新型コロナウイルスによる人材マネジメントの転換
最終更新日:2024.10.24
はじめに
2020年3月以降、新型コロナウイルス騒動により、これまで、出社して働くことが当たり前だったのが、突然、リモートワークが中心になりました。
ZOOM等で自宅でも仕事ができるようになり、ライフワークバランスが進んだのではのではないでしょうか。
しかし、一方で、様々な箇所でひずみも出てきました。
これまでの人材マネジメントは、原則として、皆が同じ場所で働いているということが前提であったのが、突然、皆が別の場所で働くということになり、見えないので評価ができない、何をしているか分からないといったことから、これまで評価が良かった人が悪くなったり、また、その逆だといった、急に評価が変わるといった事態、さらには、教育をはじめとするコミュニケーションが取れないといった要因から、予期せぬ退職を招く、ということが発生してきました。
その対処方法として、「個々人の業務の可視化」という論点が着目され、ジョブ型人事制度が急速に注目されるようになりました。
今回、この紙面において、ニューノーマル時代に求められる人材マネジメントの方向性、ジョブ型人事制度のメリット・デメリット、さらにはジョブ型を活用した人事のデジタルトランスフォーメーション(DX)の活用方法など、今回から6回に分けて、日本版ジョブ型人事制度に関して触れてきたいと思います。
初回である今回は、新型コロナウイルスによる人材マネジメントの転換の必要性について触れていきたいと思います。
仕事のパラダイムシフト
これまでは多く(ほとんどすべて)の会社が、オフィスという空間で仕事をすることが当然でした。
その要因としては、いくつか挙げられますが、コミュニケーションを取るにあたって皆が集まった方が効率が良い、管理者がマネジメント(管理・監視)しやすいなど、皆が集まることに一定の価値を置く傾向がありました。
しかし、冒頭にも触れたように、新型コロナウイルスにより、「皆が集まること」がタブー視されるようになり、企業も出社を分散するようになりました。
これまでは、会社に出社することが目的になってしまう場合も多く、1日中アウトプットが出なかったということもあるかと思います。
そのような場合でも、出社することにより、「仕事した感」があったのではないでしょうか。
それがリモート勤務になると、「仕事をしたか否か」が明確になります。
一日中、見えない環境にある中でアウトプットを出さないと、「仕事をしていない」という印象になってしまいます。
そのため、リモート勤務になって生産性が格段に上がったという話も聞くようになりました。
今後は、このような流れが加速すると考えています。
しかし、以前から、働き方改革に伴う生産性を高めるために、アウトプットの明確化、非効率性を排除するために、業務の可視化などの論点もあり、リモート勤務がそれを後押ししたと考えた方が良いかと思います。
今後は、どこで働いても、どのように働いても、場所・形態等を問うのではなく、各個々人の役割・職務、さらには成果を明確に定義し、その実施・達成度合いを評価するようになっていくと考えています。
メンバーシップ型の長所と短所
これまで(現在)の日本企業においては、特定の個人の業務というよりも、「チーム」で動くことが一般的です。
契約形態・立場等にもよりますが、新卒で企業に入社すると、職種が限定されない場合がほとんどです。
勿論、メンバーシップ型には大きなメリットがあります。
- 終身雇用が前提になると、会社側主導でキャリア形成ができる。
- 従事職種が異なっても、報酬集水準が変わらず、長期的な視点で育成ができる。
- 在籍しているメンバーの帰属意識が深まる。
メリットとしては、会社主導で従業員の育成・機会の設定をする反面、従業員の雇用の補償を会社が行うということになります。
一方で、デメリットもあります。
- 会社の価値観が最優先されるため個性が生まれにくい。
- 終身雇用が維持できない、期待していないため、従業員からの不満がでるようになった。
- キャリアについて各人が考えるようになり、時代に合致しなくなった。
デメリットとしては、キャリア・価値観が多様化している中で、従業員が主体となって自らのキャリアを考える時代に合致しなくなったということになります。
それぞれ、一長一短はありますが、これまで高度経済成長による右肩上がりに売上を背景に、終身雇用制度を保つことにより、会社という共通の価値観の下、従業員は色々な業務に従事することにより、その会社でのキャリアを形成することができました。
転職も前提としていなかったので、特に問題もありませんでした。
しかし、終身雇用が維持されなくなった現在、転職が前提ということになるため、エンプロイアビリティの獲得や従業員自らの主体的なキャリア形成が必要になっており、これまでのメンバーシップ型が通用しなくなりつつあるもの事実かと思います。
これからの人材マネジメント
これらの組織形態が、各個々人の役割・職務、さらには成果という視点になるとどのように変化するのでしょうか。
集団単位ではなく、個人単位に、役割・職務、成果を細分化する必要があるとともに、個人ごとに求めることを定義していく必要があります。
その内容を元に従業員が業務を行い、適切な報酬を受けるという形になるかと思います。
また、従業員側の視点では、ジョブ型・メンバーシップ型、年功序列の廃止・転職社会等、色々と論点はありますが、間違いなく言えることは、「一つの企業で働き通す」ということは多くの人はできない(しない)ということです。
転職が前提、そして個人単位で役割・職務、成果が定義されるということは、従業員側も自分の「市場価値」をある程度、考えざるを得なくなり、会社の雰囲気よりも、職務のスキルをあげ、成果を出すようなキャリアを求める傾向が強くなってきます。
そのため、企業側としては、優秀な人材の確保のため、「育成」「社員教育」ということも重視するようになりました。
しかし、この傾向が過度になってしまうと、「職場がギスギスする」「会社に対するコミットメントが低くなる」、「無駄な業務をやらなくなる」といった、ジョブ型のデメリットが注目されるようになります。
外資企業などは、このデメリットをデメリットだと考えていない場合もありますが、日本企業の一つの特長である「全体主義」というものも、時代にそぐわなくなりつつあるが、一定の成果を上げ、今後もある程度は継続していくのものまた事実であります。
最後に
今まで、日本企業の成長を支えてきたメンバーシップ型と、これからの主流になるかもしれないジョブ型、それぞれの長所を活かすことにより、日本版ジョブ型人事制度が成立するのではないかと考えています。
次回以降、それぞれの各論に触れてきたい思います。
まず、次回は日本におけるテレワークの問題点とジョブ型人事制度の必要性について記載します。