社員旅行のような会社行事で、全社員の参加をめざすためには?
最終更新日:2024.10.24
目次
問題の事象
当社では毎年11月に、社員の親睦を深める目的で土日を利用して1泊2日の社員旅行を実施しています。
しかし、今年入社した新入社員の一人が旅行に参加したくないと言っています。
参加を強制するのは問題だと聞きますが、どのようにして全員の参加を呼びかけるべきでしょうか?
解説(基本的な考え方)
勤務時間か労働時間外か
会社行事は大きく二つのカテゴリに分けられます。
これらの行事は労働時間として賃金支払いの対象となり、不参加の場合は欠勤扱いになることがあります。
これらの行事は労働時間外で行われるため、参加は任意であり、参加しなくても賃金に影響はありません。
各会社行事がどのカテゴリに属するかは、その実施時間や性質によって異なります。
特に休日や業務後の行事は、参加を強制することは一般的に避けられ、社員の意志を尊重することが望ましいです。
今回のような土日に実施する社員旅行を強制的に参加させることは難しく、全員の参加を望む場合はそのメリットを明確にし、できるだけ魅力的なものにして参加を促す工夫が求められます。
参加を強制できる会社行事とはどのようなものか?
会社行事への参加を強制する場合、社会通念上その行事が必要であることと、事業主からの積極的な特命があることが必要です。
社会通念上の必要性:
例えば毎年定期的に行われる行事や、社員の親睦を深めることを目的としている行事が含まれます。
これらの行事は社員間の結束を強化し、組織全体の士気向上に寄与するため、社会通念上必要と認識される可能性が高いです。
事業主の積極的特命:
事業主が行事への参加を積極的に命じていることが重要です。
これは以下の三点を満たす必要があります。
●費用の会社負担:行事への移動費やその他関連費用を会社が全額または大部分を負担することで、参加の障壁を低減します。
●明確な参加命令の発令:事前に明確な参加命令を出すことで、社員に対してその行事が業務の一部であることを認識させます。
以上の条件を全て満たすことで、会社行事への強制的な参加を法的に裏付けることができます。
ただし、これらの要件は厳格に適用されるべきであり、任意の社交活動や余暇活動に適用することは適切ではありません。
会社行事を強制する際は、これらの法的および倫理的基準を遵守することが重要です。
業務災害に該当するように準備を
会社行事が業務の一部として定義されており、参加が強制される場合には、その行事中に発生した事故も業務災害として労働者災害補償保険(労災)の対象になる可能性があります。
そのためには、次のような点を準備し対応することが重要です:
●就業規則への記載: 会社行事が業務の一環であることを明確にするために、就業規則やその他関連するドキュメントに行事の性質とその目的を詳細に記載する必要があります。
●研修的要素の組み込み: 社員旅行などの行事において、研修や教育的な要素を組み込むことで、その活動が業務の一部として認識されやすくなります。例えば、自社製品に関連する施設の見学や、宿泊地での社内研修会を行うことが考えられます。
●海外旅行の教育的価値: 海外旅行の場合、異文化交流を通じて社員の人間性や教養を広げ、新しいアイデアや発想の素地を形成することも、業務の一環として捉えられる可能性があります。
これらの措置を講じることにより、会社行事中に発生した事故が業務災害として認定される可能性が高まりますが、それでも認定が保証されるわけではありません。
しかし、これらの準備を怠った場合、労災認定を受けるのは一層困難になるでしょう。
これには、事前の計画と適切な文書化、社員への明確なコミュニケーションが不可欠です。
社員旅行で全社員の参加をめざすためには?
費用負担について
そのため、旅行費用をどのように処理するかは会社の裁量に委ねられています。
全額を会社が負担することも、給与からの積み立てなどを利用して全額本人負担とすることも可能です。
ただし、全社員の参加を望む場合に全額を本人に負担させるのは無理があるでしょう。
社員旅行は元々福利厚生の一環として行われることが多いため、その趣旨に沿った適切な割合を会社が負担するのが一般的です。
また、給与から天引(控除)する場合は、別途労使協定も必要になります。
社員へのアプローチ方法
社員旅行を全社員の参加をめざした行事として成立させるためには、さまざまな工夫が必要になります。
たとえば以下のアプローチが考えられます:
●受容の準備: 社員旅行への不参加を受け入れる心構えを持つことが最初のステップです。
全員の参加を望む気持ちは理解できますが、実際に全員が参加できるわけではないことも認識する必要があります。
●参加要請のアプローチ: 強制ではなく、「参加要請」として社員にアプローチする方法が望ましいです。
これには、旅行の楽しさやメリット、過去のポジティブな体験などを共有することが含まれます。
●個々の事情の考慮: 不参加者の事情を理解し、それに対して柔軟に対応することが重要です。
家庭の事情、個人的なイベントなど、避けられない理由で参加できない場合には、その選択を尊重するべきです。
●福利厚生としての位置づけ: 社員旅行は本来、福利厚生の一環として提供されるものです。
この目的から逸脱して、参加を強制することは福利厚生の趣旨に反します。
従業員の福祉を最優先に考えることが、良い職場環境を作り出す鍵です。
結局のところ、社員旅行を含む任意の社内行事は、参加を促すためには魅力的である必要があります。
強制ではなく、自発的に参加したくなるような企画と環境を提供することが、長期的に見て従業員の満足度を高め、組織全体の士気を向上させる方法といえるでしょう。