勤務態度が悪くミスが多い、勤怠不良の社員への対応。改善と解雇のプロセス
最終更新日:2024.10.24
目次
ミスの多い社員を解雇したい
ミスの多い社員がいます。
今後解雇のやむなしと考えていますがどのような手順が必要でしょうか。
解雇には「客観的に合理的な理由」が必要
解雇事由があり、解雇予告手当の支払いまたは解雇予告(労基法20条)を行えば解雇することができます。
しかしながら、労契法16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとし、無効にする。」と規定しています。
そのため解雇は、「客観的に合理的な理由」が認められなければ、有効とは認められません。
また「客観的に合理的な理由」が認められる場合であっても、当該解雇が「社会通念上相当として是認することができない場合」には、これもまた解雇権を濫用したものとして無効になります。
ミスの程度が著しく業務に支障が生じる、指導しても改善されない
能力不足、勤務成績不良による解雇が有効であると判断されるためには、単にミスが多い等を主張立証するだけでなく、その程度が著しいこと、注意指導・教育を行っても改善せず、もはや改善の見込みがないこと、そして、業務上の支障が生じているという点まで、会社において主張立証する必要があります(エース損害保険事件・東京地判平13・8・10労判820号74頁)。
もっとも、ミスが多いこと、改善の見込みがないことについて主張立証することは容易ではなく、解雇を行う前に、周到な準備をする必要があります。
解雇までに必要な段取り
就業規則の懲戒規定においては、解雇に至るまでの段階的な内容の記載が求められます。
その基本的な段取りは下記のとおりです。
①全うすべき(求められる)職務能力、職務遂行のレベルの明確化
②その職務能力を全うできていないこと(=ミスが多いことなど)の記録化
③その上での上記①、②を踏まえた注意指導
④本人に対し「今後ミスをしないためにはどうすればいいか」改善策の提示や振り返りを、書面をもってさせる
⑤「改善がなければ解雇も含めた対応をせざるを得ない」旨を明示した最終警告書の交付
「注意、改善指導、面談、文書の通知」のプロセスで進める
解雇に至るまでには、注意、改善指導、面談、文書の通知というプロセスが一般的です。
拙速な解雇は避けるべきであり、段階を踏む必要があります。
さらに単なる指導だけではなく、求めるレベルと現状とのギャップ、改善に向けたアプローチが必要になります。
また従事する業務分野や職種を限定することなく採用された社員については、ある業務分野や職種に適性がないと判断された場合であっても、異なる部署への異動等を検討する必要があります。
仕事を振らなくなる、簡易な仕事しかさせなくなる等の行為も決してやってはいけません。
解雇を回避しようと尽くしたという意味でも、まずは、退職勧奨を行い、合意退職を目指すべきでしょう。
人材の適正にあった業務や異動先がないかを検討する
解雇については、慎重に進めなければならないことは前述の通りです。
人材マネジメント上の留意点としては、改善の見込みがないのか、他の部署等において、異動先がないのか、またそれぞれの人材の対しての適用性に合わせた配置先がないのかを十分に把握していることが必要になります。
また、なぜ、解雇に至ったのかをある程度可視化して置く必要があります。
配置転換も視野に入れ、ある程度対応可能であれば、全社レベルで検討することも視野に入れた方が良いかと思います。
今後、低パフォーマンスの人材を中心に、PIP(業績改善プログラム(Performance Improvement Program))の実施体制・ルールを明確にし、行っていくことが重要になってきます。
このようなプロセルの設計に関しては、抵抗があるかもしれませんが、改善の指導と注意の促しの繰り返しによって、解雇のプロセスが実施しやすくなるのは事実です。
また、PIPの過程はあくまでも通常の制度における運用であるため、感情的にならず、淡々と行うことができることもメリットがあります。