産休後の育児短時間勤務の社員への賞与、勤務時間が少なくても支給は必要?
最終更新日:2024.10.24
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産休から復帰し短時間勤務の女性社員に賞与支給は必要か
産前産後休業を取得し、復職後も育児のため短時間勤務(1日6時間勤務、1.5時間の時間短縮)の女性社員に対し、復職後の賞与は支給しなければならないでしょうか。
減額は可能だが、全く支給しないのは問題
産前産後休業や育児短時間勤務については、労働基準法や育児・介護休業法で定められた労働者の権利です。よって、事業所の就業規則などで決めた賞与支払いルールに反することなく、復職後の勤務時間・勤務態度などに問題がなければ、賞与の支給対象者となります。ただし
これは、介護休業並びに介護短時間勤務についても同様となります。
出勤日数や就業時間を元に、適切な算定基準で評価する
賞与算定評価において、賞与算定基準期間での出勤日数や就業時間数を鑑みて、出勤率に応じた一つの基準を設けることは支障がありません。
ただし
例えば、「出勤率90%以上のものに賞与を支給する」(=出勤率90%未満の場合は支給しない)と定めている場合、出勤率の算定に当たり、年次有給休暇・育児休業/休暇、介護休業/休暇、産前産後休業、育児・介護短時間勤務、生理休暇など労働基準法の下で労働者の権利として保障された休暇を欠勤扱いにすることも、これに該当します。
この事象では、1日7.5時間勤務のところ6時間勤務の1.5時間を短縮しています。1日の勤務時間の80%勤務となりますが、これを「出勤率90%以上で支給」の理由として支給ゼロとすることはできません。支給対象者とし、例えば支給額は評価算定金額の8割とするというような運用を検討します。
就業規則で賞与の算定方法などを規定する
就業規則や賃金規程に賞与支給基準を記載している場合には、
①支給の対象者
②算定期間
③支給時期
④支給は業績に応じてなのか、必ず支給なのか
⑤支給の算定方法(会社の業績のみか、個人の勤務成績等を考慮するのか)
が記載されているかがポイントです。
従来の日本の企業では基本給に対して一律〇ヵ月を乗じた給与連動性が取られていましたが、今は企業の業績に応じ賞与総額を決定し配分する「業績連動型」が主流となりつつあります。
業績連動系での就業規則の例は、
①算定期間内に在職していること
②③毎年12月から5月の算定期間を7月10日に、6月から11月の算定期間を12月10日に支給
④支給は業績に応じて支給し、会社の業績の著しい低下ややむを得ない事由がある場合には、支給しないことがある
⑤会社の業績から賞与総額を決定し、個別の人事評価により基準額×平均支給月数×評価係数で算定するとなります。
「業務の成果×勤務時間の長さ」で適切に評価する
時短勤務であっても、評価で「短時間勤務」を理由にマイナス評価とすることはできません。
まず、
例えば、勤務態度・勤務成績が150%の評価を上げている場合には、評価ポイント150%×時短勤務80%=算定結果120%ということもあり得るのです。
評価ポイントが80%の評価であれば評価ポイント80%×時短勤務80%=算定結果は64%となります。
評価にあたっては、人事評価の裁量権の範囲を逸脱した不当に低い評価をしないように注意してください。
人材マネジメント上のポイント
国(厚生労働省)では、約5割の女性が出産・育児により退職し、妊娠・出産を機に退職した理由では「両立の難しさで辞めた」(41.5%)という調査結果を発表しています。
少子高齢化に伴う人口減少下において、出産・育児による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児を両立できる社会の実現が重要であり、女性の継続就業・出産と男性の家事・育児時間の改善を背景に、改正育児・介護休業法が令和3年に公告、令和3年から令和5年にかけて段階的に施行されています。
また、先駆けて女性の活躍・両立支援を目論み、「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」を含めた女性活躍推進法が平成27年に施行されています。(※令和4年4月から労働者数101人以上の事業主が対象)