ADHDなど発達障害が疑われる社員は解雇(クビに)できない?どう教育する?
最終更新日:2024.10.24
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能力は高いが急にキレるなど、発達障害が疑われる社員
急にキレたり、イライラしたり、集中力が続かずウロウロ動き回るなど、発達障害が疑われる社員がいます。
能力は高く成果を出していますが、行動が原因で周りともうまくいかず、同じ部門の従業員から不満が出ています。
発達障害という診断が出ているわけでもなく、本人も自覚がありません。
診断が無いのであれば病気と決めつけず、まず病院受診を促す
医師の診断がついていない状況であれば、本人に対し、特定の病気であると決めつけないことです。
もしかしたら、重要な病気が隠れている可能性もあります。
社員のメンタルヘルス等の健康状態の不良が疑われる場合、会社として、社員へ病院受診を促すことは、安全配慮義務の一環として行う義務であると考えられます。
ただし、メンタルヘルスの不調は通常の病気と異なる側面があることは念頭に置いていただいたほうがよいでしょう。
以前よりも精神的疾患に関する社会の理解は進みましたが、社会や個人が否定的な印象を持っていることも否めません。
(精神的疾患については、社会も個人もいまだに否定的な印象を持っており、それを明らかにすることは不名誉であるととらえていることが多いことなどの点でプライバシーに対する配慮が求められる疾患であり、その診断の受診を義務づけることは、プライバシー侵害のおそれが大きいといわざるを得ない。名古屋地判平成18.1.18労判918号65頁・富士電機E&C事件)
特に病気ということもなく、本人の能力不足の問題であれば、教育的指導や、懲戒、場合によっては解雇も検討せざるを得ないでしょう。
さかえ経営は、解雇に関する問題解決の支援をいたします。
社会保険労務士と経営コンサルタントが、法律と経営の両方の視点から、解雇の問題の解決を支援いたします。
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まずは注意して改めてもらう。改善されない場合は、査定や懲戒で対応
急に怒り出したり、イライラするウロウロするなどという行為は、周囲の人に対する士気低下にもつながります。
このような事態はたとえ会社全体としては小さく見えても、積み重なることによって、会社としても大きな問題に発展してしまうこともあります。
何度注意しても改善が見られなければ、本人への評価(査定)、もしくは教育的指導(懲戒)でもって対応していくことが良いかと考えられます。
場合によっては本人がよりの能力を発揮しやすく周囲ともうまくできそうな場所へと配置転換することも検討するのも良いでしょう。
職場の風紀や秩序を乱す行動には、懲戒による教育的指導を
懲戒は、職場の風紀を乱したり、企業の秩序を著しく乱したもの等に対して行われる、教育的指導をするための制裁罰です。
懲戒には、譴責、言及、出勤停止、降格などいくつか種類がありますが、就業規則に明記しておくことが重要です。
また、本人に対して注意をする場合、口頭のみの注意ではなく、文書で5W1Hで事実を特定し本人に反省を促すようにし、文書化・保存していくことが重要です。
もちろん、懲戒処分を決定する前には、本人の言い分を聞くことも必要です。
会社側が、教育的指導を積み重ねたにもかかわらず、本人の勤務態度に改善が見られず立ち直る見込みもない場合には、本人の能力不足として、解雇について検討せざるを得ません。
しかし、「解雇」を行おうとする場合、日本では、「解雇」について、厳しく統制されているため、判例に照らして、慎重に行う必要があります。
ポイントとしては、「解雇」を行おうとしている社員に対して、どのくらい教育的指導を行ったのか、その社員に勤務態度の更生の見込みがあるのかがあげられます。
能力不足を理由とした解雇が認められる条件としては下記の3つが挙げられます。
①十分な教育的指導を行った
②他の社員と比べて能力が極めて低い
③勤務態度の更生や能力向上の見込みがない。
ことが重要です。
「懲罰事由」「懲戒処分」の種類を就業規則に明記する
です。
懲戒は、あくまで「教育的指導」として行うものです。
会社のその時の気分で下していいものではありません。
あらかじめ「懲罰事由」と「懲戒処分」の種類を就業規則に明記しておくことがポイントです。
また、
でしょう。
「解雇」に関しては、裁判所の権利濫用法理により、労働者が守られている点もあるため、慎重に運用する必要があります。
「解雇」に至るまでの「教育・指導」は、その社員に対して口で注意するよりも、その場で「指導書」や「警告文書」を出し、証拠として保存しておくことが重要です。
人材マネジメント上のポイント
採用時において、どのような人材を求めているかどうかを明確にし、その要件に合致した人材を採用することが求めれます。
しかし、職務経歴書等から確認することが通常ですが、中には誇張表現等があり、的確に反映できない可能性があります。
そのため、身元調査は一番、近いと思われますが、難しい側面も多々あります。
解決の方向性としては、以下の2点かと思われます。
1)求める人材像を行動特性・取り組み姿勢から可視化すること
個人の特性としては、具体的には行動特性が挙げられます。
この個人の行動特性と現在の業務において求める行動特性とのギャップが高い場合にはもしかするとその仕事に向いていない場合があります。また、会社・業務に対して、取り組み姿勢が高いのか、それとも単に生活のためだけでに働いているのかをという本人の志向性も重要になってきます。
2)従事して欲しいジョブを明確にすること
欠員にせよ、増員にせよ、採用予定者が従事することが予定されている業務等を明確にすると同時に、その到達レベルを可視化していくことにより、その内容に沿った質問等をすることが可能になります。
職場の風紀・秩序を乱してしまう従業員は、懲戒や解雇の前にまず「会社からどのような行動が求められているか」を明確にし理解させる取り組みが必須です。
さかえ経営では、「あるべき人材像」を具体的に定義するための支援サービスを行っております。分析ツールを用いた従業員の診断を行い、社員の教育や適材適所の配置などのサポートを行います。