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問題の事象
採用を検討している外国人の在留目的を確認したところ、その在留目的が予定していた業務内容と異なることがわかりました。
この場合、ど…
有給休暇の買い上げを要求してくる社員に応じる必要があるのか？
最終更新日：2024.10.24
目次
問題の事象
当社では社員に労働基準法どおりの有給休暇を与えていますが、未消化分の有給休暇を買い上げてほしいと要求がありました。
この場合、法的に支払わなければならないのでしょうか。
解説（基本的な考え方）
有給休暇を使いきれずに時効となる場合でも、会社側に未消化の有給休暇を買い取る義務はありません。
逆に、善意での買い取りが違法とされてしまうケースもあるため、
「有給休暇の買い上げをしない」という姿勢を明確にする
方針とすることを推奨します。
有給休暇の買い上げとは
有給休暇の消滅
労働基準法に基づき、使用者は
6カ月の継続勤務と出勤率が8割以上の従業員には、10日間の年次有給休暇を与える義務があります。
有給休暇は労働者の権利であり、本来は全て消化するのが望ましいですが、実際には業務の進捗や会社への影響を考慮して休暇をすべて取りきらないこともあります。
そのような場合、取得しなかった有給休暇は
翌年にのみ繰り越すことが可能であり、権利発生から2年を超えると未消化の有給休暇は消滅します。
有給休暇の買い上げ
有給休暇の買い上げとは、使用者が従業員の有給休暇を取得する権利に対して、金銭を支払って買い取ることを意味します。
すべての有給休暇が消化しきれず、権利発生から２年を超えた場合に
「業務量や会社の状況を考慮して有給休暇を使わなかったのだから、その分の金額を支払ってほしい」
と要求してくる従業員が出てくることで、こうした問題が発生します。
買い取りが違法になる場合とならない場合
（ケース１）法定日数を超えて支給している休暇の買い上げ
使用者側が法定以上の有給休暇を付与した場合、その超過部分については企業が買い上げを含め自由に決定することができます。
有給休暇とは別に支給している夏季休暇などについても同様の考え方です。
（ケース２）時効となる前の買い上げ
例えば、「現在20日の有給休暇の権利がある従業員に対し、20日分の給与を支払って有給休暇を無くす」という形で、現時点で権利を有する有給休暇を買い上げるケースです。
昭和30年11月30日の基収第4718号によると、
「年次有給休暇の買い上げの予約をし、これに基づいて請求し得る年次有給休暇の日数を減じないし、与えないことは労働基準法違反」
とされています。
有給休暇の目的は、従業員が精神的にも肉体的にも十分に休息を取り、仕事に活かすことにあります。
そのため、時効前の有給休暇を買い上げる行為は、この制度の目的に反するといえます。
（ケース３）時効となり消滅した休暇の買い上げ
10日の有給休暇を得たものの、2年間で3日しか休暇を取らず、未消化で時効となった7日分の休暇に対して金銭を支払うケースです。
この場合はすでに時効となっているため法律の関知するものではありませんし、使用者の采配で買い上げることは違法とはなりません。
（厳密には、すでに権利は消滅しているので「買い上げ」とはなりません。）
しかし、昭和24年9月21日の基収第3000号によると、
「残っている年次有給休暇の日数が時効により消滅したような場合に、その日数に応じて調整的に金銭を付与することは、事前の買い上げと異なるので即労働基準法第39条違反になるとはいえないが、結果的に年次有給休暇の取得を抑制することにもなるため、本来の趣旨からは好ましくはないといえる。
企業としては、あくまで従業員が年次有給休暇を取得しやすいように努めることが大切である」
企業としては、あくまで従業員が年次有給休暇を取得しやすいように努めることが大切である」
とされています。
つまり、時効後の有給休暇に金銭を付与することは、違法とはならないものの、法制度の趣旨からみて推奨されるものではありません。
逆に、従業員側から一方的に買い上げ要求があったとしても、特別な事情がない限り企業側は拒否することができます。
「有給休暇の買い上げ」を要求されないために
「有給休暇の買い上げはしない」という姿勢
退職時を除き、会社として「有給休暇の買い上げはしない」という姿勢は非常に重要です。
有給休暇の買い上げを行うと、法律違反になるリスクはもちろん、従業員が自身の権利について誤解を招く恐れがあります。
買い上げは会社が従業員に対して思いやりを持って行う施策にも関わらず、従業員に「買い上げは当たり前」という誤った認識を植え付けることがあります。
これは、権利を主張する社員が増える原因となり、職場環境の悪化を招くことも考えられます。
有給休暇を適切に利用する環境を整える
未消化の有給休暇を減少させるためには、積極的に有給休暇を取得させることが大切です。
有給休暇を適切に利用できる環境として、例えば以下のような方法が考えられます。
- 業務の繁閑期が明確な場合、閑期になったら有給休暇を取得させるよう積極的によびかける。
- 年末年始や夏季休暇期間に個人の有給休暇を使用させる。
- 病気欠勤の際に有給休暇を事後承諾する
夏季休暇期間については、
「7月から8月の間に5日間連続で有給休暇を取得可能」
とすることで、実質的な夏季休暇を設けることができます。
また、
「年末年始のように多くの企業が休業する時期に、全社員に個人の有給休暇を利用させる」
ことなども、「有給休暇の計画的付与」として認められています。（労働基準法第39条の5項）
ただし、計画的付与を導入する際には
- 労使協定の締結が必要
- 有給休暇の5日を超える部分にのみ適用できる
- 有給休暇の権利が発生していない新入社員の扱いに注意が必要
など、設計時に考慮すべきことがいくつかあります。
導入を検討する際は社会保険労務士や労務の専門家などに相談すると安全でしょう。