従業員をリクルーターとして活用する方法:企業が知るべき制度とポイント
最終更新日:2024.10.24
目次
従業員をリクルーターとして活用した場合、特別手当などの対応は?
人材募集費を削減するため従業員をリクルーターとして活用したいと考えています。
企業向け経済雑誌などでもこのようなリクルーター活用がもっとも確実で経済的な方法といっていますが、特別手当などの対応はどうすればよいですか。
会社は、労働者の募集を行う者に報酬を与えてはならない
企業がその従業員を使ってこの募集をすることは、許可等を要する第三者に対する委託募集ではなく、企業自らによる直接募集の問題とされますが、職安法は、募集を担当する従業員に対する報酬や給与に関して規定を置いています(職安法40条)。
これによると会社は、労働者の募集をおこなう者に対して、一定の場合を除き報酬を与えてはならないと定めています。
この一定の場合とは、①自社の被用者である従業員が紹介した際に、その対価が賃金、給与その他これらに準ずるものの支払いである場合、②職安法36条に定める厚生労働大臣の認可を受けている者(いわゆる「人材紹介会社」)である場合、です。
また、この違反に対しては、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則もあります。
交通費や食事費など諸経費の支払いにとどめる
交通費やその人物を勧誘するためにかかった一、二度の接待のための簡単な食事の費用程度については支払えるでしょうが、それ以外となると法的には微妙となります。
ただし、公共職業安定所のこの点に関する規制は現実的にはほとんどなされていないようで、指導もなく突然刑事罰が科されるような心配はないようです。
また、業務命令による募集をしたのではなく、たまたま知人に自分の勤務先を紹介した場合に企業が単発的に心ばかりのお礼をすることは、業務性がないものと解され、法律の関与することではないでしょう。
リクルーターへの報償を実現するには、賞与の査定などに反映させる
賃金規定等でその報酬が賃金として規定されていれば、職安法40条の「賃金、給与その他これらに準じるもの」に該当するとみなされるようです。
合法的にリクルーターへの報償を実現するためには、①賞与の査定に大きく反映させる、②交通費、日当に関する規程を整備して実費の範囲を最大限利用する、③リクルート活動を特命による業務として明確に位置づけ、その活動に費やされた時間を把握したうえで、賃金、時間外・休日勤務手当等を正式に支払う、などが考えられます。
また、報奨金取得濫用を防ぐためには、採用後の一定の勤続期間を支給要件と定めておくとよいでしょう。
時間外や休業日にリクルート活動を行った際は手当の支払いを
この賃金にあたる報酬を支払う場合、そのリクルート活動への労働時間該当性が問題となり、残業代の発生もあり得ますが、リクルーターが企業の任務として行っていなければ通常は休日勤務手当等を支払わなくても問題はありません。
しかし、特命によるリクルーターに対しては、指定された人物を勧誘するためにかかった一、二度の接待のための簡単な食事などでも労働時間に算入されることもあり得ますし、時間外・休業勤務手当の支払いの必要がある場合も起こるでしょう。
しかし、特命もなくこれらの範囲を超す飲食時間などについては、支払いの必要はないでしょう。
また、求職者から接待を求められた場合も、会社側がこれを事前承認していない場合、同様でしょう。
人材採用の際の重要なポイントとは?
一時には、リクルーター制度は下火になりましたが、近年、リファラルが注目を浴び、再びリクルーター制度(名称は異なるが、その趣旨を踏まえた制度)を導入する企業が増えてきています。
背景にあるのが、「良くわからない人」を採用することはリスクであるという考え方があるかと思います。
しかし、以前の年功序列型雇用を前提として、「当社に何となく合致する人」では、あまり意味がありません。
勿論それらのことは前提にはなりますが、一番重要なことは、どのような人材を求めているかどうかを明確にし、その要件に合致した人材を採用することが求めれます。
以下の点かと思われます。
求める人材像を行動特性・取り組み姿勢から可視化すること
個人の特性としては、具体的には行動特性が挙げられます。
この個人の行動特性と現在の業務において求める行動特性とのギャップが高い場合にはもしかするとその仕事に向いていない場合があります。
また、会社・業務に対して、取り組み姿勢が高いのか、それとも単に生活のためだけに働いているのかという本人の志向性も重要になってきます。