幹部社員の独立や引き抜き・転職を防ぐ方法:企業が知っておくべき対策とは?
最終更新日:2024.10.24
目次
優秀な人材を引き抜かれた
A社の営業部長がA社の在籍中に関わらず、新会社設立(B社)の動きがあり、優秀な社員を引き抜こうとしました。
結果、当社の営業社員の約3割がAの会社へ移転しました。
B社に移転した社員に対して、何か措置を取ることが可能でしょうか?
ライバル会社への転職・独立は自由だが、引き抜きは違法の可能性も
ライバル会社への転職や会社設立への規則に関しては、
があり、簡単には扱えません。
しかし、判例の取り扱いでは、在職中の競業禁止義務は当然あるものとし(東京貨物社(解雇・退職金)事件・東京地裁・平15・5・6労判85765頁)、退職後についても競業禁止一定の要件があれば認めています。
例えば、
社員の引き抜き行為が計画的なものである場合、
大量の社員が一斉に引き抜かれた場合や、
引き抜かれた社員の代替人材の確保が困難な場合には、
引き抜き行為の違法性が認められやすい傾向にあります。(損害賠償肯定例:東京コンピュータサービス事件・東京地判平8・12・27、アイメックス事件・東京地判平17・9・27、損害賠償否定例:フレックスジャパン・アドバンテック事件・大阪地判平14・9・11)
しかし、
社員の引く抜き行為(転職勧誘行為)といっても
裁判例(ラクソン等事件・東京地判平3・2・25)も「個人の転職のうち単なる転職の勧誘に留まるものは違法とはいえない」としています。
競業避止義務に違反していないか確認する
元社員が退職後に会社の他の社員に対して引き抜き行為(転職勧誘行為)をする場合等、元社員が退職後の競業禁止義務違反が問題になるような場合には、
元社員が在職中か競合会社の設立を計画し、元社員の退職後の行動が当該行動計画に基づく一連の行為であると評価できるような例外的なケース(リアルゲート事件・東京地判平19・4・27)を除いては
と考えられます。
しかし、一方で、
特約等に基づく競業避止義務に違反したことを理由に、元社員に対する損害賠償請求をなし得た判例もございます(東京学習協力会事件・東京地判平2・4・17)。
現実問題としては、大規模、もしくは悪意のある場合でないと、対応することは難しいと思われます。しかしながら、
かと思います。
就業規則や労働契約の書面に「引き抜きの禁止」について記載する
社員の引き抜きを禁止した特約について、
判例では、「契約の存続期間内において、自らまたは第3者を通じ、代理店又は他の代理店、特約店に対して、原告の同業者に独立開業または転職等をさせるようにそそのかし、勧誘し、
又は代理店もしくは他の代理店、特約店のするそれらのそそのかし、勧誘行為に関与してはならないと規定していた就業規則に関して、本件契約における転職勧誘避止義務に関する約定にいうそそのかしには、同業者への転職及び独立開業についてのあらゆる勧誘行為が含まれると解するのは相当でない、としたうえで、
をしています(総合行政調査会地方人事調査所事件・東京地判昭59・11・28)」というものがあります。
です。
しかし、就業規則や労働契約時に締結する時の覚書の文面を作成し、取り交わしておく方が良いかと思います。
「社会通念上の自由競争の範囲を逸脱」していれば違法に
元社員と会社との間に上記のような競業避止義務に関する特約が認められない場合でも、元社員の引抜行為(転職勧誘行為)の態様等を考慮した上で、かかる
し、元社員に対して損害賠償を請求することができます(リアルエステート事件、不正競争行為差止等請求事件・東京地判6・11・25)。
例えば、勧誘行為を行った者の立場、地位、社員の引き抜きの計画性や密行性、社員退職の一斉・大量性、引き抜きに当たっての勧誘方法(欺瞞適勧誘の有無等)、
及び引き抜きが会社に与える悪影響の程度等の事情を考慮して
ことになります。
また、既に、雇用関係が終了し、契約上の競業避止義務が存在しない以上、引き抜き行為が違法となるか否かの判断は、退職前の引き抜き行為に比して判断される傾向にあります(ジャクパコーポレーション事件他、大阪地判平12・9・22)。
人材マネジメント上のポイント
組織風土悪化の問題は、一長一短には可視化できない問題となります。
しかし、ゆっくりと変化することもまた事実です。経営からのメッセージは勿論、会社における人材マネジメントの方向性を示し、人材の育成・抜擢と登用、キャリアパスなどを進め行くことが不可欠です。
また、業務がカバーできる体制の構築、また、スキルアップ等の期待、また、体調優先の向けを伝える必要があります。また、採用時において、どのような人材を求めているかどうかを明確にし、その要件に合致した人材を採用することが求めれます。
1)求める人材像を行動特性・取り組み姿勢から可視化すること
個人の特性としては、具体的には行動特性が挙げられます。
この個人の行動特性と現在の業務において求める行動特性とのギャップが高い場合にはもしかするとその仕事に向いていない場合があります。
また、会社・業務に対して、取り組み姿勢が高いのか、それとも単に生活のためだけに働いているのかという本人の志向性も重要になってきます。
2)従事して欲しいジョブを明確にすること
欠員にせよ、増員にせよ、採用予定者が従事することが予定されている業務等を明確にすると同時に、その到達レベルを可視化していくことにより、その内容に沿った質問等をすることが可能になります。