残業削減に反対し「仕事がしたい」社員への対応:みなし残業と労働時間管理
最終更新日:2024.10.24
目次
とにかく仕事が好き。残業代も請求せず、業績優秀な社員の扱い方は?
当社はイベント企画会社です。労働時間は法定労働時間の週40時間、1日8時間、週休2日制で、営業職にはみなし残業手当を30時間分を付与しています。
営業職はイベントの企画提案・受注後のイベント運営を任せています。会社では、残業削減の取り組みを始めていますが、29歳のサブマネージャー職は「自分はプライベートの趣味もないし、仕事で成果を上げることがモチベーションになっている。みなし残業を超えても、残業代を請求する気もない。なぜ残業したらいけないのか。残業できないならば家で仕事します」と納得しません。
確かにサブマネージャーは、顧客の受けもよく、営業成績も上位で、企画の発想力も兼ね備えている優秀な社員です。
彼女の毎日の退社時間は21時前後で、残業時間は月50~60時間程度となっています。
今のままでは、会社は罰則ありの“法令違反”を犯している
2019年4月施行(中小企業への適用は2020年4月)の労働基準法改正では、時間外労働の上限規制が改正されています。
この改正で、
①時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則月45時間・年360時間
②臨時的な特別の事情があって、それを労使間で合意をしていても
・時間外労働 ・・・年720時間以内
・時間外労働+休日労働 ・・・月100時間未満、2~6か月平均80時間以内
③原則月45時間上限の超過が認められるのも年6か月まで
と規定されています。このケースでは、サブマネージャーは月50~60時間の残業をしているとあり、この状態が6か月以上経過している場合には、会社は罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)もある法令違反を犯していることになります。
サブマネージャーは、「残業ができないならば、家で仕事をする」とまで言っていますが、事業所外労働も労働時間にカウントされます。
また、「みなし残業時間を超えた残業代を請求しない」についても、みなし残業代を超過した時間外勤務手当は支払い義務が生じます。
個々の仕事内容を把握するためにも、残業を許可制に
解説に示した通り、すでに会社は罰則有りの法令違反となっている可能性があります。
もう1点、みなし残業手当分の時間を超過した時間外労働に対しては、超過分の時間外労働手当の支払い義務があります。
その他に原点である労働基準法改正の背景、「長時間労働は、健康の確保を困難とし、仕事と家庭生活の両立も困難となる。その結果、少子化の原因、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因につながっている。今般の働き方改革の一環として、時間外労働の上限を法律に規定した」(厚労省:2020年8月発行 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説より一部抜粋・改編)を認識して頂ければと思います。
そして残業を許可制としているでしょうか。許可制とは、
ものです。
この事例では、サブマネージャーは優秀ですが、残業は自発的に行っているようです。許可制には、部下個々の仕事内容を把握するという会社側(上司)のミッションも含まれています。
一方的に
をマネジメントして頂ければと思います。サブマネージャーがすべてを自分でやらなければ気が済まない性格であったら、仕事の棚卸をして仕事の割り振りに手を入れる。
例えば、マーケティングをサブマネージャーがすべて一から十まで行っているのであれば、基礎調査の項目出しはサブマネージャーがするが、調査はアシスタントに任せるなど、
させます。サブマネージャーは、今は健康にも影響がなく、成果も出ていて、モチベーションも上がり、心身ともに充実しているようですが、このような状況は永遠ではありません。小さなつまづきから、メンタルにも身体にも業績にも支障がでる恐れがあり、これらを予見して対策することが求められます。
就業規則で残業の許可制度を明示。36協定を締結し、労基署に届け出を
就業規則等のルールでは以下を含めます。
残業の申請・許可制度(時間外労働・休日労働)
・時間外労働又は休日労働の必要がある場合には、所属長の指示によること。
・または事前に所属長に対し、業務内容及び必要な時間数を申し出を行い、命令・許可を得ること。
・時間外労働に関する上限の追加(法定の場合:1か月の上限45時間以内で年間360時間、時間外+休日労働時間は上限月100時間未満・2~6か月平均80時間以内)
就業規則に追加する場合には、別途36協定を事前に締結し、労基署に届け出します。
36協定で協定すべき内容は、厚生労働省ホームページに「36協定届の記載例」があります。
この事例では、みなし残業手当の超過分の支払いがされていないようです。この場合は、
します。なお、1か月の残業時間がみなし残業時間を超えない場合にも、みなし残業手当は減額できません。
残業削減を訴えるのではなく、会社が受ける法的な罰則や社会的背景を説明
従業員に対して、単に残業削減を訴えるのではなく、解説で示したように
①労働基準法の時間外労働の上限規制の内容
②違反すると会社が罰則を受けること
③さらには時間外労働の上限規制が制定された背景を説明することが重要です。
36協定も届け出の再提出が必要となりますので、36協定の労使締結の前にこれらの説明をする場を設けるとよいでしょう。
みなし残業制度を導入している場合、
します。
人材マネジメント上のポイント
従業員の業務を日々、管理することが必要になります。
も必要になってきます。
そのような業務把握を実現した次のステップとして、生産性向上に向けた取り組みや在宅勤務の導入・浸透等につなげていくことが望ましいと考えています。
いずれにしても、
特に管理者の動きが重要になってきます。そのために、
になります。