猛暑の中、最寄り駅の1駅前で下車して熱中症に。労災の対象か?
最終更新日:2024.10.24
目次
問題の事象
帰宅時に健康のため、最寄り駅の1つ前の駅で下車し、3kmほど徒歩で帰宅していた社員が、歩いている最中に熱中症になり救急搬送されてしまいました。
この場合、労災の給付対象となりますか?
解説(基本的な考え方)
労働者災害補償保険法7条1項3号は、
と定めています。
ここでいう「通勤」とは、
と定義されています。
今回のケースでは、たとえ会社に届けた通勤経路とは異なっていたとしても、「合理的な経路」と認められ、労災の給付対象となるものと考えられます。
熱中症とは?
熱中症とは、
高温多湿な環境に長時間いることで、体温調節 機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態
を指します。
屋外だけでなく室内で何もしていないときでも発症し、 救急搬送されたり、場合によっては死亡することもあります。
熱中症の症状
熱中症の症状は、重症度によって次の3つの段階に分けられます。
● Ⅰ度:現場での応急処置で対応できる軽症
- 立ちくらみ(脳への血流が瞬間的に不十分になったことで生じる)
- 筋肉痛、筋肉の硬直(発汗に伴う塩分の不足で生じるこむら返り)
- 大量の発汗
● Ⅱ度:病院への搬送を必要とする中等症
- 頭痛
- 気分の不快
- 吐き気
- 嘔吐
- 倦怠感
- 虚脱感
● Ⅲ度:入院して集中治療の必要性のある重症
- 意識障害、けいれん、手足の運動障害
- 高体温(体に触ると熱い。いわゆる熱射病、重度の日射病)
「1駅前から徒歩」は通勤災害にあたるか?
通勤災害とは?
通勤災害とは、労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害又は死亡を言います。
この場合の「通勤」とは、就業に関し、
(1)住居と就業の場所との間の往復
(2)就業の場所から他の就業の場所への移動
(3)住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動
を合理的な経路及び方法により行うことをいいます。
合理的な経路及び方法とは?
をいいます。
これは会社に届けている経路はもちろんのこと、合理的な理由もなく著しく遠回りとなるような経路である場合を除き、次のような経路も「一般に労働者が用いるもの」と認められます。
- 決まった1つの経路だけでない複数の経路
- 当日の交通事情により迂回してとる経路
- マイカー通勤者が貸切りの車庫を経由してとる経路
- 共働きの労働者が保育園に子供を預けるためにとる経路
- (平常用いているかに関わらず)通常用いられる交通方法による経路
まとめ
今回のケースの場合、3キロ程度の徒歩であれば著しい遠回りというわけではなく、また過度な負担を体にかけるようなものでもないため、合理的な方法で帰宅していたと評価されるケースと考えられます。