生理休暇が多すぎる従業員への対応:労働基準法と生理休暇の適用
最終更新日:2024.10.24
目次
特定の従業員だけ生理休暇が多い事への不満
パートタイムによるシフト制を引いていますが、ある従業員が生理休暇が多く、しかも突然取得されるため、他の従業員からクレームが出ています。
対応する手段はないのでしょうか。
休暇が取れるのは「就業が著しく困難な場合」
生理休暇は、生理になれば当然に休暇が取れるものではありません(昭和61・3・20基発151号)。
労働基準法68条で定められているのは「生理日の就業が著しく困難な」女子が休暇を請求したときにその者を生理日に就業させてはならないとしているにすぎません。
生理休暇は病気休暇の一種とされ、労働基準法が保障しているのは、個人的体質やその時の体調その他の状況により個別的に「生理日の就業が著しく困難」な場合です。
その「著しく困難」かどうかについては、診断書までは求めることは妥当ではないとされていますが、同僚の証言等による証明を求めることは公平な運用のために許されています(昭和63・3・14基発150号)。
しかし、長期の生理休暇が求められた、結果的にそのようになった場合は、他の私傷病と同様に診断書を求めることも可能かつ必要だと思われます。
また、生理休暇中の賃金については、就業規則等の別段の定めがない限り、無給となります。
休暇日を精・皆勤手当の算定において欠勤扱いとする取り扱いについては、判例では、生理休暇について、一般の生理日の賃金と同様に当事者間の取り決めに委ねられた問題であって、生理休暇の取得を著しく抑制しない限り労基法も私法上も問題ないとしています。(エヌ・ビー・シー工業事件・最三小判昭和60・7・16民集39巻5号1023ページ)
しかし、これに対して、生理休暇取得日を昇給・昇格の要件として出勤率の算定にあたり欠勤日扱いにすることについては、生理休暇の保障の趣旨に照らせて無効であるとされています。(日本シェーリング事件・最一小判平成元・12・14民集43巻12号1895ページ)
ただし、一律に賞与の全額不支給や一律昇給停止等を行うのではなく、取得された生理休暇等の日数を客観的に案分対応した限りの減額等の不利益は違法とはされてません。(学校法人東朋学園事件・最一小判平成15・12・4労判862郷14ページ)
さかえ経営では、社内が一体感を持ち「他の人に配慮する」職場環境のための制度づくりをサポートします。
責任感のある社員を育成する。チームの一員としての役割を定義し、特定の人へ業務が偏らないようにする。ワークショップや研修、1on1のコミュニケーションの機会を設けるなど、様々な改善のご提案を行っております。
興味をお持ちの方は、まずはお気軽にご相談ください。
不当な欠勤かどうか分かるまでは柔軟な対応が必要
特定の人が再三にわたる欠勤等を行うと、当然他の人たちにも影響が及ぶため、シフト遵守という概念が崩壊し、現場が立ち行かなくなる可能性があります。
当該労働者に対して、毅然とした対応をしないと、職場全体の責任感欠如、さらにはサービス品質の低下も招きかねません。
場合によっては、制度の変更は勿論、懲戒等の懲罰を行うことは勿論、その内容・制度趣旨等を他の人たちにも共有することにより、現場の引き締めを図ることも求められます。
一方で、男性には理解しにくい概念であるため、「本当に必要な人」に対しては十分なケアをしないと、女性を大切にしない職場というレッテルを貼られることも注意しなければなりません。
関係者への事情聴取も必要になりますが、その際に、最初から疑うような姿勢を見せることが禁物になる場合もあります。
不当な欠勤ということが確定するまでは、あくまでも柔軟な姿勢が求められます。
生理休暇の取得率は「0.9%」で、とても低い
生理休暇の取得率は女性労働者の「0.9%」と、とても低い割合です。
※厚生労働省「雇用均等基本調査」
生理休暇の取得率が低い理由
・男性の上司に「生理だから休みたい」と言いずらい
・生理休暇は無給扱いになる など
生理休暇とは
- 1947年に労働基準法で制度化されており、企業には導入する義務があります。
- 日数制限はなく、半日だけ・時間単位での取得も可能です。
生理休暇が有給か無給かは会社によって異なり、有給扱いにしている会社は29%、無給扱いの会社は67.3%と
無給になる会社の方が多く、それなら生理ではなく「体調不良」にすることで有給休暇扱いにするといったケースがあります。
正当な生理休暇は取れる仕組みづくりが大切
