テレワーク導入後の交通費はどう支給する?実費支給と上限金額のバランス
最終更新日:2024.10.24
目次
出勤日数が減ったり遠方に転居した社員の、通勤手当の額はどう決める?
当社では、通勤手当は上限月30,000円までとし、6か月分の通勤定期券代の実費を支給しています。
テレワークを導入後は週2回を出社日とし、コロナ感染が収まってもテレワークは継続する予定です。
週2回出勤の場合には6か月分の通勤定期代よりも安くなるので、都度実費支払いをしていますが、月30,000円の上限支給ルールを使い、会社から100キロ超離れた遠方へ転居したものがいます。
通勤手当支給ルールを見直したほうがよいでしょうか。
通勤手当は法的には支払う義務は無く、企業ごとに決めて良い
労働基準法などの労働関連法に通勤手当支給についての明記はなく、会社が従業員に通勤手当を支給する義務はありません。
通勤手当支給は通例に倣い企業が優秀な人材を広く募集するための採用条件として提示していることでしょう。
通勤手当支給の規定については「交通機関の定期代実費を支給し、支給限度額は所得税法に定める非課税限度額とする」と定める会社も多く、ここでいう非課税限度額とは、交通機関を利用の場合は月額150,000円まで、自動車・自転車を利用の場合は片道キロ数により異なります。(国税庁)
以上のことから、通勤手当支給のルールは企業によって異なるので、自社の状況から妥当なラインで設定します。
テレワーク導入により通勤手当支給総額は低下しているのではないかと思います。
あえて上限金額を下げる見直しをして、従業員の士気を下げる必要はないでしょう。
なお、同一労働同一賃金ガイドライン(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針 平成30年12月 中小企業の適用は令和3年4月1日より)では、通勤手当も同一労働同一賃金の対象となっています。
通勤手段・上限額・経路の申請などルールを策定する
各企業でテレワークが導入され、毎日の出勤がなくなると都会から離れて居住する人も増えています。
ある日突然高額な通勤手当を申請されるかもしれません。
通勤手当支給の規定では、最低限以下を含めてください。
②全額実費または上限金額を決める
③合理的な経路を申請させる
遠回りの経路で申請し通勤手当を浮かせる虚偽申請に対しては、発覚後、遡って返金を要求することができます。
虚偽申請は犯罪行為でもありますので、悪質で多額の場合には、刑事告発することもできます。
規程・マニュアル作成上のポイント
通勤手当の支給については就業規則または賃金規程などの下位規程に具体的に示します。
(同一労働同一賃金を考慮すると、正社員のみではなく、パート・アルバイト等
有期雇用労働者も支給対象とすることをお勧めします)
②支給の条件
(公共交通機関の利用のみとするか、マイカー通勤者にも支給するか。
通勤ルートの申請方法=合理的な経路の申請。マイカー通勤の場合は、キロあたり〇円)
③支給上限金額と支給額
(対象者や要件ごとにいくら支給するか。実費支給・上限〇万円まで支給)
※上限金額は自宅から会社までの通勤距離としてのターゲット地域の範囲で決める。
④支払い方法
(後払い・前払い、給与と合算・別支給、毎月の通勤定期代・6か月の通勤定期代)
⑤その他
(出勤が月〇日未満であれば、定期代ではなく現金で支払う。
自転車やマイカー通勤の場合の駐車場・駐輪場の支給の有無。途中退職時の払い戻し返金など)
テレワーク導入時や週3日以下のパート・アルバイトの通勤交通費は⑤その他でカバーします。
マイカー通勤を認める場合、各通勤距離(片道)に応じて非課税限度額が定められています。
指定された限度額を超えた分は課税対象になるので注意が必要です。
運用上のポイント
合理的な経路を申請させますが、必ずしも近距離ルートが合理的なわけではありません。
その交通機関の運行本数が少ないなどの場合もあります。また1キロ未満はバスや電車は使用せず、徒歩としている会社もあります。
遠回り経路で申請する虚偽申請および不正受給は防止しなければなりませんが、申請書に最寄り駅からの地図を書かせたり、Webのマップ機能でルートを調べたりなど、実態と申請の整合をとればよいでしょう。
転居の場合、住所変更はしても通勤交通費申請が抜け落ちる場合があります。
住所変更届と通勤交通費変更届を1つの帳票にまとめるというのも一策です。
人材マネジメント上のポイント
ルールの構築等が重要になりますが、意識面の改善も図ることが必要だと思われます。
アプローチは様々ですが、一例として、当該組織のタスク・目標の共有が挙げられます。
目標管理がその手段の一つですが、本来、会社全体目標からブレイクダウンされた、各ユニットごとの目標を達成するために、各人ごとにミッション等が割り振られます。
各人ごとに「何をどのようにするのか」、進捗が未達な場合は、「それをどのように改善するか」ということを、上司と部下でその都度、考え、改善していくことが本来の流れです。
その仕組みを活用して、組織のミッションを構成員すべてにタスク分けを行い、進捗を管理するという別のアプローチが必要になります。
その際、勿論、従事しているジョブ、そして、それに紐付くグレードに応じて、そのタスクが割り振られるべきだと思われます。