業務中に新型コロナウイルスに感染したら労災適用?その基準と対応方法を解説
最終更新日:2024.10.24
目次
業務中に新型コロナウイルス感染した場合、労災は適用される?
業務中に労働者が新型コロナウイルス感染した場合、労災は適用されるのでしょうか。
業務に起因して発症したものであると認められる場合は、労災給付の対象
原則的な考え方としては、当該事業所の所在地、業態、感染リスクの内容・程度、業務等にもよりますが、業務に起因して発症したものであると認められる場合は、労災給付の対象になります。
法理論としては、自然現象の(地震、落雷等)による場合は、業務起因性が認められないため、労災給付の対象にはなりません。
一方で、感染患者や遺体に濃厚接触する可能性が高い、医療従事者、医学検査機関、葬儀関係者、維持隔離場所とされた宿泊施設に働く労働者であれば、給付の対象になる可能性が高くなります。
しかし、これらの対象者でなくても、営業先、受付窓口業務、事業継続を要請された店舗、コンビニエンスストア等の小売業のレジ担当者などで、新型コロナウイルスの感染が業務遂行上にあったことが証明されば労災給付の対象になる可能性があります。
例えば、「複数の感染者が確認された労働環境下での業務」「顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務」が挙げられます。
しかし、「クラスターが発生している、繁華街の接待を伴う飲食店等の利用」による感染の場合、特段の事情が証明されない限り、業務起因性が推定されると解されます。
労働者を守る姿勢を見せるためにも、労災を認めるメリットはある
コロナ労災通達に従い、特に、「医療従事者等」や、「医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたもの」だけでなく、「感染リスクが相対的に高いと考えられる」「複数の感染者が確認された労働環境下での業務」「顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務」に従事していた労働者については、新型コロナウイルス罹患については積極的に労災保険の利用を進めるべきと等の通達があります。
厚生労働省の指針・通達等においては、職種・業種が限定されていますが、これらの業種・職種に従事していなくても、業務起因性等を考慮し、その結果、会社として、労災を認め、申請する旨の案内を出す必要はあるかと思います。
同時に、集団での会食の禁止や咳エチケット等の徹底、会話時のマスク、感染しやすい場所への回避、及びその環境づくりが前提にある旨を周知することが不可欠です。
万が一、感染したとしても、会社の環境なのか、労働者個々のモラルの問題なのかが区分できないばかりか、最悪の場合、安全配慮義務違反等のリスクも考えらます。
また、感染のリスクを感じながら業務を行っている労働者に対して、労災等何も手当しないということが浸透するとモチベーションのダウンばかりか、会社に対する不信感が増し、将来的な離職等に繋がるばかりか、業務に対して積極的に行わなくなる可能性もあります。
過度に労災給付を認める必要はありませんが、「会社は労働者を最大限守ろうとしている、もしくは守っている」姿勢を見せることが不可欠です。
新型コロナウイルスなど、感染症に対する注意および対応6か条
新型コロナウイルスの罹患のケース等を規程等に明記する必要はありませんが、以下の内容について、通達等の形で周知する必要があるかと思います。
1)日常における感染防止策の徹底
2)社内において換気、一定の距離、マスク着用等のルールの徹底
3)不要不急の外出・外回りの抑制、リモート対応の検討
4)感謝者が発生した時の対応(休暇等の取り扱い)
5)家族が感染した場合の対応(休暇等の取り扱い)
6)濃厚接触者になった時の対応(休暇等の取り扱い)
現時点ではすでに何かしらの対応を行った実績があるかもしれませんが、時期により対応の相違はやむを得ないにしても、人による対応のバラツキがないように配慮する必要があります。
また、これらの対応をしたが、万が一、感染・濃厚接触者になった場合は、有給の付与は勿論ですが、最大限の配置を行う旨を明記すると同時に、一方で、通達等の事項を守らない場合は配慮をしない、もしくは最悪、懲罰の対象することも含みを持たせた方が良いかと考えています。
いずれにせよ、刻一刻と変化する社会状況に対して、発生ベースではなく、できるだけ「先回りして」対応の検討をすることで、労働者が安心して働くことができる環境を提供することになります。
感染防止体制の整備と従業員への感染リスク回避行動の徹底は不可欠
出来る限りの感染防止体制の整備と従業員への感染リスク回避行動や感染予防の推奨を徹底することが不可欠です。
会社の規模ごとに対応は異なるかもしれませんが、安全衛生管理者の役割の見直しと権限の強化、各種安全衛生委員会等による進捗・周知状況の確認等を行うことにより、全社一丸となって対応すること可能になります。
この問題は、特定の個人の考え方に依存するのではなく、ソーシャルスタンダートに準拠して対応することにより、業務中に罹患等の万が一の事態においても、対応がスムーズになるばかりか、労災給付等の行政の対応のスピードも異なってくると思われます。
日々の行動までは管理しすぎかもしれませんが、業務中の衛生環境・ソーシャルディスタンスの徹底、注意喚起・指導等の管理者は勿論、安全衛生管理者が中心になってチェックする体制を作ることが必要です。
人材マネジメント上のポイント
日々の安全衛生管理体制の構築が不可欠だと考えています。形式的な安全衛生委員会の開催のみではなく、それをいかにして運用までつなげることができるのかがポイントになります。
具体的には、各管理者(安全衛生責任者等)に対して、対策の必要性の周知・徹底は勿論、その内容が実現されなかった場合にもたらせるリスク、そのリスクインパクトの度合いもあわせて説明することが必要です。
各現場において、PDCAサイクルをまわすことが必要です。
実施しなければならない内容とその目的の理解、現場に落とし込むための体制作り、実施状況のチェックと不徹底の場合における改善アクションの検討、指南等の流れになるかと思います。
また、それらの状況を本社・経営、人事等にフィードバックすると同時に、必要に応じて、改善等の進言を行うことも求められます。
会社全体としては、浸透するまでに様々なアプローチを行うことにより、安全衛生体制の実現に向けての取り組みをしていくことになります。