資格・免許取得費用は会社負担(経費)にするべき?合格した場合のみ負担する?
最終更新日:2024.10.24
目次
試験に合格しなければ費用を負担してもらえない?
スキル向上のために必要な公的免許や資格については、合格・取得した場合は会社が支払うとしています。
取得までは自己負担です。
この場合、違法でしょうか。
法的には会社に負担する義務は無い
その業務を遂行するに必要な公的免許・資格を会社命令で取得する場合、業務上必要な費用を従業員に負担させることが「違法」であるという法律は明確に存在していません。
さらに通常、免許・資格は個人に付帯・付与されるもので、退職に伴い資格を失うものではないでしょう。(ルート営業の運転免許証をイメージするとわかりやすいと思います。)
よって、会社が負担しなければならない義務はありません。
会社が費用負担を「合格・取得してから」としているのは、「費用を出して取得させてもすぐに退職してしまった」「費用は出したが、合格できない」などを回避するための理由であれば妥当だと考えられます。
資格取得にかかる学習時間を業務として認めるべきか
「厚生労働省:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン 2.労働時間の考え方」の「参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間」において、労働時間として認めるとしています。
判例では労働時間として認める場合・認められない場合それぞれがあり、会社の関与度により異なります。
資格取得を義務付けている場合は会社による関与は強いと考え、労働時間内として認められる例が多いです。
業務遂行に必要なスキルかどうか
資格・免許取得の他にも、「海外勤務のための英会話」「経理や財務担当者の簿記」など業務に必須な場合は、全額会社の費用負担が望ましいでしょう。
さかえ経営では、人事制度(等級制度・評価制度・賃金制度)の構築支援を行っています。
スキルや能力、部長や課長等の役職に応じた評価・格付けを明確にすることで、キャリアパスが明確になり、能力向上のモチベーションアップにつなげます。
「社員の能力不足や教育のやり方がわからない」といった、お悩みをお持ちの企業の方、まずお気軽にご相談ください。
業務に必要な免許・資格であれば会社が負担するのが妥当
費用負担の法的義務がないのであれば、支払わなくてもよいかという論点となるかと思います。
公的免許・資格の取得を会社の業務命令として発する場合には、通常使用者(会社)側が費用を負担します。
会社は採用した社員の能力を引き出して働いてもらい、会社の利益を得ます。
この能力を引き出すことは、教育訓練をすることにつながります。
業務に必要な公的免許・資格の取得は、社員のスキルを上げるための教育訓練に相当するといえるでしょう。
よって会社の経費として負担するのが妥当です。
もう一点、「業務に必要な」免許・資格を業務命令で取得するという点でも、働くにあたって必要な経費としている交通費と同様、会社の経費として考えるのが妥当であるといえます。
「業務に必要な」免許・資格の取得ではない場合は、教育訓練にも該当しませんので、支払う必要はありません。
また、会社が免許・資格の取得にかかる経費としてどこまでを支払うのかですが、免許・資格取得試験費用の他、勉強する教材・対策講座の受講などの費用については、「それがないと合格できない(合格率が高くなる)」レベルで決めればよいでしょう。
何度受けても合格しないこともある場合は「○回まで費用を負担する」という考え方もできます。
資格をとってすぐ辞められてしまうリスク
会社が負担した後に退職した場合に、費用返還を求められるかについては、労働基準法第16条(賠償予定の禁止)で、「使用者は労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」に抵触しますので、費用返還を求めることはできません。
どのような場合に会社負担かを規定しておく
規程やルールを作成する上では、以下を決めます。
(2)取得または自己啓発を支援する免許・資格(一覧)
(3)対象者
例)入社〇年後・勤続〇年以上、業務と連携する部署に在籍している必要性の有無、所属長の承認や推薦の有無(年数を達していれ
ば、誰でもよいのか)
(4)申請方法・結果の報告
(5)受験・講座受講に必要な時間の勤怠扱い(出勤・有給休暇・特別休暇)
※業務命令または自己啓発の違いにより分けることも可
