インターンが社内情報を漏洩!企業が取るべき対策と損害賠償の可能性
最終更新日:2024.10.24
目次
インターン生がSNSで個人情報を漏洩。損害賠償を請求できる?
インターンシップの参加学生が、社員の個人情報等をSNSで投稿していたことが明らかになりました。
このような場合、学生に対して、損害賠償請求をすることは可能でしようか。
「労働者」に該当しない学生の場合、損害賠償請求をすることは困難
学生が「労働者」に該当しない限り、労働契約に付随する秘密保持義務違反として、損害賠償請求をすることは困難とされています。
個別に誓約書などを作成している場合に限り、誓約書違反として損害賠償請求をすることが可能です。
しかし、損害の立証などのハードルは高く、まずは大学を通じて、当該参加学生に投稿の削除や注意を求めることが現実的です。
インターンがアルバイト契約を締結していれば、秘密保持義務の主張は可能
インターンシップ参加学生は直ちに「労働者」に該当せず、使用者から業務に係る指揮命令を受け、使用従属関係が認められない限り、労働契約の付随義務としての秘密保持義務を課すことが困難です。
秘密保持義務とは、労働者が労働契約の存続期間中、その付随的義務として、使用者の営業上の秘密を保持すべき義務です。
また多くの企業では、就業規則でも秘密保持義務がうたわれており、これに違反した場合には懲戒処分などが課せられる可能性があります。
もちろん、その実態が「労働者」といえる場合や、アルバイトとして労働契約を締結しているのであれば、付随義務としての秘密保持義務の存在を主張することはできます。
損害賠償請求をする2つのポイント
1.秘密保持義務の誓約により損害賠償請求をするポイント
労働契約の付随義務としての秘密保持義務が認められない場合には、インターンシップ参加学生との間では、個別に誓約書に署名させるなどして、秘密保持義務を課すことを検討します。
たとえば、
あるいは、個人情報保護として、
といった内容を誓約させることが検討されます。
2.不競法により損害賠償請求をするポイント
不競法2条1項7号において、「不正競争」に該当する場合として、
としています。
そして、不正競争によって営業上の利益を侵害され、または侵害されるおそれがある者は、差止請求権を行使でき(不競法3条1項)ます。
故意または過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者に対しては、損害賠償請求をすることも可能です(同法4条)。
そのため、インターンシップ参加学生がこうした不正競争行為を行った場合には、不競法に基づく損害賠償請求をすることも検討されます。
一般的なインターンシップでは、不競争法で損害賠償請求をすることは困難な場合が多い
しかし、不競法にいう「営業秘密」とは、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」(同法2条6号)とされており、
①秘密管理性
②有用性
③非公知性
の各要件を満たす必要があると解されています(営業秘密管理指針3頁)。
レポートを作成したり、体験的に業務に触れる程度の一般的なインターンシップにおいては、対象となる情報が営業秘密に該当しない可能性も高く、不競争法に基づいて損害賠償請求をすることは困難な場合が多いと考えられます。
インターンシップ受け入れ時に準備すべきリスクヘッジ
インターンシップ受入れの際には、学生との間で誓約書を交わすなど、秘密保持義務や個人情報保護について明確化し、共有しておくことが重要です。
インターンシップにおいては、学生による企業に対する損害(機器・ソフトの損壊、機密漏洩等)の発生や、様々な事故等が発生するリスクが存在します。
学生の過失により企業に生じた損害は学生が企業に対して賠償すべきものですが、企業に生じる損害は甚大であるのに対して、学生が損害を賠償することが不可能なケースも少なくありません。
そのため、学生は、企業に対して生じさせた損害をカバーする保険に加入しておくべきで、これらの対応方針等については、大学、学生、受入企業の三者間で、保険への加入状況などを含め、できる限り文書等により明確化しておくことが望ましいといえます。