社員の社内メール閲覧は問題なし?会社の規定とプライバシー権のバランス
最終更新日:2024.10.24
目次
社員の社内メールの監視・閲覧はプライバシーの侵害?
社員の社内メールの閲覧をすることに対して問題はありますか。
社内メールの閲覧は一応できるが、プライバシー権を侵害すれば違法
社内メールの閲覧にも、いろいろな態様のものがありますが、大きく分けると、
①特定の不正(懲戒事由)等を調査するための閲覧と、
②不正発見・不正抑止のための探索的なモニタリングがあります。
社内メールに使用するPCや情報端末等は、会社が貸与ないし費用負担しているものでもあるものの、通常は自分しか使用しないことが多いため、各社員のプライバシー権との関係で、社内メールの閲覧の可否が問題になります。
会社は私的メールの閲覧についてできるとしながらも、会社側によって、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合には、プライバシー権を侵害するものとして違法とする判例があります。
監視事実を隠す、権限外の人が閲覧するなどはプライバシー権の侵害にあたる
F社Z事業部事件(東京地判平13・12・3労判826号76頁)では、会社のPC及びネットワークを使用した私的メールについて、外部からの連絡に適宜即応するために必要かつ合理的な限度の範囲において社会通念上許容されるとした上で、「監視の目的、手段及びその態様等を総合考慮し、監視される側に生じた不利益とを比較衡量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合には、プライバシー権の侵害となる」と判示しました。
社会通念上相当な範囲を逸脱する場合の例として、
①社内の権限外の人の閲覧
②監視の事実の秘匿
③合理的必要性の欠如
などを挙げています。
会社が合理的必要性に基づいて閲覧やモニタリングをする旨をルールに明記
私用メールの閲覧やモニタリングを実施するに当たっては、まず、私用メールの使用に関するルールを定めるとともに、会社が一定の合理的必要性に基づいて閲覧やモニタリングをする旨もルールに明記し、社員に周知しておくことが必要です。
また、閲覧やモニタリングの具体的方法や実施主体、責任者等についても具体的に明記しておくことも重要です。
そして、定期的にモニタリングの実施状況について、チェック・監視を行うことが望ましいでしょう。
一方で、担当部署の人員については、勝手に実施等しないように十分な教育が求められます。
限度を超えた私的使用が発覚した場合は、懲戒処分が可能
私用メールは、社員の職務専念義務、会社の施設利用権との関係で問題になります。
会社における職務の妨げにならず、会社の経済的負担も極めて軽微なものである場合には、社会通念上許容されますが、限度を超えた私的使用が発覚した場合には、懲戒処分の検討対象になります。
では、限度を超えた私的使用が発覚した場合には、懲戒処分は可能だと考えています。
私的メールを理由に懲戒処分を実施する場合には、私的メールの禁止をどこまで徹底していたか、注意指導したことがあるか、私用メールの回数や内容が社会通念上限度を超えているか、当該社員の地位や役職などの諸事情を勘案して決定する必要があります。
人材マネジメント上のポイント
私用メールや職務怠慢等については、その管理も勿論ですが、従業員のモチベーション等も重要になってきます。
人材マネジメントにおいては、そのモラルをどう形成するかだと思います。
そのためのマネジメントは、個人の特性や会社・業務に対する志向と、会社が与えるものとのギャップを埋めていくことだと考えられます。
個人の特性としては、具体的には行動特性が挙げられます。
この個人の行動特性と現在の業務において求める行動特性とのギャップが高い場合にはもしかするとその仕事に向いていない場合があります。
また、会社・業務に対して、取り組み姿勢が高いのか、それとも単に生活のためだけでに働いているのかをという本人の志向性も重要になってきます。
また、等級制度の適切な構築が必要になります。
本来、管理監督者でないものを無理矢理、管理者として認定しようとする傾向がまだ残っていますが、等級制度の構造が年功的になってしまうリスクは勿論、場合によっては、すべての管理者要件が否認されてしまう可能性があります。