退職勧奨とは?会社都合退職の進め方・トラブル回避のポイントを解説
最終更新日:2024.10.24
目次
退職勧奨とは?
退職勧奨とは、企業が従業員に退職を促す説得活動のことで、従業員の同意を得て退職届を提出させることを目的とします。
このプロセスは、企業と労働者双方の合意に基づく合意解約と見なされ、一方的な解雇とは異なります。
しかし、退職勧奨や退職勧告は従業員にとっては解雇や退職強要と感じられることがあり、
場合によっては企業が慰謝料の支払いを命じられるリスクも伴います。
特に、退職勧奨の過程で不適切な言動があった場合、退職が無効とされ、企業に対して多額の支払いが命じられる事例も存在します。
法的には、退職勧奨自体は違法ではなく、問題のある従業員に対して行うことが可能で、
雇用のミスマッチが生じた際の円満な解決手段として位置づけられています。
退職勧奨による退職は会社都合と自己都合のどっち?
退職勧奨による退職は、原則として「会社都合退職」として扱われます。
これは、退職勧奨が企業から従業員に対して行われるものであり、従業員が自らの意志だけで退職を決定したわけではないためです。
会社都合退職と自己都合退職の違い
会社都合退職と自己都合退職の大きな違いは、雇用保険の受給条件と受給期間です。
退職勧奨は、会社と従業員が話し合い、合意の上で雇用契約を終了させる手法です。
これにより、従業員にとって失業保険の受給条件が有利になります。
退職勧奨を受けて退職すると、退職は会社都合退職として扱われ、特定受給資格者として認められます。
恒常的に設けられている早期退職優遇制度以外で退職した場合は、
申し込みから7日間経過すると雇用保険の基本手当を受給でき、全体の受給期間も長くなる傾向にあります。
自己都合退職の場合、雇用保険の基本手当受給開始までには、
申し込みから7日間と3か月の待機期間が必要で、受給期間も短くなる傾向にあります。
退職勧奨の理由の例
退職奨励の理由としては、以下の例が挙げられます。
大きく分けて、従業員側の理由と企業側の理由とがあります。
従業員側の理由
- 従業員の能力不足
ミスの頻発、顧客からの苦情、営業成績の不良、マネジメント能力の不足などが退職勧奨の理由となります。 - 勤務態度不良
業務の指示に従わない、遅刻や欠勤を繰り返す従業員への退職勧奨が該当します。 - 周囲とのトラブル頻発
協調性が欠け、同僚や上司とのトラブルが多い従業員、パワハラやセクハラをする従業員に対する退職勧奨です。 - 信頼関係の喪失
機密情報の持ち出し、就業規則違反、上司や経営陣への誹謗中傷など、信頼関係が築けない場合の退職勧奨です。
企業側の理由
- 経営上の事情
営難、不採算部門の廃止、事業内容の転換などによる人員整理目的の退職勧奨です。
会社が退職勧奨するメリット
退職奨励のメリットは、解雇に比べて企業側の法的リスクが小さくなることです。
解雇には正当な理由が必要であり、不当解雇で訴えられるリスクが伴いますが、
退職勧奨は従業員の同意のもとに行われるため、このようなリスクが低減されます。
退職勧奨を適切に行うことで、従業員との間で揉める可能性が低くなり、
最終的に従業員との合意に至った場合は、雇用は円満に終了し、後日、退職勧奨の正当性を問われることがなくなります。
退職勧奨を自己都合扱いとした場合の会社側のデメリット
会社側のデメリットとして、従業員からの損害賠償請求のリスクがあります。
これは自己都合退職が従業員にとって失業保険給付などで不利になるためです。
訴訟に至った場合、会社は認定された損害賠償を支払う必要があり、対応には多くの時間を要することになります。
退職勧奨の進め方
退職勧奨の適切な進め方は、以下のようにまとめられます。
適切なプロセスと公正な扱いを心がけることが、トラブルを避ける上での鍵となります。
-
社内共有
退職勧奨の方針を会社内で共有し、幹部や直属の上司との意見を調整し、会社としての総意を形成します。 -
理由の整理
退職勧奨の理由を整理し、メモを作成して、説得的かつ客観的に説明できるように準備します。 -
個別面談の設定
対象従業員を個室に呼び出し、プライバシーを尊重した環境で面談を行います。 -
退職の意向伝達
従業員に退職してほしいという会社の意向を、適切に伝えます。 -
検討期間の提供
退職勧奨について即時の回答を求めず、検討期間を設けることで、従業員が家族と相談する時間を確保します。 -
条件の交渉
退職に応じる場合の条件、例えば退職時期や金銭面の処遇について話し合います。 -
退職届の提出
合意に至った場合は、退職届の提出を求めます。
退職勧奨をする場合の注意点
企業は退職勧奨を行う際は、法的な側面だけでなく、倫理的な考慮も重要です。
- 強要と解雇の脅しを避ける
「退職届を出さなければ解雇する」という脅しは、裁判所で退職合意が無効とされるリスクがあります。
特に、解雇が不当とされる可能性のある場合、このような発言は避けるべきです。
違法な退職勧奨は、従業員の復職や多額の損害賠償の支払い、さらには強要罪の成立につながるリスクを伴います。 - 適切なコミュニケーション
退職勧奨や退職勧告を行う際は、適切な言葉選びが重要です。
解雇を示唆するような言動は、後に企業が敗訴する原因となり得ます。 - 従業員の退職拒否権の尊重
従業員は退職勧奨を拒否する権利があることを念頭に置いておきましょう。 - 頻度と方法
長時間や多数回にわたる退職勧奨は、退職強要と判断される可能性があります。
面談の頻度や時間には常識的な限度を設けることが重要です。
退職勧奨を繰り返すことで、パワハラや不当な扱いと見なされる可能性があります。 - 配置転換や仕事の取り上げ
退職を目的とした配置転換や仕事の取り上げは、退職強要と見なされる危険があります。
嫌がらせ目的でなくとも、誤解を与えないよう慎重に十分な説明が必要です。 - 録音の検討
退職勧奨の会話内容については、双方の保護のため、録音を検討することも有効です。
録音の際は、法的な要件に留意しながら行いましょう。
退職勧奨は、従業員との円満な関係を維持しつつ、企業のニーズに対応するための繊細なプロセスです。
適切な準備と実施により、法的リスクを避けつつ、双方にとって最適な解決を目指しましょう。