内定者の内定先を子会社に切り替えることは可能?出向や転籍のリスクと対策
最終更新日:2024.10.24
目次
業績悪化を理由に、内定者の内定先を子会社に切り替えたい
新型コロナウイルス感染症の影響により、本社の業績が急激に悪化したため、内定者の内定先そのものを、本社から子会社に切り替えることを検討していますが、何か問題になることはありますか。
内定者の同意なく、企業側が一方的に内定先を変更することはできない
出向には、出向元との労働契約に基づく従業員たる地位を保有したまま、出向先の従業員となって出向先の業務に従事する「在籍出向」と、出向元との労働契約を解消させて、出向先との間で新たな労働契約関係を結ぶ「転籍出向」があります。
採用内定が成立すると、内定者と企業の間に「就労始期付き解約権留保付き労働契約」が成立します。
これはいわゆる「転籍出向」を内定段階で行うことと同じことになり、内定者の同意なく、企業側が一方的に内定先を変更することはできません。
労働者の同意のない転籍出向は無効、それを理由とする懲戒解雇も無効
転籍出向命令を拒否した労働者の懲戒解雇の適否が問われた裁判では、「本人の同意が必要であるところ、本件人事異動命令は、本人の同意を欠いており、その点において、無効であると解するのが相当である。
そうすると、本件人事異動命令に応じなかったことを理由とする本件解雇については、懲戒解雇事由に該当する事実が認められず、その限りにおいて、無効なものである」とし、
である、としています(国立研究開発法人国立循環器病研究センター事件・大阪地判・平30・3・7労判1177号5頁)。
事前の包括的同意も認められない
当該事例のような転籍出向には、
①出向元との労働契約の解約と出向先との新たな労働契約の締結によるものと、
②労働契約上の地位の譲渡によるもの
がありますが、いずれにせよ労働者の同意が必要であり、原則として、事前の包括的同意は認められていません。
例外的に包括的同意が認められる場合としても、転籍先と転籍元が同一会社であると同一視できる程度に密接な人事交流がなされているような系列企業グループ間の転籍など、一定期間後の復帰が予定され、転籍中の待遇にも十分な配慮がなされるなどして、実質的に労働者にとっての不利益性がない場合に限られます。
内定者本人に対して、十分に説明する機会を一度ならず、複数回設けることが必要でしょう。
内定先の切り替えを拒否されたため内定を取り消す場合は、整理解雇4要素を満たす必要
内定者に対し、
があります。
内定取消は解約権の行使となり、その行使は留保された解約権の趣旨・目的に照らして客観的・合理的である場合においてのみ許容されます。
正社員に対する整理解雇については、
①人員削減の経営上の必要性
②解雇回避努力
③被解雇選定の合理性
④被解雇者や労働組合等の協議という
整理解雇の4要素が実務上の判断基準とされおり、内定取り消しに関しても、同じく整理解雇の4要素により、その有効性を判断するとされています。これらの内容(特に①・②)を十分に行い、内定者に説明を行うことにより可能になると考えています。
適正な人員数を算出し、人材採用や育成を
まずは、人材不足に至ったかどうかの検証が必要だと考えています。
部門・職種ごとの必要な人員数の算出においては、様々なアプローチがありますが、代表的な例としては、売上vs人員数が挙げられます。
勿論、新規ビジネスや商材の特性等で単純に図ることができないこともあるかと思いますが、
だと考えます。また、日々のオペレーションについても、必要なジョブ(職務)に対して、充足しているかどうかに関しては、ジョブ型人事制度を考え方をもとに、ジョブディスクリプションを作成し、必要人員を測定すると同時に、それに向けて、教育・研修等を行っていくことが、将来の飛躍に向けた俎上づくりにもつながると考えています。
いずれにしても、業務の量・内容の把握を第3者と共有することによる効果は非常に高く、特に管理者の動きが重要になってきます。