部下のプライベートに立ち入るのはどこまで許される?パワハラとの線引きについて
最終更新日:2024.10.24
目次
部下の私生活に立ち入る社員の懲戒処分は妥当?
部下のプライベートに過度に立ち入ろうとする社員について、懲戒処分の対象にすることはできるのでしょうか。
業務の適正な範囲を超えて、精神的苦痛を与えたら「パワハラ」
パワハラに該当するか否かは、一般論としては、
することになります。
具体的に、類似の行為がパワハラに該当するか否かを検討するにあたっては、
することが適切であると言えます。
例えば、名古屋南労基署長(中部電力)事件(名古屋高判平19・10・31労判954号31頁)では、上司が部下に対し、「主任失格」、「おまえなんか、いてもいなくも同じだ」などと感情的に叱責したほか、結婚指輪を身に着けることが集中力低下の原因になると独自の見解に基づいて、複数回にわたって結婚指輪を外すように命じたりしたという事案において、「何ら合理的理由のない、単なる厳しい指導の範疇を超えた、いわゆるパワーハラスメントとも評価される」としています。
プライベートを問う場合は、業務に必要かどうかで判断
業務を円滑かつ効率的に進める上では、同僚や上司・部下との人間関係を良好に保つことも重要な点であることはおそらく誰も異論がないと思います。
人間関係を良好に保つためには、一定のコミュニケーションが必要です。いくら部下であっても、その上司を信頼していないと単なるセクシャルハラスメント・パワーハラスメントと感じてしまいます。
そのように感じてしまうと、
になります。
また、その「理由」は業務に必要なものでなければなりません。
例えば、在宅勤務を希望する場合の理由や、育児・介護を行わなければならない理由、さらには時短・シフト等がイレギュラーな場合等になります。
それらの理由はない場合は、各ハラスメントに該当する場合がありますので、注意が必要です。
そこまでに行く前提として、
その場合、その管理者に対して、配置転換を検討しないと、通常業務に影響が出る可能性もあります。
セクハラ・パワハラを規定化する際の重要なポイント
パワーハラスメントにかかる類似の行為は、「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」が示している6類型のうち、「⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)」という類型に属する行為です。
当該提言では、⑥については「業務上の適正な指導との線引きが必ずしも容易でない場合であると考えられる」と指摘されている通り、パワハラに該当するか否かの判断になると考えられます。
<参考:6類型>
① 暴行・傷害(身体的な攻撃)
② 脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
③ 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
④ 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
⑤ 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過少な要求)
⑥ 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)
セクシャルハラスメント・パワーハラスメントの内容を規程化する際に上記の内容を明記しておくと共に、単なる記載だけになってしまうと制約が大きくないので、
だと考えられます。
懲戒処分は事案で異なる。両者に詳細な「事実確認」が必要
部下のプライベートに過度に立ち入ろうとする社員を懲戒処分にすることができるか否か、また、懲戒処分をするとしてどの程度の処分をすることができるかについて、その事案等により、判断が分かれます。
具体的には、
した上で、対応するのが適切です。
プライベートへの立ち入りと言っても、様々な言動が考えられますので、具体的な事案においての
を行い、その上で、周辺事実を踏まえて、総合的に判断して、対応することが適切であると考えます。
社員交流を活発にしたいなら、企業風土の浸透が先
です。
しかし、一定の会社については、家族等を巻き込んで積極的な交流を図ろうとしているもの事実です。
これらのポイントの分岐としては、従業員自らが、上司・会社に対してのスタンスだと思います。
です。昨今、業務のみの関与になる傾向が強いですが、組織としての一体感がある方が強い場合もあります。(勿論、逆の場合もあります)。
会社として、求める人材・風土、組織をどのように作っていくのかを検討する必要があります。その全体感を考えずに、単に、プライベートの介入は従業員が離れていってしまいます。