若手女性を管理職に抜擢!でも本人は困惑?家庭との両立に不安を感じる社員への対応
最終更新日:2024.10.24
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若手女性社員を管理職に抜擢したが辞退された。女性が活躍する醸成づくりとは?
当社は社員200名程度・平均年齢35才前後の企業です。
若い社員の意識向上につなげる意味もあり、36才、入社15年目となる女性社員を2名、主任から管理職である課長に抜擢しました。
Aさんは3歳と5歳の2人の保育園児を育てる母です。
一方、Bさんは結婚していますが、子供はいません。
どちらも能力が高く、部下や同僚の受けもよく、部長の推薦もあって、課長職へ登用しました。
しかし、Aさんは「責任が重い仕事はできない。これ以上時間も取れない。自信もありません」と辞退しました。
課長だから長時間勤務を強いるわけではなく、働く母の見本となってほしいと説得を続けています。
Bさんは受け容れましたが、はりきりすぎて空回りし、周りがついていけていません。
女性が活躍する会社とするために、どうしたらよいでしょうか。
まずは、候補者に会社が期待する役割を説明することから
会社側は課長職として具体的な仕事内容や期待している仕事像を伝えているでしょうか。
それは候補者に伝わっていますか。
候補者は、会社の期待する役割を理解していますか。
Aさんに「部下のマネジメントまではできません(マネジメントには向いていません)」という理由があったとします。
会社が、Aさんの仕事のやり方・正確さ・迅速性を評価しているのであれば、「自分の仕事を部下に任せてみることから始められないか?」でもいいのではないでしょうか。
Aさんが管理職の仕事ができるよう、ラインワーカーの仕事を部下に委譲させ、その仕事を部下がAさんと同等の成果が上げられるように指導・管理監督する、というのも管理職の仕事です。
はりきりすぎて空回りしているBさんについても同様です。
会社がBさんに期待している役割を伝え、Bさんの抱いている課長のイメージと一致しているかを重視してください。
AさんやBさんの働き方は、後進の従業員にも働き方や働きがいの理解やモチベーションアップ、会社への求心力の向上にも結びつく事でしょう。
それは、生産性向上や離職防止につながり、結果的に会社の利益にもつながります。
会社が働く人を応援する制度でなければ、組織に根付く文化とはなりません。
また、会社の就業規則他ルールは、女性が管理職になっても見合っている内容でしょうか。
女性活躍推進法や育児・介護休業法により、女性の仕事と家庭の両立だけではなく、男性の育児休業の取得など、女性活躍の推進が進んでいます。
令和4年4月からは、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画について、労働者101人以上の規模の事業者にも策定と届出と情報公表が義務化されました。(一般事業主行動計画の届出と公表をしていなくても罰則はありませんが、イメージ低下などは否めません)
管理職の職務は女性・男性で異なることはありません。
就業規則や職務規程などの会社のルールが男女平等は当たり前として、公平・公正であるかにあります。
女性活躍推進法や育児介護休業法に沿って、女性だけではなく、子供を持つ親(父も母も)・要介護者がいる人々が働きやすい環境を提供するためのルールを考えます。
女性活躍推進法や育児介護休業法に沿った働き方とは、「公平」の観点を用いることだと思います。
例として、課長職は時短勤務ができない・時短勤務をしている課長職の職務評価について、「No work No pay」の原則を超えた評価をしないというような、制度を用いたことへのマイナス制限や評価を設けないことでしょう。
制度や体制、文化を整えないまま、女性管理職を登用することは離職のリスク
制度や体制、文化を整えないまま、女性管理職の登用を続けることは、辞退はもとより、業務負荷による辞職も想定され、結果的に有能な社員を手放すことにつながります。
有能な社員を育成する時間とコストを考えると、離職は大きなリスクです。
女性が職業を持つことに対する意識の変化は男性にも拡がり、女性の就業率は全ての都道府県で上昇しています。
就業率など量的な面では拡大が認められますが、女性の管理職割合が低く、非正規雇用割合が高いことが課題となっています。
女性の管理職割合が低いことは会社の待遇・制度だけが問題ではなく、本人の意識の他、家族の理解、家族の協力体制、公的な支援制度も必要です。
「会社として活躍できるよう体制を整えた」が終わりではなく、十人十色な個々の背景を理解して、バックアップしてください。
多様で柔軟な働き方ができる体制の構築から始めましょう
女性活躍推進をターゲットとするのではなく、就業規則においては「ワークライフバランス」への取り組みを視野に入れてください。
現在リモートワークを導入し、コロナ収束後も継続する企業は、新聞調べで9割近くと発表されています。
リモートワークの取り組みは「ワークライフバランス」の一助となるでしょう。
出産・育児で休職しても復職しやすい制度も、女性が働きやすさを感じます。
多様で柔軟な働き方ができる体制を構築します。
職務規程がない場合、整備されていない場合には、部署ごとに求めるミッションを決めます。
縦軸に部署ごとのミッションが収まれば、横軸の各職務に求める職務も明らかになるでしょう。
職務が明確になると、職務評価もできるようになります。
働きやすく、自分の成果を認めてくれる会社であれば、働きがいを感じ、イキイキと働き、結果的に会社の生産性も向上します。
女性・男性で区別することなく、個々のキャリアプランを会社と個人が共有
体制が決まれば、男性社員や非正規雇用社員も含めた全体に「ワークライフバランス」への取り組み、会社の方針を伝えます。
2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標であるSDGs(持続可能な開発目標)にも、「働きがいも経済成長も(目標8)」「ジェンダー平等を実現しよう(目標5)」「すべての人に健康と福祉を(目標3)」他、「ワークライフバランス」」に関連した国際目標が挙げられています。
体制ができても、所属する人々にマインドが伝わらなければ、意味を成しません。
特に世代や地域によっては「女性は家を守るもの」「女性はアシスタント業務」などの無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)があります。
無意識の偏見は助長するとハラスメントにつながることもありますので、会社のHRマネジメントのポリシーを理解してもらうことが重要です。
キャリア面談においても、女性・男性で区別することなく、個々のキャリアプランを会社と個人が共有するよう努めてください。
女性管理職が活躍しやすいキャリアパスの構築が不可欠
女性管理職の登用については、進んでいない企業も多いかと思います。
この場合、無理に女性管理職を登用しようとすると、経営等からの反発が予想されます。
理由としては、そもそも、登用するようなキャリアパスになっていないことが考えられます。
本来、求める人材像を明確にし、それに沿ったキャリアパスの構築が不可欠になります。
解決の方向性としては、以下の2点かと思われます。
1)求める人材像を行動特性・取り組み姿勢から可視化すること
個人の特性としては、具体的には行動特性が挙げられます。
この個人の行動特性と現在の業務において求める行動特性とのギャップが高い場合にはもしかするとその仕事に向いていない場合があります。
また、会社・業務に対して、取り組み姿勢が高いのか、それとも単に生活のためだけに働いているのかという本人の志向性も重要になってきます。
2)従事して欲しいジョブを明確にすること
欠員にせよ、増員にせよ、採用予定者が従事することが予定されている業務等を明確にすると同時に、その到達レベルを可視化していくことにより、その内容に沿った質問等をすることが可能になります。