日本語が苦手な社員とどう向き合う?外国人労働者への労働条件の明示とコミュニケーションのコツ
最終更新日:2024.10.24
目次
日本語が苦手な外国人労働者に雇用契約書や就業規則を明示する方法とは?
外国人を雇うことになったが、日本語で書かれた雇用契約書や就業規則の内容が分からないので説明して欲しいと言われました。
どのように対応すれば良いでしょうか。
「労働条件などを記載した書面の交付」と「賃金の説明」を行う必要がある
労働基準法第15条には、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない」とあり、会社側には労働条件通知書などの書面で示す義務があります。
この条文は、外国人社員に対しても当然に適用されます。
加えて、外国人社員には「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業者が適切に対処するための指針」(以下「外国人雇用管理方針」)を厚生労働省が定めています。
外国人雇用管理指針は、事業主に対し、①「書面の交付」(外国人労働者との労働契約の締結に際し、賃金、労働時間等主要な労働条件について、当該外国人労働者が理解できるようその内容を明らかにした書面を交付すること)及び②「賃金に関する説明」(事業主は、賃金について明示する際には、賃金の決定、計算及び支払の方法等はもとより、これに関連する事項として、税金、労働・社会保険料、労使協定に基づく賃金の一部控除の取扱いについて外国人労働者が理解できるよう説明し、当該外国人労働者に実際に支給する額が朗からになるよう努めること)を求めています。
ただ、外国人雇用管理指針には、法的拘束力はないが、クレーム、ひいては訴訟等を避けるためにも、上記措置をとっておいた方が良いと考えています。
契約文書や就業規則を当該外国人の言語で翻訳しておくことが望ましい
就業規則等については、当然のことながら、外国人労働者にも適用されます。
外国人労働者がいる場合、就業規則には、通常の規定に加えて、在留資格や在留期間に関する規定も必要になります。
現行法令上、就業規則についても外国人社員の理解できる言語で用意することまでは求めていません。
しかし、一般的には、外国人は日本人よりも契約文書を重視する傾向があるため、認識・文化の違いからトラブルが発生しないよう、就業規則についても、当該外国人の言語で翻訳しておくことが望ましいと考えています。
また、労働契約書等を日本語以外の言語で作成する場合には、必ず日本語版も作成し、正文が日本語版であり外国文は「訳文」にすぎないことを記載し、万が一、両者に齟齬がある場合には日本語版が優先することを明記すべきです。
また、賃金に関しても、認識の違いがトラブルに結び付きやすい事柄であるため、雇用する外国人社員に実際に支給する賃金額が明らかになるように、その者が理解できる言語により説明することが必要だと考えています。
当該外国人労働者が理解できない状態であると、事実上、口頭でのやり取りと同じになりかねないため、トラブルが拡大する懸念があります。
雇主が労働条件通知書、雇用契約書等の書面で明示しなければならない事項
雇用契約を締結する際に、雇主が労働条件として労働条件通知書、雇用契約書等の書面により明示しなければならない事項は以下の通りです。
②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事柄(有期雇用契約で当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるとき)
③就業の場所及び従事すべき業務に関する事柄
④始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合には就業時転換に関する事柄
⑤賃金(退職手当及び賞与を除く)
⑥退職に関する事柄(解雇事由を含む)
パートタイマーについては、パート労働法6条1項により、以下を書面により明示する必要があります。
②退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の支払時期に関する事項
③臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事柄
また、前述のように、雇入れられる外国人労働者が理解できるような内容を明らかにする必要があるため、当該労働者が理解できる言語でも作成することが望ましいです。
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外国人を雇用する際の指針を確認する
言語の問題は非常に重要です。言葉理解できないと上記問題は勿論、業務におけるコミュニケーションが取れないことを意味し、業務に支障を来す恐れがあります。
上記「外国人雇用管理指針」の「5.適切な人事管理、教育訓練、福利厚生」には以下のような記載があります。
1.適切な人事管理
事業主は、その雇用する外国人労働者が円滑に職場に適応し、当該職場での評価や処遇に納得しつつ就労することができるよう、職場で求められる資質、能力等の社員像の明確化、職場における円滑なコミュニケーションの前提となる条件の整備、評価・賃金決定、配置等の人事管理に関する運用の透明化等、多様な人材が能力発揮しやすい環境の整備に努めること。
3.教育訓練の実施等
事業主は、外国人労働者が、在留資格の範囲内でその能力を有効に発揮しつつ就労することが可能になるよう、教育訓練の実施その他必要な措置を講じるように努めるともに、苦情・相談体制の整備、母国語での導入研修の実施等働きやすい職場環境の整備に努めること。
どの内容も言語については、何かしらの対応が必要であるため、「何かしらの対応」をしたい方が望ましいと考えています。
人材マネジメント上のポイント
外国人に対して、にどのような業務を担ってもらうのかある程度明確にしておく必要があるかと考えています。
そのための手段として、役割の厳格化、もしくはジョブの厳格化が望ましいと考えます。
アプローチとしては、求める人材像を、役割・ジョブの視点で整理し、その内容を具現化し、各人材への当てはめについては、ドラスティックに実施することが必要です。
しかし、一方で、急激な変化を恐れて中々難しい場合がありますが、その場合は、まずは賃金制度と切り離して、導入を進めて行くのも一つの手段として考えられます。
その際、各国の文化、雇用慣習等を意識しながら、彼らが理解できる言葉で説明する必要があります。
また、日本以外の国は、ある程度業務が決まっている場合が多いです。
マルチタスクを求める場合は、特にジョブ型とメンバーシップ型との違いを説明できるようにしておく必要があります。