自己啓発時間は労働時間?ポイントは社員が自発的に行っているかどうか
最終更新日:2024.10.24
目次
始業の一時間前に業務に関する勉強をしている
ある社員は毎日始業1時間前に出社し、業務に関連する勉強をしております。
自己啓発は会社の役に立つとは言え、このような時間が労働時間に当たるとは考えていません。これは正しいのでしょうか。
会社の指揮命令下におかれていれば労働時間になる
一般には所定労働時間を超える労働が時間外労働あるいは残業と呼ばれています。
ではどのような時間が労働時間にあたるかですが、これは「労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間」であるとされ、実務上解釈が確立しています。
就業規則の時間をオーバーしても労働時間にあたる
注意が必要なのは、就業規則に1日8時間、1週40時間との記載があっても、これによって労働時間が決まるのではなく、
しかし、多くの場合はそうではありません。
暗黙の指示の場合も同様
会社による明示的もしくは黙示的指示がない限り、労働時間には該当しないと考えて問題ないと思われます。
この場合、当該社員が自発的に行っているかどうか否かということが最大の論点になります。
会社の指示(黙示も含む)がなければ、自発的だと解釈して問題ないかと思います。
さかえ経営は法律と経営、両方の視点から企業ごとに適した就業規則の策定を支援します。
時間外手当ルールや賃金制度、解雇・懲戒、休職等のルール、36協定の運用、長時間労働対策など
社会保険労務士と経営コンサルタントが最適な制度づくりをサポートします。
業務に必要な勉強であれば労働条件時間に該当する
会社が社員に対して読了すべき自己啓発書を課題として具体的に指定し、
かつ、これを業務外の自主的な学習時間で読まなければ業務に支障が生じるというような場合や、
業務に必要な資格試験の受験勉強について、同試験に合格するには、それ相応な受験勉強時間が必要であることは、会社にとって、当然、予想できるものである場合などは、
ところですが、
そのような例外的なケースでない限りは、労働時間にあたらないと取り扱っても差支えないでしょう。
就業規則で時間外労働・早朝出勤の定義を決めておく
「労働者が使用者の指揮命令下におかれている」かどうかは具体的なケースごとに判断され、具体的な事例をあてはめる場面で様々な要素が考慮されているところですが、例えば
①義務付け(強制)の程度
②業務性の有無(業務との関連性)
③時間的・場所的拘束性の有無など
の要素を考慮して労働時間に該当するかが判断されることが多いです。
したがって、
をしておいた方が良いかもしれません。
そのような定義がないとどのような時間が労働時間なのかそれぞれの事案により判断しなければならないため、判定が煩雑になる恐れがあります。
自主的な勉強時間か、会社の指示による勉強時間かがポイント
自己啓発書を読んでいる時間についても、会社の指揮監督下にあって労働提供のために現実的に拘束されている時間は労働時間となりますが、
自己啓発書を読んでいる時間は、社員の自主的な勉強時間であり、会社による明示的または黙示的な指示がない限り、会社の指揮下にある時間とは言えず、労働時間にあたらないと考えられます。
労働時間の解釈が統一されていないと、人ごとに「損した」「得した」という結果にもなりかねません。
があります。
規則や法令を守る体制(コンプライアンス)をつくることが大切
コンプライアンスを軽視している会社は、離職の増加や会社の信用の失墜による経営悪化などのリスクにつながります。
適切なルール・就業規則が構築されていれば「これは労働時間ではない」とはっきり言えますが
規則があいまいであったり、労働法を理解した運用がされいてない状態だと、時間外労働や長時間労働として訴えられるリスクが発生します。
労働法は労働者保護の視点が強く、企業側が不利なケースも多い
労働法は労働者側に有利で、企業側に不利なルールなっているような場合も多く、
法律どおりに制度つくるとコストがかかりすぎて、経営が成り立たなくなってしまうといったケースがあります。
表面的な法律の知識だけで就業規則を作るのでなく、労務の専門家に相談することが大切です。
さかえ経営は法律と経営、両方の視点から企業ごとに適した就業規則の策定を支援します。
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