在宅勤務でのみなし労働時間制は可能?コスト削減と法規制のバランスについて
最終更新日:2024.10.24
目次
在宅勤務で、事業所外みなし労働時間制はそもそも適用できる?
在宅勤務制度を導入しましたが、その場合は時間外労働手当を支払わないようにしないとコストが増大するため、事業所外のみなし労働時間制を適用しています。この運用は可能でしょうか。
事業所外労働は通信手段を持たないことが前提のため、適用は難しい
通信設備が発達した現在において、
と思われます。
在宅勤務はある程度、WEB会議等も行う、また適宜連絡を取ることが前提となるため、適用除外であると考えています。事業所外みなし労働の要件は以下になります。
①何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
②事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合
③事業場において、訪問先、帰宅時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示通りに業務に従事し、その後事業場に戻る場合。
また、「事業外みなし労働時間」に関する就業規則への記載は勿論ですが、労働契約書や労使協定を適切に締結し、対象社員一人一人に周知する必要があります。
換言すると、以上のよう場合は具体的な労働時間の把握が可能であるとされています。
「事業場外みなし労働時間制」の適用を否定した判例はいくつもある
労働時間を管理してない場合の時間外労働等における未払労働債務は、従業員の一方的な時間が通る場合が多いため、そのコストが莫大になる可能性があります。
裁判例では、営業社員について勤務時間を定めたり、
「事業場外みなし労働時間制」の適用を否定した例(光和商事事件・大阪地判平14・7・19労判833号22頁)や、
として、「事業場外みなし労働時間制」の適用を否定した例(コミネコミュニケーションズ事件・東京地判平17・9・3労経速1916号11頁)などがありますが、
いずれも「事業場外みなし労働時間制」の適用を否定するにあたって、会社が具体的に社員の労働時間を管理・把握していたことを認定しています。
就業規則、36協定・事業所外労働協定書、労働契約書を作成する必要がある
在宅勤務者における労働時間制を記載する必要があります。
通常労働時間制を適用する場合においては、
また、36協定において、みなし労働時間を記載する必要もあります。
しかし、
また、「事業場外みなし労働時間制」の適用を受けていたとしても、所定の労働時間は8時間でも、実際働いた時間が10時間であった場合は、2時間分の残業代を支払わなければなりません。
このことを見越して、就業規則や36協定・事業所外労働協定書、労働契約書を作成する必要があります。
日報やパソコンのログイン・ログアウトで在宅勤務の労働時間を管理
在宅勤務とは単に就業場所が異なるだけであり、「さぼる」ことはできないということを認識させる他、成果等において厳しくみられることを周知する必要があります。
また、
があります。労働時間や実施内容の管理の方法に十分注意してください。
仮にみなし労働時間制を適用している在宅勤務者においても、労働時間の算定が困難であることが前提であるが、これらの従業員についても、
になります。
尚、「実際の労働時間」を把握することと異なり、
することで差し支えない、とされています(厚生労働省HP「在宅勤務での適正な労働時間管理の手引き」)
しかし、
なります。
人材マネジメント上のポイント
労働時間に関しては、法に従って厳格に対応することが求められますが、拘束性等がない場合においては、待機時間が除外されることを考えると、
が必要ではないでしょうか。
その際の視点として、従業員の目線が内部ではなく、外部に向くようにする、さらには、仕事における充実、その結果としての当事者意識等の醸成が求められます。
それには、月並みかもしれませんが、管理者が従業員の動向を日々チェックすることが必要です。例えば、業務の進捗、周りとのコミュニケーション状況などが挙げられます。また、1on1等を通じて、プライベートの悩み等もキャッチアップすることも重要になるかと思います。