営業ノルマ未達成の社員に降給などの処分は可能?適切なノルマ設定かどうかがポイント
最終更新日:2024.10.24
目次
ノルマが達成できない営業に処分を課すことはできる?
新型コロナウイルス感染症の影響で、設定したノルマが達成できない営業社員が出そうです。
このような状況で、会社は、ノルマ未達成の社員に対して不利益な処分を課すことはできますか。
実現可能なノルマかどうか、未達の場合の処分内容が適切かどうかを判断する
会社が従業員に対して営業ノルマを設定すること自体は、特段違法性はありません。
しかし、ノルマ設定時とノルマ達成評価時の社会情勢を考慮して、そのノルマが社会情勢を無視し、社会常識を逸脱し到底実現不可能な目標となっている場合には、そのノルマ未達成を理由として不利益な扱いをすることは違法とされる可能性があります。
そして、ノルマ設定当初に想定されなかった新型コロナウイルス感染症の影響等も考慮して、当該ノルマの内容およびノルマが達成できなかった場合の取扱いや処分内容が適正かつ相当なものかを判断する必要があります。
過大すぎるノルマ設定や、未達の場合に突然解雇されるなどは不当
ノルマがあまりに過大であったり、嫌がらせ、パワハラを目的とした理不尽なものであったりする場合には、このノルマの未達成を理由とする解雇は、合理的な理由のないものと判断される可能性があります。
またノルマの未達度がとても小さいにもかかわらず、突然解雇という厳しい処分を下すようなケースでは、その解雇は社会通念上の相当性のないものと判断されます。
ノルマ未達成を理由とする解雇は容易に認められるものではなく、誰が見ても能力不足で不適格かつその労働者の存在自体が会社に損害を与えているような場合に限り有効と判断される傾向にあります。
適切なノルマ設定であれば、達成状況によって降格や昇格の評価をしてもよい
ノルマの設定が適正なものである限り、ノルマの達成状況を従業員の人事評価に試用する分には原則的には問題ありません。
厳しいノルマを達成した従業員を昇格させるのと同様に、ノルマ未達成の従業員を降格させることは、成果主義を人事制度として採用し、降格となることが就業規則等により根拠づけられている会社の場合には、適切に人事評価を行っている限り、違法ではありません。
また、ノルマが達成できない従業員に対し、業務上必要かつ相当な注意や指導を行うことは、ノルマの設定が適正なものである限り、問題はありません。
ノルマの設定時に想定できない情勢の変化があった場合は、評価基準を再検討する
ノルマが達成できない従業員がおり、当該従業員に対して、人事評価、指導注意、解雇等の不利益な扱いや処分をするにあたっては、ノルマ設定当初に、想定されなかった新型コロナウイルス感染症の拡大を原因とする対面営業の禁止、顧客の事業停止や経営悪化等も考慮して、当該ノルマの内容およびノルマが達成できなかった場合の取扱いや処分内容が適正かつ相当なものかを判断する必要があります。
また、これらの措置は、特定の個人に限定するのではなく、ある程度一律に検討する必要があります。
ノルマの達成が難しいような状況の場合、随時、相談、見直しをして、達成可能な適正かつ相当なノルマに設定し直しする必要もあるでしょう。
人材マネジメント上のポイント
減給・降格等については、制度上が存在するものの、実際の運用に至っていないことが多くあります。
就業規則への記載は勿論ですが、評価制度・等級制度において、その定義に満たない場合においては、厳格に降給・降格する等の措置が求められます。
そのためには、等級の定義内容が明確であり、その定義通りに運用されることが必要となります。
それには、抽象的・一般的な記載をその都度解釈して運用するのではなく、役割の厳格化、もしくはジョブの厳格化が望ましいと考えます。
アプローチとしては、求める人材像を、役割・ジョブの視点で整理し、その内容を具現化し、各人材への当てはめについては、ドラスティックに実施することが必要です。
しかし、一方で、急激な変化を恐れて中々難しい場合がありますが、その場合は、まずは賃金制度と切り離して、導入を進めて行くのも一つの手段として考えられます。
また、一度格付けされたとしても、その格付けが適切かどうか、毎月もしくは毎年、モニタリングという意味で、評価制度にて適宜、行っていく必要性があります。