顧客リストを無断で持ち出された!個人情報の持ち出しは罪に問える?
最終更新日:2024.10.24
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退職した社員が顧客リストを持ち出し、新しい会社で活用。どんな対応ができる?
先日、当社を退社した社員が、在籍期間中に会社にある顧客リストを無断で持ち出し、新しい会社で営業活動を行っていることが判明しました。
何かしらの対応はできるでしょうか。
モラル的に許されない行為。犯罪の可能性が高い
顧客リストを持ち出し、それを不正に使用するパターンには、そのリストを同業他社に売りつける、自らの退職後の営業活動に役立てる、データを広く公開するといったものが挙げられます。
これらはモラル的に許されない行為であるのはもちろん、法律上でも犯罪となる可能性を多く含んだ行為と言えます。
場合によっては、刑事面での告訴も可能になります。それ以外の民事面においては、損害賠償等の金額を請求することになります。
ただ、その場合、
になります。
判例でも、在職時の顧客情報を利用するのは違法な営業行為
カナッツコミュニティほか事件(東京地判平23・6・15)では、原告在職時に入手した顧客情報を利用して原告の顧客に対して営業活動を行った結果、合計14人が原告との契約を解除して被告会社と契約を締結したという事案につき、
被告Yが「従業員としての守秘義務に違反して情報を被告会社に漏洩したものとして認められるところ、
被告Yが、本件情報を用いて営業活動をしたのであれば、それは、従業員としての守秘義務に違反して不正に取得した情報を利用したこととなり、違法な営業活動に該当する」と判断し、
在職中における守秘義務に違反して取得した顧客情報を用いて退職後に営業活動を行うことは、違法な営業活動であるとしました。
退職金の返還を求められる。ただし就業規則にその旨を記載必要あり
既に退職している者の場合、就業規則に基づく制裁や、退職理由を懲戒解雇に変更するといった処分はできません。
そこで考えられる対処法が
①社内発表と、
②退職金の扱いです。
実態としては懲戒解雇に相当する不正をしているのであれば、懲戒解雇と同様に退職金は支給しないという扱いにすることができます。
そのためには、就業規則の退職金規定に以下の条文を盛り込まなければなりません。
(1)懲戒解雇の場合は退職金を支給しない
(2)退職後に懲戒解雇相当の不正が発覚した場合には退職金を支給しない
(3)退職金を支給した後であっても懲戒解雇相当の不正が発覚した場合には返還を求める
対象者が情報を入手した経緯、動機、目的を確認して対応を検討
営業秘密や顧客情報の漏洩は、会社にとって重大な影響をもたらすことが多く、犯罪に値する行為です。
まずは社員が情報を入手した経緯や情報漏洩をした動機・目的等をしっかりと確認した上で、会社としての対応を検討する必要があります。
また会社は
が求められます。
それと同時に、システム的にも予防策が必要です。
具体策としては、
パスワード管理をして会社のコンピュータのデータベースに不正アクセスできないようにしたり、
パスワードの定期的な変更を社員に義務付けたり、
重要な書類は金庫に厳重に保管する
などしておくことが挙げられます。
従業員のモラルを向上させる人材マネジメントとは?
情報漏洩については、その管理も勿論ですが、従業員のモラル等も重要になってきます。
人材マネジメントにおいては、そのモラルをどう形成するかだと思います。
そのためのマネジメントは、
だと考えられます。
また、
になってきます。
また、等級制度の適切な構築が必要になります。本来、管理監督者でないものを無理矢理、管理者として認定しようとする傾向がまだ残っていますが、等級制度の構造が年功的になってしまうリスクは勿論、場合によっては、すべての管理者要件が否認されてしまう可能性があります。