生理休暇を取得しやすくするための取り組み
・電話での連絡ではなく、メールやチャットでの申請もOKにする。
・生理休暇以外にも婚活休暇なども全て「エフ休」と呼び、申請は女性の人事担当者が確認する。 など
不平等はなくすために、具体的な症状をチェックする
生理休暇申請時に「生理により就業が著しく困難」となった症状を具体的に申告させ、上司および先輩格の女子従業員の証明書を添付することを義務付け、この手続きによらない生理休暇の申請については、年休としての振替えに応じない限りは欠勤として対処することを宣言し、実行することも検討しなければなりません。
また、労働者代表との同意が得られてば、また得られない場合は労働契約法に基づく、合理性判断要素と、手続き要素を踏まえて、就業規則を改正し、生理休暇取得者は、同休暇の取得上は欠勤扱いとして、生理休暇の有給率を引き下げ、もしくは無給とし、さらに取得生理休暇日数を案分対応した限りでの昇給、賞与の減額等を行い、少なくても有給日数を制限することが必要です。
一方で、これらを無視したものに対して、減額に賃金のカットは勿論、昇給等の対応、さらには懲戒処分等で対応することになります。
また、運用基準の明確化・適正化のためのツールとして、生理休暇申請書の書式の準備なども必要です。
一方、管理者に対しても、従業員の個々の体調管理を徹底させることも必要です。
異性にとってはセンシティブな事柄ではありますが、就労の提供義務が労働者側にはありますし、突然の欠勤は周りに大きな影響を与えるため、そのような事態を避けるためにも、一定程度の把握の必要性を徹底すべきです。
また、規程においては、休職制度をはじめとする長期間に欠勤に対する対応策の構築や、突発欠勤に対する懲戒制度等の制定も必要になります。
急な欠勤にも対応できるよう、人員を用意しておく
飲食店や小売店等の場合、多くがパートタイム等でオペレーションがされているのが現状で、且つ、突発的に欠勤、また長期の欠勤についてのインパクトは他の業種等に比べて、大きいと思われます。
そのような場合に備えて余剰人員を確保しておくことが一番の策となりますが、現実的には難しい場合も多々あります。
シフトを埋めるということが重要なことであると、周知・徹底させ、万が一、やむを得ない事情により、シフトに穴をあける場合は、その人が自分で代替人員の確保をするような仕掛けも必要になります。
それを実現するために、常に「他の人たちに配慮する」ような職場環境づくりも必要になってきます。
各個人で行うような業務においても、常に相談できるような体制・環境づくり、社内が一体感を持てるような制度・仕組み、運用づくりも不可欠になります。
欠勤などトラブルに対処できるチーム・人材を育成する
事業を成功させるには、責任感を持ちチームワークを大切にした動きのできる人材を採用し育てることが大切です。
人材を育てるためには、まず会社が求める人材像が明確になっている必要があります。
今の会社や事業の方向性に対して、どのような役割・能力・行動特性を持った人物が必要か?を具体的にすることで
人を採用する時の判断基準になり、また従業員は「何をしたら評価されるのか」が分かるので、モチベーションが向上します。
皆にやる気があっても、各自の判断でバラバラに頑張っている状態では成果は得られません。会社として求められている事=共通のゴールを明確にすることが必要になります。
さかえ経営では人材育成に必要なあるべき人材像構築サービスを行っています
「求める人物像」が明確になることで、従業員は何をすればいいのか?が明確になり、やる気アップや離職の防止などに役立ちます。
また人材の分析・定点観測を行い、向いている業務を判断することで、適材適所への配置が可能になります。
就業規則で「生理休暇」の扱いを明確に規定する
法律上、生理で就業が困難な場合は生理休暇を認めなければならず、回数の上限はありません。
つまり社内規定が無ければ、従業員によって自由に取得できるものになってしまい、「生理休暇が多すぎるかどうか」の基準もバラバラになるため、他の従業員からクレームが出てしまいます。
有給休暇・欠勤・休職制度と合わせて、生理休暇についても規定しておく必要があります。
さかえ経営は法律と経営、両方の視点から企業ごとに適した就業規則の策定を支援します。
時間外手当ルールや賃金制度、解雇・懲戒、休職等のルール、36協定の運用、長時間労働対策など
社会保険労務士と経営コンサルタントが最適な制度づくりをサポートします。