懲戒処分の弁明の機会に弁護士を同席させることを主張する社員への対応は?
最終更新日:2024.10.24
目次
問題の事象
懲戒処分を行うにあたって社員に弁明の機会を提供しようとした際、社員から弁護士の同席を求められました。
この要求に応じる必要があるのでしょうか。
解説(基本的な考え方)
懲戒処分における社員の弁明の機会
懲戒処分は罰としての性格を持ち、そのため適正な手続きが求められます。
したがって懲戒処分を実施する前には、対象となる社員に弁明の機会を提供することが望ましいとされています。
特に、
ことになり、その結果懲戒処分が無効となるリスクがあります。
就業規則や労働協約に弁明の機会を提供する規定がない場合
懲戒処分にあたって弁明の機会を提供する義務について、明文化された法律があるわけではありません。
ただ【労働契約法第15条】には、
とあり、弁明の機会を提供しなかったことが懲戒処分の不当性を示す事実となる可能性も考慮しておくべきでしょう。
よって、就業規則や労働協約の規定有無に関わらず、とりわけ重い処分を課す場合には弁明の機会は提供しておくことが望ましいといえます。
弁護士の同席を要求された場合、認める義務があるか?
法律は弁明手続きの詳細な内容や手順について具体的に定めておらず、弁護士の同席を義務付ける明確な法的根拠はありません。
しかし、弁明手続きで法律専門家である弁護士の立ち会いを許可することは社員の防御権をより充実させることにつながり、これは懲戒権の濫用の有無を検討する際にも処分の妥当性を裏付ける要素となり得ます。
また複雑な事実関係や法律問題が絡むケースでは、社員側の弁護士が同席することにより
・会社側の主張を法的側面を踏まえながら社員に伝えてもらえる
ような側面もあります。
そのため会社側には弁護士同席を認める義務はないものの、その利点も考慮して同席を許可するかどうか検討するとよいでしょう。
弁護士なしでの弁明手続きを拒否された場合
社員が弁護士なしでの弁明手続きへの参加を拒否する場合、会社にはどのような選択肢があるのでしょうか?
①あくまでも弁護士同席を認めない
前述の通り、会社は弁護士の同席を義務付けられていません。
従って社員が弁明の機会を拒否する場合、その機会を放棄したと見なし、弁明手続きなしで懲戒処分を行うことが可能です。
その場合でも弁明の機会自体は日時と場所を指定して通知をし、不参加の場合には弁明の権利を放棄したと見做す旨を伝えておくとよいでしょう。
②弁護士同席のメリットにも目をむける
ただあくまでも拒否を貫くかどうかを検討するにあたっては、すでに社員が弁護士に相談を始めている可能性があることからも、後に懲戒手続きの正当性を問われるリスクと天秤にかけて考える必要があります。
そのリスクを軽減するため、また前述の利点も考慮して、弁護士の同席を許可することで粛々と弁明手続きを進めるという選択も考えられます。
どちらを選択するかは、
・対象となる行為の性質
・事案の複雑さ
などを考慮して決定することになります。