【専門家が回答】賃金支払いの5原則とは?守らなかった場合の企業罰則まで解説!
最終更新日:2024.10.24
お客様
社労士:
森田 征
「賃金支払いの5原則」は、賃金が労働者に確実に、そして適切な方法で支払われることを保証するために、労働基準法に定められています。
また、「賃金支払いの5原則」のいずれかに違反した場合は、最大で30万円以下の罰金刑などが科される可能性があります。
目次
賃金支払いの5原則とは?
賃金支払いに関する労働基準法第24条に基づく「賃金支払いの5原則」と、それらの原則における例外について、以下に簡潔にまとめます。
賃金支払いの5原則
2. 直接払いの原則: 賃金は労働者本人に直接支払われなければなりません。これは、賃金支払者と労働者との間に他人が入ることで、賃金の一部が横取りされることを防ぐ目的があります。
3. 全額払いの原則: 賃金は全額を労働者に支払わなければなりません。不当な控除は禁止されています。
4. 毎月1回以上の原則: 賃金は毎月少なくとも1回以上支払われなければなりません。
5. 一定期日払いの原則: 賃金は一定の期日ごとに支払われなければなりません。
賃金支払いの原則における例外
・直接払いの原則の例外: 労働者の使者に支払う場合や、裁判所の決定による賃金差し押さえがある場合です。
・全額払いの原則の例外: 法令に基づく社会保険料や源泉所得税の控除、労使協定による社宅賃料などの天引きが認められます。
・毎月1回以上の原則と一定期日払いの原則の例外: 臨時に支払われる賃金(例:賞与、特別手当)は、毎月1回以上支払わなくてもよく、一定の期日を設けずに支払われる場合があります。
また、賃金支払日が休日の場合の前営業日翌営業日への調整も認められます。
これらの原則と例外は、賃金が労働者に確実に、そして適切な方法で支払われることを保証するために設けられています。企業や労働者は、これらの原則に従って賃金支払いを行う必要があります。
守らなかった場合の罰則は?
「賃金支払いの5原則」違反に対する罰則
労働基準法第24条に基づき、賃金支払いの5原則のいずれかに違反した場合、以下の罰則が科される可能性があります。
2. 割増賃金未払いの罰則: 時間外労働や休日労働に対する割増賃金が未払いの場合は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が更に重くなることがあります。
3. 具体的な違反例:
・通貨払いの原則違反: 自社株式で賃金の一部を支払った場合。
・直接払いの原則違反: 労働者ではなく、その親の口座に賃金を支払った場合。
・全額払いの原則違反: 仕事のミスに関する損害賠償金を賃金から一方的に控除した場合。
・毎月1回以上の原則違反: 資金繰りの都合で賃金の支払いを1回スキップした場合。
・一定期日払いの原則違反: 支払日を明確に決めず、実際の支給日がバラバラだった場合。
その他注意するポイント
休業手当、残業代、減給の制限など労働基準法内の他の規定に違反した場合も、罰則の対象となることがあるため、注意が必要です。
また、違反した事業者は、労働基準監督署による行政指導を受ける可能性があります。賃金の未払いがあった場合、労働者は賃金支払日の翌日から発生する遅延損害金を請求できます。
これらの罰則は、労働者の生活と権利を保護するために設けられており、賃金支払いに関する法的義務を企業に明確に認識させることを目的としています。事業者は「賃金支払いの5原則」を厳守し、違反しないように適切な管理と対策を講じる必要があります。
賃金支払いに関するその他の規定は?
賃金支払いに関する詳細なガイドライン
賃金支払いには、「賃金の支払い5原則」を越える、いくつかの重要な規定が存在します。ここでは、残業代・割増賃金、遅刻・早退時の取扱い、休業時の賃金支払い、そして減給について、簡潔に説明します。
残業代と割増賃金
残業代は、定められた労働時間を超えた労働に対する手当であり、基本的には残業時間に対して25%増しの賃金が支払われます。これに対し、割増賃金は、法定労働時間を超えた労働に対して支払われるもので、一般に残業代とは異なります。
具体的には、労働基準法に基づき、1日8時間、週40時間を超えた労働に対して支払われ、計算は1時間あたりの賃金に所定の割増率を乗じる形で行われます。
遅刻と早退の扱い
遅刻や早退に関しては、労働が実際に発生していないため、その分の賃金を支払う必要はありません(ノーワーク・ノーペイ原則)。しかし、遅刻や早退の時間だけでなく、それ以上の賃金を差し引くことは違法です。
休業時の賃金
休業時の賃金に関しては、有給休暇、慶弔休暇、産前産後休業、介護休業、休職期間といった様々なケースで発生する可能性があり、それぞれの扱いは企業の就業規則に基づきます。
特に、企業側の都合による休業時には、労働者に対して平均賃金の60%以上の休業手当が支払われるべきです。
減給の規定
減給については、労働基準法により、1回の減給は1日分の平均賃金を超えてはならず、一定期間内の総賃金の10%を超える減給も禁止されています。勤務態度に問題がある場合、一定の制約の下で減給が可能ですが、減額が一定の賃金を下回ることは違反とされています。
このように、賃金支払いに関する規定は複数あり、各企業はこれらのガイドラインに従って適切に賃金を管理する必要があります。
給与計算は「計算代行(アウトソーシング)」も視野に
給与計算は複雑な上に、従業員数が増えるほど難しく、ミスが許されない作業です。さかえ経営では、東京エリアの企業(200〜1,000名規模)における、給与計算(労務)業務のサポート・代行を行っています。
給与計算のやり方や、計算代行(アウトソーシング)をご検討中の方は、まずはお気軽にご相談ください。
「賃金支払いの5原則」とは何ですか?
守らなかった場合の罰則はありますか?