年俸制の社員の残業代は支払うべき?就業規則で規定を明確にしておく事がポイント
最終更新日:2024.10.24
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高額な年俸制の社員から残業代の請求。支払う義務はある?
年俸制の社員から残業代を請求されました。
年俸制であっても残業代を支払う必要があることは認識していますが、時間とは関係ない仕事をしており、年収は1000万円を超えております。このような場合でも支払う必要があるのでしょうか。
管理監督や裁量労働等のみなし労働時間制の対象者なら、支払う必要がない
年俸制が管理監督や裁量労働等のみなし労働時間制の対象者である管理職のみを対象としている制度であれば、支払う必要がないと考えられています。
しかし、
になります。
年俸は参考程度であり、年俸の金額自体が管理職として相当の賃金かどうかはあまり考慮されないと考えた方が良いと考えて下さい。
しかし、当該社員の業務内容や職務権限等に、さらには年俸額があまりにも高い場合、みなし労働等が適用される管理職の立場であるとみなされる場合には支払いの必要がなくなる可能性があります。
年俸制だからといって、企業が残業代を支払わない理由にはならない
「年俸制だから残業代が出ない」と間違った認識も広がっていますが、
管理監督者やみなし労働時間制の適用が否認されると時間外労働のコストが発生します。
時間外のコストは、人数・金額によっては億単位の金額になってしまい、会社の財務諸表のコストインパクトが高い場合があります。
また、
そのような状況になれば、「年俸制」の意義すらなくなってしまう可能性があります。
就業規則に、みなし労働の規定を記載。該当社員から同意をもらう
就業規則において、管理監督者やみなし労働の規定を記載し、該当する社員が同意する旨の協定書等の提出も同時に行う必要があります。
また、支払われる年俸の内訳として、何時間分の時間外労働分が含まれているかを規程及び労働契約書等に明記しておく必要があります。
また、
時間外労働対象者と対象でない人では、残業代の取り扱いは異なる
時間外労働対象者とその対象でない人の残業代の取り扱いは異なります。
現場での運用としては、時間外労働対象者でない社員は、勤怠管理を行いつつも、業務・就業管理等をしないことが良いのではないかだと思われます。
万が一、時間外請求をされた場合、業務・就業管理等の制約を受けないことが「みなし労働」の適用要件になっているからです。
しかし、昨今の法改正があり、ある程度の管理が義務付けられています。あまり厳格すぎる管理は避けるべきですが、
そもそも年俸制が会社の労働状況と合っているか再検討を
年俸制は、賞与という人件費の調整弁を持たず、単純に年間の金額を12等分して、毎月支払うものになります。
ある意味で非常に単純明快な制度といえます。
また、違う箇所で触れましたが、管理監督者・裁量労働等のみなし労働時間制の適用要件を意識していないと、時間外手当が発生してしまうため、高度な専門職に限定して導入する方が望ましいと考えています。
給与計算においても、欠勤すると欠勤控除を行う必要があり、有給制度の規定も適用されます。日本の労働法の現状を考えると真の意味での導入は難しいと考えています。