採用面接でしてはいけない質問と注意点:差別や個人情報には気を付ける
最終更新日:2024.10.24
目次
採用面接官の不適切な発言について学生から苦情。採用面接で避けるべき質問とは?
A社は現在、採用選考を進めており、学生との面談を実施しています。
先日ある大学から「貴社の面接官から不適切な質問を受けた学生がいる」との苦情が寄せられました。
具体的な質問内容は明らかにされておらず、面接担当者も「特に心当たりはない」としています。
採用面接で避けるべき質問や注意すべき点について教えてください。
応募者の適性・能力とは関係のない質間が必要か再確認
男女の性別にかかわる質間、応募者の適性・能力とは関係のない事項に関する質間をする際は、
- 直接差別・間接差別の禁止
- 合理的理由のない質問の禁止
- 個人的なことや思想信条にかかわる質問の禁止
に十分な配慮をした質問を心がけるべきでしよう。
直接差別はもちろん、間接的に差別発言をしていないか注意
(1)性別による差別の禁止
均等法は、労働者の募集および採用において、性別による差別を禁止し、男女平等な取り扱いを求めています(同法5条)。
性別による差別として具体的には、
①募集・採用の対象から男女のいずれかを排除すること
②募集・採用の条件を男女で異なるものとすること
③採用選考において、能力・資質の有無等を判断する方法や基準について男女で異なる取扱いをすること
④募集・採用にあたって男女のいずれかを優先すること
⑤求人の内容の説明等情報の提供について、男女で異なる取扱いをすること
が禁止されています(直接差別)。
(2)合理的理由がない質問の禁止
また、業務上の必要性などの合理的理由がないにもかかわらず、
①募集・採用にあたって、労働者の身長、体重または体力を要件とすること
②総合職の労働者の募集・採用にあって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること
は禁止されています(間接差別。均等法7条)。
よって、直接差別、間接差別にあたる質間、あるいは抵触すると誤解されるような質間は避けるべきです。
応募者のプライベートや思想信条に関する質問は避ける
個人情報や思想信条に関する質問も、就職差別につながる可能性があるため避けることが望ましいとされています。
厚労省HP「男女均等な採用選考ルール」(7頁参照)には、応募者の基本的人権を尊重し、公正な採用選考についての考え方がまとめられており、その適性・能力のみを基準として採用選考を行うことが推奨されています。
また、労働者が、労働組合に加人せず、もしくは労働組合から脱退することを雇用条件とすることは不当労働行為として禁止されていますので(労組法7条1号)、これらに関する質問も避けることが望ましいと言えます。
「直接差別」「間接差別」の具体的な例
厚労省の指針(「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」(平成18年厚労告示第614号))から、直接差別、関節差別の例をあげます。
直接差別の②の例
募集または採用にあたって、女性についてのみ、
・未婚であること
・子を持っていないこと
・自宅から通勤すること
等を条件とし、またはこれらの条件を満たす者を優先することは差別とみなされます。
これらにかかわる質問はすべきではありません。
直接差別の③の例
採用面接において、女性に対してのみ、
・結婚の予定の有無
・子どもが生まれた場合の継続就労の希望の有無等の特定の事項
を質問することは差別とみなされます。
このような質問も避けるべきです。
直接差別の②や④の例
たとえば、「男性または女性の採用は少ない」、「女性はすぐに辞める」、「これは男性がやる仕事である」なども避けるべきです。
間接差別の①の例
単なる受付や出入者のチェックのみを行う等、防犯を本来の目的としていない警備員の職務について、身長または体重が一定以上であることを要件とすることが間接差別の例としてあげられていますので、業務に必要がないのに身長・体重・体力等の質間をすることは避けるべきです。
間接差別の②の例
広域にわたり展開する支店、支社等はあるものの、転居を伴う転勤の実態がほとんどない場合には、転居をともなう転勤を要件としたことは合理的理由がない、とされたものがあげられています。
したがってこのような会社においては、総合職の採用面接において、転居を伴う転勤に応じられるかどうか質問をすべきではありません。
人材マネジメント上のポイント
面接担当者に対して、均等法に抵触する差別的な質問についての解説を行い、研修やマニュアルを通じて深く理解するように指導することが必要です。
また、応募者の適性や能力に関わる以外の個人的な事柄については、質問しないよう統一した認識を持つように指導する必要があります。
予防策として、採用担当者に対してしてはいけない質問の具体例を示したマニュアルを作成し、配布するだけでなく、研修や模擬面接を通じて対応策を共有することが重要です。