(6)費用負担(全額負担か補助、一部負担か)
受験料・資格登録料・資格更新費用・受講料・参考書等・交通費等
※業務命令(全額負担)または自己啓発(補助)等、違いにより費用負担を分ける
(7)スキルマップ・人事記録への登録、技能・資格手当支給や昇給昇格の条件など人事評価面の取り決め
就業規則の相対的必要記載事項である職業訓練に関する事項となるので、就業規則も連動して改定します。
手当等の支給があると賃金規程や人事考課規程などにも連動します。
かかった費用は領収書をとってもらうようにする
合格・取得した場合に会社が支払う場合、支払方法により給与課税となります。
報奨金やお祝い金で支給すると、給与課税に該当します。
後払いであっても、会社名で請求書・領収書を受け取るよう指示してください。
自己啓発への支援などで、一部支給とする場合にも給与課税に該当します。
また、対象者を選定する、または希望者を募る場合において、キャリアパス等があると、明確になりますが、それがなかったとしても、個々の業務の役割明確にすると同時に、それを元に、個々のスキルを把握することにより、自発的に取り組むような仕掛けを作ることにより、モチベーションアップを図ることも必要かと考えらえます。
社員のスキルアップの支援には「等級制度・評価制度・賃金制度」の構築が必要
等級制度とは
人材の格付けを決める制度で、以下のようなものがあります。
- 職務遂行能力(スキル)に応じて格付けされる職能資格制度
- 部長・課長等のポストに応じて格付けされる役職等級制度
- 社員に任せる役割に応じて格付けされる役割等級制度
- 担当する仕事・職務・業務によって格付けされる職務等級制度 など
格付けというとネガティブイメージもありますが、評価基準があいまいであるために、従業員の不満が溜まったりモチベーションダウンしてしまう事を避け、「会社の中で何をすれば高く格付けされるのか」を明確にする制度です。
評価制度とは
個々人の1年間の活動の成果・行動等を評価する制度です。
まずは評価するポイントが結果なのかプロセスなのか?行動なのかスキルなのか?など評価する視点を明確にします。
その上で、目標管理ツールの導入や、具体的な評価方法の策定を行います。
賃金制度とは
基本給、賞与、その他の手当、福利厚生、退職金などの賃金に対して、「支払い主旨を明確にする」ことで、会社として評価する人材の方向性を示す制度です。
従業員の役割・スキル等に支払う場合や、家族・住宅等に対して支払う場合等、何に対して支払うのかを明確にすることで「会社としてどんな人材を求めているか」のメッセージとなります。
さかえ経営では、人事制度(等級制度・評価制度・賃金制度)の構築支援を行っています。
スキルや能力、部長や課長等の役職に応じた評価・格付けを明確にすることで、キャリアパスが明確になり、能力向上のモチベーションアップにつなげます。
「社員の能力不足や教育のやり方がわからない」といった、お悩みをお持ちの企業の方、まずお気軽にご相談ください。
人材マネジメント上のポイント
責任感のある社員を育成することはひとつのテーマであるかと思います。
しかし、過度になりすぎると、他の人に対しても悪影響を与えてしまいます。
責任感を醸成しつつも、チームの一員としての職務・役割を定義し、特定の人材に業務が集中しないように心がけると当時に、1on1等の機会を積極的に持ち、各社員の心身の状況・業務負荷等を観察する必要があります。
また、別のアプローチとして、業務の効率化やカイゼンの意識付けを行うことを目的とした、ワークショップや研修、さらには目標設定等も想定されます。
いずれにしても責任感を損なうことなく、業務がカバーできる体制の構築、また、スキルアップ等の期待、また、体調優先の向けを伝える必要があります。
採用時において、どのような人材を求めているかどうかを明確にし、その要件に合致した人材を採用することが求めれます。
個人の特性としては、具体的には行動特性が挙げられます。
この個人の行動特性と現在の業務において求める行動特性とのギャップが高い場合にはもしかするとその仕事に向いていない場合があります。
また、会社・業務に対して、取り組み姿勢が高いのか、それとも単に生活のためだけに働いているのかという本人の志向性も重要になってきます。
欠員にせよ、増員にせよ、採用予定者が従事することが予定されている業務等を明確にすると同時に、その到達レベルを可視化していくことにより、その内容に沿った質問等をすることが可能になります。