内定者の入社日を繰り下げる?自宅待機させる?新型コロナウイルス感染症の影響での対応策
最終更新日:2024.10.24
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内定者の入社日を遅らせたり、自宅待機させることはできる?
新型コロナウイルス感染症の影響で人員削減が必要な状態となりました。
採用内定者に対し、入社日を遅らせたり、自宅待機させる場合による休業手当の取り扱いはどうなるのでしょうか。
採用内定者は、すでに解約権留保付きの労働契約が成立している
採用内定者も、就労始期付き解約権留保付き労働契約が成立しているとされています。
内定者の入社日の変更は、就労始期付き解約権留保付き労働契約の始期を変更することですから、始期変更の特則でもない限り、業務命令では変更できませんが、内定者との合意があれば可能となります。
ですが、合意が得られなかった場合は、原則として、自宅待機と同様の対応となります。
つまり、自宅待機させた場合の処遇について、休業手当だけで済ますことは労基法上可能ですが、賃金規定等が未整備な場合は、賃金全額請求が認められる場合があります。
賃金などが関係する場合、判例でも入社日の変更は慎重に判断される
入社日の繰下げ合意が十分な説明に基づく、任意性が確保せれた真摯な同意でない限り、合意自体の有効性が問われることもあり得ます。
裁判例では、「労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合」には、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があることをもって直ちに労働者の同意があったものとみるのは相当でなく、当該変更に対する労働者の同意の有無についての判断は慎重にされるべきであるとしました。
(山梨県民信用組合事件・最二小判平28・2・19労判1136号6頁)。
非常事態時の就労始期繰下げの可能性を内定段階でも説明し、内定通知書に明記を
非常事態時の就労始期繰下げがあり得ることを内定段階で十分に説明し、内定通知書に明記し、一定期間を限度として、始期の繰下げができる旨の承諾書を得ておく方法が想定されます。
また、自宅待機に関しては、この場合の賃金を平均の60%のみを支払う旨の給与規定の改正が必要です。
なお、新たにこの規定を導入する際には、他の従業員にも労働条件の不利益変更となるため、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」(労契法9条)を踏まえた対応が必要です。
内定者への説明、金銭支払いの配慮など、誠実な対応が必要不可欠
内定者への説明の際、可能であれば、単なる説明のみならず、合意による内定辞退へ向けた説得や、ある程度の金銭支払いやその他の配慮などの条件提示を行うことも、内定者に対する不利益緩和措置として有効でしょう。
また、内々定者については、労働契約が未成立の段階であるため、内々定者は会社に対して地位確認請求を行うことはできません。
もっとも、労働契約締結上の過失として、誠実な対応の有無が問題になりますので、内定者へ対応と同様に、丁寧な対応が求められるのは言うまでもありません。
人材マネジメント上のポイント
採用時において、どのような人材を求めているかどうかを明確にし、その要件に合致した人材を採用することが求められます。
しかし、職務経歴書等から確認することが通常ですが、中には誇張表現等があり、的確に反映できない可能性があります。
そのため、身元調査は一番、近いと思われますが、難しい側面も多々あります。
解決の方向性としては、以下の2点かと思われます。
1)求める人材像を行動特性・取り組み姿勢から可視化すること
個人の特性としては、具体的には行動特性が挙げられます。
この個人の行動特性と現在の業務において求める行動特性とのギャップが高い場合にはもしかするとその仕事に向いていない場合があります。
また、会社・業務に対して、取り組み姿勢が高いのか、それとも単に生活のためだけでに働いているのかをという本人の志向性も重要になってきます。
2)従事して欲しいジョブを明確にすること
欠員にせよ、増員にせよ、採用予定者が従事することが予定されている業務等を明確にすると同時に、その到達レベルを可視化していくことにより、その内容に沿った質問等をすることが可能になります。