の賃金の25%以上増し
- 深夜労働(22時から5時まで):通常の賃金の25%以上増し
- 休日労働:通常の賃金の35%以上増し
特に注意が必要なのは、これらが重複する場合です。例えば、休日の深夜労働では、60%以上の割増賃金を支払う必要があります。
また、正社員とパート・アルバイトでは計算方法が異なります。下記記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
最低賃金の遵守
最低賃金法により、「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」が定められています。給与計算の際は、必ずこれらを下回らないよう注意が必要です。最低賃金は毎年10月頃に改定されるため、最新情報の把握が重要です。
賃金支払いの5原則
労働基準法第24条では、賃金支払いに関する5つの原則が定められています。
- 通貨払いの原則
- 直接払いの原則
- 全額払いの原則
- 毎月1回以上払いの原則
- 一定期日払いの原則
これらの原則に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります。特に、全額払いの原則に関しては、法令で定められた税金や社会保険料以外の控除を行う場合、「労使協定の締結」が必要となります。
「賃金支払いの5原則」については、下記記事で詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。
社会保険料の控除
健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などの社会保険料は、法令に基づいて正確に控除する必要があります。特に注意すべき点として、以下が挙げられます。
- 標準報酬月額の適正な決定と定時決定の実施
- 算定基礎届の正確な提出
- 保険料率の変更への迅速な対応
社会保険料の計算ミスは、従業員の将来の年金額にも影響を与える可能性があるため、細心の注意が必要です。
年次有給休暇の付与
2019年4月からの労働基準法改正により、年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に対して、年5日の年次有給休暇の確実な取得が企業に義務付けられました。給与計算の際は、有給休暇取得日の賃金を適切に計算する必要があります。
法改正への対応
労働関連法規は頻繁に改正されるため、常に最新の情報を把握し、給与計算システムに反映させることが重要です。例えば、2023年4月から中小企業にも適用された同一労働同一賃金の原則や、2024年4月から段階的に施行される労働時間の上限規制など、重要な法改正に注意を払う必要があります。
給与計算における法的な注意点は多岐にわたり、常に最新の法令に基づいた対応が求められます。これらの複雑な要件を適切に管理し、法令遵守を徹底するためには、専門知識を持つ社会保険労務士のサポートを受けることも有効な選択肢です。
特に、従業員数が多い企業や、複雑な給与体系を持つ企業では、外部の専門家の力を借りることで、法的リスクの軽減と業務効率化の両立が可能になります。給与計算の法的側面を適切に管理することは、従業員の信頼を得るだけでなく、企業のコンプライアンス体制を強化することにもつながります。
常に法令を遵守し、正確な給与計算を行うことで、健全な労使関係を維持し、企業の持続的な成長を支える基盤を築くことができるでしょう。
効率化を実現!時短とミス削減のテクニック
前述のとおり、給与計算業務は企業にとって欠かせない重要な作業ですが、同時に多くの時間と労力を要する作業でもあります。ここでは、給与計算の効率化を図るための方法をいくつか紹介します。
業務プロセスの見直し
効率化の第一歩は、現在の業務プロセスを見直すことです。不必要な手順や重複している作業がないか確認し、可能な限り簡素化することが重要です。例えば、以下のような点を検討してみましょう。
- 勤怠データの収集方法の改善
- 給与計算のスケジュールの最適化
- チェック体制の見直し
システムの導入
給与計算の効率化を大きく進めるには、システムの導入が効果的です。特に、「クラウド型」の給与計算システムには、以下のような利点があります。
- 自動計算機能による人為的ミスの削減
- 法改正への自動対応
- 他のシステム(勤怠管理、会計など)との連携
システム導入により、従来手作業で行っていた多くの作業を自動化でき、作業時間の大幅な短縮が期待できます。
データの一元管理
給与計算に必要な情報を一元管理することで、データの入力や確認作業を効率化できます。従業員情報、勤怠情報、給与情報などを統合的に管理するシステムを導入することで、情報の整合性を保ちながら、迅速な処理が可能になります。
マニュアルの整備
給与計算業務のマニュアルを整備することで、担当者の変更や増員時にもスムーズな引き継ぎが可能になります。また、マニュアル化することで業務の標準化が進み、ミスの減少にもつながります。
外部委託の検討
給与計算業務の一部または全部を外部の専門業者に委託することも、効率化の一つの方法です。特に、以下のような場合に外部委託が有効です。
- 社内リソースが限られている
- 専門知識が不足している
- 業務量の変動が大きい
ただし、外部委託にはコストがかかるため、自社の状況を十分に検討した上で判断する必要があります。
従業員のセルフサービス化
給与明細の電子化や、従業員が自身の勤怠情報を入力・確認できるシステムの導入など、従業員のセルフサービス化を進めることで、人事部門の作業負担を軽減できます。同時に、従業員の利便性も向上し、情報の正確性も高まります。
給与計算の効率化は、単に作業時間を短縮するだけでなく、ミスの減少やコンプライアンスの向上にもつながります。自社の状況に合わせて、最適な効率化方法を選択し、段階的に導入していくことが重要です。
効率化を進める際は、単にシステムを導入するだけでなく、業務プロセス全体を見直し、人材育成も含めた総合的なアプローチが必要です。
また、効率化によって生まれた時間を、より戦略的な人事業務に充てることで、企業全体の生産性向上につなげることができるでしょう。
続いて、「外部委託の検討」の選択肢の1つとして、「社労士への外注」について紹介します。
給与計算のプロ「社労士」外注のメリットとは?
社会保険労務士(社労士)への給与計算や労務管理業務の外注は、企業に多くのメリットをもたらします。
まず、社労士の専門知識により、最新の法令に基づいた正確な業務遂行が可能になります。また、社内リソースの効率的な活用によるコスト削減や、労務管理におけるリスクの大幅な軽減が実現できます。
さらに、煩雑な業務を外部に任せることで、経営者や人事担当者は本来の業務に集中でき、企業の生産性向上や事業拡大に注力できるようになります。社労士は給与計算以外にも、就業規則の作成や労働時間管理、各種助成金の申請など、幅広い労務関連業務をサポートできるため、総合的な労務管理の質の向上が期待できます。
特に中小企業にとっては、これらのメリットを活用することで、限られた経営資源を効果的に活用し、競争力を高めることができるでしょう。
ただし、外注を検討する際は自社の状況や需要を十分に分析し、最適なパートナーを選ぶことが重要です。信頼できる社労士と良好な関係を築くことで、長期的な視点での労務管理の改善と企業成長を実現することができます。
「社労士に外注できること」については、下記記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
給与計算でお悩みの際は、「社労士」への外注をご検討ください!
給与計算は企業運営の要となる重要な業務です。本記事では、給与計算の基本的な手順、ミス防止のためのチェックリスト、法的な注意点、そして効率化の方法について詳しく解説しました。
正確で効率的な給与計算は、従業員の信頼を得るだけでなく、企業のコンプライアンス体制強化にもつながります。しかし、給与計算業務の複雑さや法改正への対応など、多くの企業が課題を抱えているのが現状です。
さかえ経営では、東京エリアの企業(200〜1,000名規模)における給与計算アウトソーシングの実績をもとに、給与計算におけるお困りごとをサポートいたします。
特に、給与計算処理についてお困りの人事・労務の方は、まずはお気軽にご相談ください。
給与計算のミスが多いです。どうしたらミスが減るでしょうか…